デジタルモンスター
エターナル・ログ・ストーリー

第一章




 27    第27話 「黒炎」
For:
2007.12.31 Mon.
吹き飛ばされコンクリートがめくれた屋上に立っているものは無い。
ただ荒い呼吸を繰り返すウィルドエンジェモンが座っているだけだった。
組織の人間は全身を防護服で覆われている。
今の攻撃でも物陰にいた点もあわせ数名が軽傷を負っただけですんだ。デジモン1体とテイマー1人をのぞいて。
 
 
 
 
積山は爆発が起こる瞬間にギルに押し倒され下敷きになった。
そのときのことは今は感謝している。
ギルに。
こういうときなんて言えばいいのか・・・・。
 
 
シヌカトオモッタヨ。
 
 
そうそれ。
死ぬかと・・・・死ぬ?
死ぬ・・・か。
そういえば第4隊長が見せてくれた資料に被害者名簿があった。
年齢はバラバラで・・・・。
それこそもうすぐ死ぬだろうな、みたいなおばぁさんもいれば2歳の子とお母さんもいた・・・。
同年代の人もいた気がする。
 
 
 
うっすらと意識を取り戻した積山は辺りを見回した。
ギルがウィルドエンジェモンに攻撃を受けていた。
かなりのダメージを受けているはずなのにウィルドエンジェモンは強い。
ついにギルはグニャグニャに曲がったフェンスに追い詰められた。
 
 
「!」
 
ギルがやられる・・・・!
 
 
バキン!という音がして金属製の『もと』フェンスが折れた。ぐったりともたれていた2体は落ちていく。
 
 
積山はとっさにとなりに倒れていた隊員のポーチからプログラムカードを抜き取ると記憶を見真似てD-ギャザーに読み込ませる。
 
 
 
たのむ・・・・!
 
 
 
 
頭痛と薄れた意識のなかで積山はいつもの冷静な判断が出来なかった。
 
画面に何かアルファベットが表示される。
E V O L U T I O N
 
 
 
ギルとウィルドエンジェモンが落下する様は嶋川たちにもよく見えていた。ウィルドエンジェモンの翼がゆっくりと広がり、ギルを抱きかかえ地面への激突を避けようとしていた。
ように嶋川の目に映った。そして・・・・。
 
ギルが、進化する。雄たけびを上げ、巨大な影を道路に落とした。
体が分解され再構築される。
地響きをたてて着地した漆黒の竜は背中にしがみついていたウィルドエンジェモンを道路に叩きつけた。
 
 
それを見た和西は隣り合ったビルの壁を蹴って屋上に飛び上がった。着地して辺りを見回した和西は起き上がりはじめた隊員、コマンドドラモンと反対に倒れた積山を確認した。
「積山くん!しっかりして!」
反応が無いのを見た和西は積山を背負うと飛び降りた。
 
谷川はD-ギャザーでデータを調べる。
ギルは成熟期、デスグラウモンに進化した。
 
 
デスグラウモンはウィルドエンジェモンに背を向けた。つまり巨大な尾をウィルドエンジェモンにたたきつけた。
応戦できずウィルドエンジェモンはコンクリートの道路に埋め込まれる。
抜け出し、すぐとなりに落ちた剣を引き抜いたウィルドエンジェモンの目にデスグラウモンが両手を組み、肘から光の剣が出現する様子が映っていた。
デスグラウモンはそのまま両腕を地面に突き立てた。
 
 
通りの一角で爆発が起きた。
 
 
振動で積山は意識を取り戻した。
デスグラウモンの手の甲に積山の紋様がえがかれた。
凄まじい熱量の炎が撃ち出されウィルドエンジェモンを直撃する。
積山は凶悪なまでの強さをみせウィルドエンジェモンを追い詰めるデスグラウモンを見ていた。
デスグラウモンの攻撃の残りや反動は近場のビルを次々と破壊する。
 
ぼくが実行した。
 
積山はギルを止めたいと思った。そのとき、所長の言葉がよみがえった。
『デビモンはデビモンを取り込むことで必要な量のデータを獲得し、進化したそれを応用したのがアレだ』
第4隊長の言葉が響く。それは緊急で完成し、全部隊に支給されたガス手榴弾型の説明だった。
『デビモン2体で融合されたネオデビモンを強制的に分裂させる効果があるそうだ』
積山は和西に声を絞り出して言った。
「手榴弾を・・・、ギル、に・・・・」
暴走をはじめたデスグラウモン。
ウィルドエンジェモンがふらふらと逃げ延びる。しかしだれも後を追わない。というより都市の一部を破壊するデスグラウモンがいて通れない。
しかし積山はそんな事は気にしなかった。大切な友達を取り戻す。
その方法を嶋川が実行するのを最後に積山の意識は途絶えた。
 


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