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エターナル・ログ・ストーリー

   第2章
この<第2章>は『エターナル・ログ・ストーリー』最初の10人の物語です。
 
第二章と銘打っていますが第一章、第二章、どちらから読んでいただいても結構です。
ただ、<第三章>は全てを読んだ一番最後に読んでください。
 
 
テイマーたちの戦いをご一読いただければ幸いです。
 
12      No−12「Coirage is resistance to fear」
ズドモンの重い一撃が地盤を砕かんばかりに叩き込まれた。
間一髪でシンドゥーラモンに救われた谷川の頬から数センチの位置をズドモンの上で和西が残忍な笑みを浮かべた。
「いやぁ・・・、君みたいのはどうも・・・!苦手でね」
すっと立ち上がり、腰に手を当てた。
「今のうちに倒しとこうかなぁ、ってね・・!」
 
和西のあまりの豹変振りにシンドゥーラモンは驚きを見せた。
「人が変わったみたいだな・・」
「早めになんとかしないと・・。人目につく」
「しかし倒すわけにもいかないだろう」
ズドモンの体に渾身の力が入り、シンドゥーラモンに向かって突進する。
再度振り上げられたハンマーをシンドゥーラモンは見切った。
「そのとおりだ。倒すわけにはいかない!」
シンドゥーラモンの鉤ヅメががら空きになったズドモンの腹を狙う。
 
その時、
一体の蒼い体を持つデジモンがズドモンを、一体の碧の羽を持つデジモンがシンドゥーラモンをそれぞれ離れさせた。
 
レキスモンが進化したクレシェモン、トゲモンが進化したリリモンに戦いを止められたことを悟ったズドモンとシンドゥーラモンは動きを止めた。
 
 
わたしはクレシェモンを見つめていた。
そしてリリモンを見上げ、視線をすぐ右に立つ神楽に向けた。
いままで見たことのない表情でズドモンを見据える彼女はわたしの知っている神楽とはすこし違って見える。
 
 
 
ルナモンがデジモンの気配に気づき、わたしは出来る限り急いでこの場所にやって来た。
柵のはるか向こう、工事のため大きく窪んだカルデラの中にズドモンとシンドゥーラモン、そしてそれぞれのテイマーがいることはすぐに分かる。
戦いが続くそのすぐ近くの場所に神楽とトゲモンがたたずんでいた。
レキスモンと一緒に駆け寄ったまではよかったが、何を話していいか分からない。
そんなわたしに、神楽から話しかけてきた。
「どうしたらいいのか・・・。分からないんです」
ズドモンがハンマーを振り上げるのを見つめていた神楽は目を伏せた。
「和西さんは感情の起伏が激しくて・・・。何かのひょうしにその…」
「“スイッチ”が入る・・・?」
神楽はわたしの助け舟を聞き、一度だけ頷いた。二重人格?
「だいぶ怖くなってきたんです。戦うのいやだなぁって思うことが・・・」
頭を抱えてうずくまった神楽を見てもわたしにはどうしようもなかった。
どうしようも出来ない。体が動こうとしなかった。
 
「わたしは戦う。今はまだ、その気がある」
首を何度も振った神楽を見下ろしてわたしは言った。
「テイマー同士が戦うなんて馬鹿げてるよ。戦っても意味ないよ・・・」
ほんの少し顔をあげた彼女は上目遣いにわたしを見上げる。
その目に、光を放ち始めたわたしのD-ギャザーが映りこんだ。
「テイマーって言っても私たちは限られたことしか出来ない。でも・・手伝ってくれるよね。わたしたち、トモダチだった」
強く頷き、神楽はようやく立ち上がった。
碧の光と蒼の光が煌く。
 
「レキスモン進化・・!!」
 
「トゲモン進化・・!!」
 
 
二つの光がそれぞれ、ズドモン、シンドゥーラモンの間に割って入る。
 
「    クレシェモン   」
 
「    リリモン    」
 
ズドモン、シンドゥーラモンが弾かれた瞬間光が消え、完全体に進化した2体が背を合わせて宙に静止していた。
 
 
 
「ごめんなさい」
神楽が謝った。おそらくは今までのこと、今起きている事を。
「ありがとう」
わたしはお礼を言った。今までのこと、今起きている事を。
 
クレシェモンの攻撃がズドモンに当たった。
リリモンの砲撃がシンドゥーラモンを捉えた。
退化し、宙に投げ出されたテイマーとパートナーをそれぞれが受け止める。
 
 
リリモンから降りた谷川が2人に礼を言った。
「助かりました」
「ホント。危なかったよ」
ペンモンは肩をすくめるとクレシェモンから降りた和西を睨んだ。
「は・・!ハハハハハハ・・!」
笑いながら止める間もなく走っていった。
前もそうだったが異様に脚が速い。
 
 
谷川さんとペンモン、ルナモンに断ってわたしは神楽と2人きりにしてもらった。
谷川さんがフローラモンを引きずっていった瞬間、神楽がいきなり抱きついてきた。
「よしよしっ!泣かない!」
適当に髪を撫で、頃合いを見計らって引き剥がした。
腰のポーチに入れっぱなしにしてあったぬいぐるみの入った紙袋を差し出す。
「仲直りのお祝い!」
「えへへ・・・。また些細な事でけんかしちゃいました」
 
 
仲を取り戻した2人を物陰から見つめ、ルナモン、ペンモンが何度も深く頷いていた。
 
 
 
 
笑いながら和西はひと気のない街を走っていた。
やがて袋小路に差し掛かり、和西は足を止める。
「・・・はっ!お前・・・、戦うか?オレと・・・。なぁ、黒畑」
「そのくらいにしておけ、和西」
黒畑が腕組みをして対峙する。ゴツモンは油断なく様子を覗っていたが。
「・・・・・」
なにも口出しせず、ただ様子を覗っていた。
「あぁ・・・、なんでもいい・・・。戦いたい・・!!相手しろよ・・・」
やっと追いついたカメモンが目を丸くした。
「一休みさせろよ」
カメモンが休息をあきらめたときだった。
 
 
「テイマーよ。我輩が相手をしてやろう・・・・」
 
 
低く、重い声が響いた。
暗黒のヒズミから姿を現すデーモンを見て、和西の口もとに再び笑みが浮かんだ。
 
「いいぜ・・・。お前、強そうだ・・・!」
更新
2007/12/14 

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