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エターナル・ログ・ストーリー

   第2章
この<第2章>は『エターナル・ログ・ストーリー』最初の10人の物語です。
 
第二章と銘打っていますが第一章、第二章、どちらから読んでいただいても結構です。
ただ、<第三章>は全てを読んだ一番最後に読んでください。
 
 
テイマーたちの戦いをご一読いただければ幸いです。
 
13      No−13「The heat of anger」
連続で火柱が上がる。
その少し先をガワッパモン、和西が走っていた。
上半身まですでにリアライズを終えたデーモンがそれを追う。
「もう少しおもしろいところで遊ぼうぜ」
後ろを追ってくるデーモンを挑発し、黒いシルエットになりつつある建物、学校のフェンスを飛び越えた。
直後炎がそれを包み、灼熱に輝く鉄が粘土のように崩れていった。
 
 
先回りし、反対側から校内に侵入した黒畑とゴツモンはデーモンが教室を突き破って校舎に入るのを確認するとD-ギャザーを外した。
「ゴツモン、お前はここから校舎の中に入るんだ。タイミングを見計らってゴーレモンに進化、奇襲をかける」
「OK」
ゴツモンはただ頷くと、左拳で背後のガラスを鍵もろとも砕いた。
「進化を合図に攻撃を開始しろ。手加減なし」
了解を示し、ゴツモンが見えなくなってから黒畑は携帯電話を取り出した。
 
 
教室に体を滑り込ませた和西の背後を高熱の炎弾が通過した。
一気に膨張した空気が衝撃波とともに廊下を焼き、炎弾の通過したそばのガラスは片端から砕け散り、ガワッパモンに降りかかる。
 
 
その壮絶な音を聞きながら、二ノ宮とプテラノモンは上空から降下した。
二ノ宮を下ろすとプテラノモンは離脱し、デーモンを追う。
階段を駆け下り、途中、残った階層2つぶんを飛び降りると黒畑に追いつくことに成功した。
「まてまて!」
黒畑は立ち止まるとなんのようだ、と言った。
二ノ宮は比較的落ち着いた口調で続ける。
「相手は究極体だ。一度でも攻撃を受ければチリになる。より安全な作戦が必要だ」
「ではどうする?」
二ノ宮は靴で地面に線を引き、説明する。
「この校舎は中庭を中心に四角い構造になっている。中庭にデーモンをおびき寄せてそこで叩くぞ」
黒畑はベルトに提げたD-ギャザーを見せながら言った。
「ゴツモンには進化したら攻撃を開始するよう伝えてある」
それを聞いた二ノ宮は息を吐いた。
「好都合だな。この戦い、負けられない上に勝ちづらい」
「その通りね」
ダルクモンにつかまり、意藤が降りてきた。
着地すると彼女は口を開く。
「デーモンが完全にリアライズすれば今の戦力じゃ勝ち目がない。なんとしてもそれまでに決着をつけないと・・・!」
二ノ宮は頷いた。
「あぁ、その通りだ」
「どうする?」
意藤、黒畑、二ノ宮が円席を組んで話し合った。
二ノ宮は斜め上に視線を泳がせながら口を開いた。
「デーモンのリアライズはおそらくはかなり不完全で限定的、かつ不安定なものだ」
二ノ宮は続ける。
「時間をかけて攻撃を重ねれば時間切れで体を構成する物質がデータ容量に耐え切れず分裂をはじめる」
「つまり時間かせぎと攻撃を両立させる必要があるのね」
意藤を見下ろし、黒畑が言葉を慎重に選んでから口にした。
「・・・なら、完全体に進化できるやつらが大勢いる、ということだな。・・・具体的には、辻鷹や林未、嶋川、谷川・・・。積山も。かれらがいるな」
「二ノ宮さん、車で彼女たちを出来る限り集めてください。私と黒畑で時間を稼ぐ」
「アイ・サー、分かった」
答えるなり二ノ宮は踵を返す。
その後ろ姿を目で追い、意藤はすぐにダルクモンに空から様子を探るよう指示し、黒畑に目配せをした。
「分かった。とりあえず和西をサポートしようと思う」
「ええ、それでいいわ」
 
 
 
かつて白かった校舎の壁は黒く染め抜かれていた。
厚く積もった煤を蹴り上げ、和西は教室に滑り込んだ。
「ガワッパモン!三つだ!いいな!?1!2!」
早々とカウントをはじめた和西を横目にガワッパモンはガラスを突き破ってグラウンドに飛び降りた。
無数の“校舎の一部だったもの”とともに着地した瞬間、
「――3!」
「ガワッパモン進化・・・!」
巨大化した腕がハンマーを握り、デーモンに向かった。
「      ズドモン      」
進化と同時に反撃を始めた和西とズドモンを睨むデーモンは一言呟いた。
「的が・・・、大きくなった・・・!」
笑みを浮かべた口が高熱による蜃気楼で歪む。
 
 
火柱が上がったグランドを見据え、谷川はシンドゥーラモンの上で背後の嶋川と目を合わせた。
「どう思う?」
「どうって?おおむね谷川さんの考えどおりじゃないですか」
谷川は首を振った。
「状況判断は得手分野でしょう」
嶋川は屈託のない笑顔を向けた。
「そうかもしれませんねぇ。谷川さんは机の上で指示をするタイプかも」
「同感です。で?どう思いますか?」
嶋川はすぐ近くに迫った学校を見下ろして言った。
「たぶん時間稼ぎ中ですね。和西さん以外は。意藤さんを中心に回ってるみたいです」
「ダルクモンが戦いに参加せずに様子を覗っている。テイマーに戦況を逐一知らせていると見ていい」
 
 
ビルから飛び、高さを稼いだクレシェモンが訊いた。
「要するに意藤さんのところに集合すればいいのね」
わたしのところから見ても分かるほど、和葉はしっかりと頷いてみせた。
「よし・・・。デスメラモンにも伝えよう」
 
更新
2007/12/24 

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