だいぶ夕日に染まった住宅地。そのうちの一軒の家の鍵を開け、体操着姿の少年が入っていった。
和西高。
現在中学2年生の彼は陸上部の練習から帰ったばかりだった。
スポーツバックとリュックを2階の自分の部屋に放り込む。
和西はシャワーを浴びに一階に降りていった。
しばらくして、和西は普段着姿で上がってきた。机の前に座るとその上においてあるパソコンのスイッチを入れ、缶ジュースを脇に置いた。タオルで髪の毛を拭いている間にパソコンが起動を完了した。
「さてと、」
和西はマウスを操作し、メールをチェックした。新着メールはなく、和西はネットサーフィンを始めようとメールのプラウザを閉じようとした。
「?」
和西の手が止まった。
デスクトップに新着メールが表示されたかと思うとそれは表示されると同時に展開し、次の瞬間にはデスクトップ全体が01で埋め尽くされ手仕舞った。
和西はやれやれ、とパソコンのスイッチを押した。こういうときは強制終了に限る。
しかしスイッチは切れなかった。
デスクトップにはウィンドゥが表示され、和西が字を追うのを見ているようなスピードで連続してこう表示された。
『 こんにちは和西高くん。 』
『 生まれた瞬間から始まる君の使命 』
『 君はデジモンテイマー 』
『 加えて 』
『水の大賢人を名乗る資格がある』
和西は混乱し始めた。
「なんだこれ・・・」
デスクトップのウィンドゥには3色の卵が表示され、その下にこう記された。
『選ぶがいい。君のパートナーを』
彼はそれから数分かけてさまざまな方法を試みた。ついに電源オフをあきらめるとデスクトップに視線を戻した。何かのはずみで動いたのかポインタが青い卵を指していた。和西はクリックした。即座にこう表示される。
『 Yes or Now 』
和西はYesをクリックしながらつぶやいた。
「いいよ、イエスで」
すると再び画面にバグが表示され、和西の目の前に白っぽい霧が現れた。和西は驚いて声も出なかった。
目の前で渦を巻くようにして霧が回転を始めた。途端に消滅し、なにか白い生き物が落ちた。和西は椅子からずり落ち、「うわっ」という言葉が重なった。何言かぼやくその生き物はセイウチとかアシカに近いイメージの体をしていた。と、和西はそいつと目が合った。
「やぁ、君が和西くん?ふ〜ん、おれはゴマモン。とりあえずよろしくね」
和西はじろじろとゴマモンを観察した。
大きな爪があるが好戦的、というわけではなさそうだ。そろそろと近づいて抱き上げた。見た目より重いのは本物の生き物だからだろう・・・。しげしげと眺めていたゴマモンをひとまず下ろした瞬間和西の脇にまた霧が発生した。硬いものがそれなりの音を響かせて落ちる。
「なんだこれ・・・」
和西は小さいほうを持ち上げた。画面に何か表示された。
[こんにちは和西くん。君はこのD-ギャザーをつけた瞬間『水の大賢人』としてゴマモンと共に戦うことになる]
和西が意味を計りかねているとその下に新たに何か表示された。
[これが君の運命なのだから]
和西はD-ギャザー、ゴマモンを順に見て、それから机の上に置かれた写真立てを見た。
ジャージ姿の男と子供が写っていた。
「ぼくにしか出来ないこと・・・・」
和西は微笑むとD-ギャザーを右腕につけた。画面にはこう表示された。
[ありがとう。『水の大賢人』]
その瞬間和西の右手の甲に蒼い光が走り、そのあとが焼印のように残った。
[君は10人の特別なテイマーの一人]
そしてもう1つ霧が現れなにか皮製のようなホルダーに包まれたものがガチャリと音
を立てて落ちた。
こうしてぼくは何の前触れもなく戦いの日々に押し込まれた。ずいぶん後になってそういえば前触れがあった・・・と思うことがあったのではあったが・・・・・・・・。
その数日後からぼくとゴマモンは残り9人
のデジモンテイマーと出会う。
『闇の守護帝』もその1人だ。彼はぼくが相談役としてもっとも頼りにすることになるテイマーだ。
しかし、それはまた別の話。
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