デジタルモンスター
エターナル・ログ・ストーリー

第一章




 30    第30話 「論理」
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2007.12.31 Mon.
研究所に和西たちが呼ばれたのは積山と二ノ宮が退院(二ノ宮は事実上リフレッシュ休暇)した3日後のことだった。無駄に広い会議室に座り組織と十闘神の面々は進化の説明を受けた。
論理は・・・・
・デジモンは一定量の情報や物質を吸収すると自身の肉体を変化させる。
・証拠としてはネオデビモンの例が挙げられる。デビモン2体の融合体であるネオデビモンは質量は2倍、構成物質はほぼ同一だった。
・成功例はシールズドラモンが1例、デスグラウモンの例が新たに報告された。
・退化にはネオデビモン分解粒子を調整したものをプログラム化することに成功した。
 
 
「じゃあさっさとみんなに配ってくれてもいいのに」
谷川が場の空気を揺さぶった。
「(なにか理由があるんですよ)」
ホークモンが小声でたしなめる。
「えっ?なにぼそぼそ言ってるの?」
所長は明らかに気分を害した若い研究者数人をなだめると頭をかいて谷川の質問に答える。
「いや・・・。ごもっともな質問だけどね。なぜか進化できた例は2体だけなんだよ」
積山が首をひねって少し考え、発言する。
「どういう・・・ことですか?」
「いや・・・論理的には進化できないなどありえなかった。実際に成功例が2つあるわけだしね。でもそれ以外の実験では進化しなかった。いや、進化できなかった。ほかに何か条件があるのかもしれない」
そこまで説明するととなりに座っていた男が銀色のケースを取り出して開いた。中にはプラスチックのケースが縦に整列しているのがよく見えた。男は説明を始めた。
「これは進化プログラムに退化プログラムをはじめとする改良を加えたものです。進化の詳細な条件は不明ですが実験的に作られたものを今から配布します」
積山は配られたケースを手に取った。観音開きのふたを開けると2センチほどの厚さのプラスチックの板が出てきた。
「中心部をデジヴァイスの石の部分に押し当てていただくとプログラムが発動する仕組みになっています。あっ!やめろ!」
谷川はどきりとした顔で辺りを見回した。プログラムカードが硬い音を響かせて落ちる。ホークモンは全身の羽毛を逆立てていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「?・・・あれ?え?な・・・、なに?」
「・・・進化、しませんね」
「まただめか・・・・」
組織の人間は黙りこみ、積山は硬直状態のホークモンを一瞥し、所長はため息をついた。
「なになになになになにー!?なんなの?」
谷川はおろおろしていた。
 
 
 
 
2時間後。
 
 
「はぁ〜ぁ・・・・・」
谷川はため息をついて帰路についていた。
「そんなに気を落とさないでくださいよ」
ホークモンは谷川の少し後ろを歩いていた。背中がすこし逆立っている。
すれ違う人は皆ホークモンを振り返ったりしていたが騒ぐものはいない。
谷川はホークモンを抱きかかえるとバスに乗った。ひざの上に乗せて背もたれにもたれかかる。
 
5分ほどバスに揺られていた谷川はふいに立ち上がった。黒い人影が羽ばたいていた。間違いない。
「よし、汚名返上!」
谷川は勢いよく立ち上がり下車ボタンを押した。
バスのステップを飛び降りると谷川は通学バッグとホークモンを即座に下ろしバッグからエアーシールドを取り出すと左手にはめた。ベルトを締めて固定する。カバンを背負いなおすとデビモンを追い始めた。一足先にホークモンが飛ぶ。ホークモンは角に差し掛かるたびに様子を伺う。
2回ほど角を駆け抜け、ホークモンは様子を伺った。地面に降りて翼を広げて谷川を制止する。
「いた?」
「いましたよ」
谷川とホークモンはそっと覗いた。デビモンが一体歩いていた。
「いたね」
「いた・・・・」
「?」
ホークモンが絶句し、谷川は後ろを見上げ凍りついた。
デビモンが2体襲い掛かる瞬間だった。
 
 
 
 
少し前。嶋川はコートとニット帽で変装したアグモンと歩いていた。もう少しで家に着く。嶋川は歩くときにできるだけ人通りの少ない道を選ぶのが癖になっていた。
なにかの気配を感じ嶋川はそっと後ろを窺う。なにもいない。しかし嶋川はアグモンを見下ろした。同時に頷く。
嶋川とアグモンは足を止め、振り返った。
 
「いるんだろ?出てこいよ」
 
嶋川は背負っていたスポーツバックに入っていた炎撃刃を取り出した。
「相手、してやるぜ」
電柱の影、その近くの屋根からなにかが現れた。アグモンはコートを投げ出すと眼を凝らした。
 
すこしおぼつかないようにも見える足取りで一体のデジモンが屋根から、一人の人間が電柱の影から歩いてきた。
嶋川は人間のほうの前に立った。相手は腰のベルトに無造作に差し込まれた刀を鞘ごと抜いて鞘と柄を両手で持った。嶋川は一瞬考え炎撃刃の鞘のベルトを撒きつけて抜けないようにした。
次の瞬間相手は刀を抜くと同時に斬りつけた。
嶋川の眼が赤く染まり刀を蹴り飛ばしたがその首に凄まじい打撃が打ち込まれた。
相手は抜いたあとの鞘で嶋川の首を横薙ぎに殴っていた。
「グ・・・・」
嶋川は倒れた。
 
 
 
崩れた倉庫から気絶しかけの谷川を助け出すとホークモンはデビモンからテイマーを隠すように翼を広げた。
 
嶋川が倒れたのに気をとられたアグモンは相手=コテモンの竹刀が風を斬る音に反応して頭を引っ込めた。
帽子が真っ二つになって落ちる。
嶋川は首を押さえて悶絶していた。
 


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