デジタルモンスター
エターナル・ログ・ストーリー

第一章




 29    第29話 「口実」
For:
2007.12.31 Mon.
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
二ノ宮を見るなり、積山は何も言わなかった。しばらくたって新藤は、
「・・・入院、する?」
と、見るからに血色の悪そうな顔をした二ノ宮に提案した。
 
午前9時48分。二ノ宮は積山の見舞いに来た。起きてすぐに報告書を提出してその足で来たのだが若干足元がふらついていた。
 
「・・・・・ごめんなさい、やっぱりすこし寝かせてください」
「点滴もうってあげるよ」
 
 
 
まず一番最初に・・・・神原と名乗った胸に炎の形の刺繍入りジャケットを着た男がギルを連れて行った。進化の条件と退化の成功例として所長のもとで検査を受けるらしい。積山も本人も快諾した。
 
次に嶋川とアグモン、谷川とホークモンがやってきた。嶋川はスポーツドリンクを5本積山に渡し、全部飲めと命令した。谷川はいつもの元気はなくやがてホークモンたちと帰っていった。
 
その次に二ノ宮と、テイマーの背を押してきたファンビーモンが来た。で、二ノ宮はカーテンの向こうで眠っている。
 
 
3時ごろ、眠ってしまった積山の部屋にノックが響いた。
「積山く〜ん?」
辻鷹がそっと顔を差し入れて中をのぞいた。
「寝てるみたいだな」
ガブモンはドアを開け放つと中に入った。和西、ゴマモンが続き辻鷹が最後にドアを閉める。
「元気、かなぁ」
辻鷹が積山の顔を覗き込み、ゴマモンがあきれたように言った。
「入院してるんだけど」
和西はテレビでニュースを見た。音を消し画面を眺める。
昨日デスグラウモンが吹き飛ばした通りには大きな黒焦げのトラックが数台倒れていた。 「ふーん」
辻鷹は納得した。どうやら組織はトラックの爆発事故ということにしたらしい。 しばらく眺めていると話題が変わってUMA特集になった。デビモンの映像が流される。辻鷹はそこでスイッチを切った。
ドアが開いていた。
まったく気配がなかった。
天羽は驚く和西たちの間をとっとっと、と歩き積山の顔を覗き込んだ。
無言の和西たちを気にせずにしばらくそうしていた彼女は突如部屋を出て行った。サイドボードに封筒が置かれていた。
 
 
 
「っそう!!」
嶋川は力まかせに炎撃刃を叩きつけた。
デビモンはあっけなく消滅する。
「[ベビーバーナー]!!」
アグモンはデビモンを撃ち落すと嶋川のとなりに立った。谷川、ホークモンもやってくる。
なんの気配もない。すこしひらけた場所に出て辺りを見回した。何もいない。
谷川の紋様が光り眼に緑がさす。その眼を閉じ、耳をすます。ロッドを引くと同時に引き金を引いた。
街の騒音や嶋川の心臓の音、アグモンの息、ホークモンの羽がたてる音。風がうなる音が耳にまとわりつき、そしてその中にかすかな翼の音が聞こえた。
「伏せて!」
叫ぶと同時に谷川は真後ろに銃口を向けた。
「なに!?なに!?」
あわてるアグモンを嶋川が蹴り倒す。
「伏せろってんだろうが!」
「うわっ」
谷川はすこし射線をずらすとロッドに添えた手を離す。
空気の弾丸は容赦なく200メートル上空にいたネオデビモンに襲い掛かり撃破した。
 
光に照らされてキラキラと輝く砂を見上げながらホークモンは呟いた。
「彼らは死ぬのを恐れないのか」
嶋川はうなずき、
「おれもたまに思うんだ。死んでもいい。そう思ってる気がする。・・・・生きる気が無いような・・・。戦ってるときに何か違和感がある」
谷川は首をかしげ少し考えてから言った。
「戦う気はすごくあるっていうのかな・・・。ただ戦うだけ、見たいな気がするな。あたしは」
 
アグモンは・・・・。
なにも言わなかった。 話題に入れなかった。
 
 
夕日が顔に当たり、二ノ宮は顔をしかめて目を開けた。
「わるいね。はいこれ」
新藤が(二ノ宮の)携帯電話をさしだして言った。
『有川だ。』
「あっ、はい」
『どうだ調子は。いや、そういえばベットの上だったな。ま、それはいい』
「どうか・・・したんですか・・・?もしかして書類不備とかですか?」
『いや、書類には目を通したよ。よくやってくれた。しかしね・・・。進化プログラムのことなんだが』
「なにかあったんですか?」
『進化できないという結果が9割程度見られた』
「どういうことですか?」
『つまり一筋縄ではいかん、ということだろう』
「はぁ・・・」
『そこでだ。研究所最高責任者二ノ宮所長から命令だ。積山慎と2日ほど行動をともにして秘訣、というか。とにかく進化に関する情報を集めて報告すること。以上』
「はぁ・・・、はい。でも積山くん入院してますけど」
『ではついでだ。君も入院したまえ。新藤に聞いた。入院できるだけの健康状態だそうじゃないか。ではおだいじに』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
電話は一方的に切られた。ケータイを新藤に返すと二ノ宮は苦笑いをして、
「2日ほどよろしくお願いします」
と言った。
 


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