デジタルモンスター
エターナル・ログ・ストーリー

第一章




 49    第49話 「限界」
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2008.07.26 Sat.
「げっ!!!ついに化けて出やがった!!!」
神原があきれと驚きとを含んだ声を上げた。
「違うっての。正真正銘生きてるよ!」
嶋川は死に装束の帯に差していた剣を抜いた。
「援軍に来た。組織のやつらも出来るだけかき集めたぞ」
彼はそう告げるとその場の3人に言った。
「悪ぃ。でもどうしても・・・谷川は斬れなかった」
それを聞いた瞬間神原が吹き出した。
「そうか・・・!お前あいつに殺られたんだな!?なるほどなぁ。どうりで簡単に負けたと思ったよ」
嶋川ははっとした。言わなきゃよかった・・・。
「くそ・・・。しまった・・・」
自己嫌悪に陥った彼の肩に二ノ宮が呼びかけた。
「ほら!謝らなきゃいけない相手がいっぱいいるでしょ!?さっさと倒しちゃおうよ」
その瞬間公園を囲むようにストライクドラモンとワスプモンが数体ずつ現れた。
そして・・・。アグモンも。
嶋川は手招きした。アグモンも手招きする。
お互いに同じだけ歩み寄ったパートナーは同時に言った。
「お前・・・・、こんなだったっけ」
そしてお互いに笑った。すでに戦闘が始まっている中、笑った。
「なんかよ、一度死んでみると違って見えるな」
アグモンは鼻で笑い、言った。
「もう死ぬんじゃねぇぞ!」
「分かってるよ。当分やめとく。・・・・割とほっとくんだな。おれ、生き返ったんだぜ・・・?」
嶋川は答える瞬間右から襲いかかってきた和西のダミーを叩き斬った。
アグモンは彼を見もせずに言った。
「バーカ、触れないでやってんだよみんな!感謝するんだな!」
「はっ・・・!そうか。まぁありがたいな」
見開かれた眼が紅蓮に染まる。
とたんに彼は凄まじいスピードで相手を斬り刻んだ。
「速・・・・!!!その能力・・・!」
呻くように吐き捨てた和西の偽者は泥のように崩れ落ちた。
大剣を軽々と振り回し、前にかまえた嶋川は納得したように呟いた。
「あいつの言ったとおりだ。倒し続ければ止められる」
そして彼は足元に脱ぎ捨てられた二ノ宮の上着から進化プログラムを抜き取った。
D-ギャザーに読み込ませようとした彼は気づいた。
形が少し違う。
「これ、すげぇな」
デジヴァイスの上部は若干変化し、プログラムを入れるためのリーダーがついていた。
「はっ、こいつも進化したか」
リーダーにプログラムを挿入しながら彼はもう気づいていた。
能力が段違いに上がっていた。
「行くぞ・・・!グレイモン」
巨体とともに嶋川は次の相手に立ちはだかった。
 
 
日が暮れた頃。
ホークモン、谷川が人払いされ静まり返った葬儀場の椅子に腰掛けていた。
それぞれ微笑んでいた。
谷川が呟いた。
「あたしね。今日夢みたいなことがあったんだ・・・」
その声自体は小さいが周りに何の音もないので大きく聞こえた。
「浩司が生き返って、死に装束のまま出てっちゃった。・・・あいっかわらず無神経だよね」
ホークモンは悲しげに笑う谷川の声を聞いていた。
そして扉の向こうに誰かが来たのに気がついた。谷川の眼は碧い。
彼女自体全身の神経を総動員して誰かが部屋に来る足音を聞き逃すまいとしていた。
扉が静かに開く。
「悪かったな。無神経で」
嶋川はアグモンを連れて谷川たちの前まで歩いてきて言った。
「なんか知らねぇけど生き返っちゃったよ」
谷川はムッとした顔で言った。
「あのね!簡単に生き返っていいとでも思ってるわけ?」
嶋川はにやりと笑って答えた。
「ダメだったのか?」
それを聞いた谷川は何度も首を横に振った。
「全然ダメじゃない。・・・ありがと」
抱きついてきた谷川に嶋川は返した。
「どういたしまして。もう2度とやらねぇけどな」
「うん。もうどこにも行かないでね。約束だよ?一緒にいてよ・・・」
 
 
組織の白を基調とした廊下。
「仲ええやんやろうなぁ」
柳田が目を細めて言った。
「あれほど仲のいい人、見たこと無いわよ」
二ノ宮が楽しそうに言った。
コクワモンと並んで歩いていた柳田が不意に口を開いた。
「でも納得はいかん。そうやろ?なんでアイツは生き返ったか」
二ノ宮は一瞬驚いた表情を見せた。
「へぇ・・・、案外積山くん並みに頭回りそうね。ご名答」
コクワモンが落ち着いた口調で言った。
「たぶん二ノ宮さんは嶋川くんの蘇生と積山くんに何か接点がある、と見てるんだね」
二ノ宮は頷いた。彼女の代わりにファンビーモンが訊いた。
「なぜそれに思いあたった?」
柳田は事も無げに答えた。
「本人、2人から聞いた。ほとんど積山の推測や。俺はなんも考えてへん」
二ノ宮は急に黙った。
「どないしたん?」
立ち止まった彼女に振り向いた柳田に二ノ宮は言った。
「やっぱり、と思って。積山くんならすぐにその可能性に気づくとは思ったけど・・・・」
 
積山は締め切られた部屋の中でギルに言った。
「僕の能力はあれだけじゃないかもしれない。人をよみがえさせる力があるのかもしれない・・・」
 
二ノ宮は思いつめた表情で続けた。
「こんなに早く、十分な情報がない間に積山くんがなにかしないか・・・。私、それが心配で・・・・」
 
「死んだ者をよみがえらせるなんてやっていい事かどうか分かるだろう!?」
ギルが怒鳴った。しかし積山は聞いているのだろうか。
 
「そ、そんなん考えすぎやろ?だって・・・。いくらなんでもアイツがそんな事するはず無い」
反論した柳田に二ノ宮が教えた。
「それが、するかもしれない状況なの。積山くんは自分で自分の大切な人を殺してるの。しかも本当は敵だと思ってたデジモンで相当ショックだったはずだから・・・」
 
「分かってる。やらない。・・・それにできると分かったわけじゃないし。分かってるんだよ」
積山は胸から下げた皮袋を握り締めて自嘲気味に言った。
「それに・・・。もし生き返らせても、その時彼女になんて言われるか分からないしね」
 
柳田はしばらく一言もしゃべらず黙っていた。やがて口を開く。
「アイツに初めて会ったときな。相当疲れきったように見えた。まさかそんなことがあったんか・・・」
 
ギルは訊いてみた。
「なぁ、谷川が羨ましいか?」
積山は頷いた。
「そうだね。羨ましい。一番大切な人に再会できたんだからね。本当は人が簡単に生き返るなんてあっちゃいけないと思う。でも本人や本人を大切に思ってた人達にとってはとてもうれしいことには違いない。・・・・そうだろう?」
ギルは頷くしかなかった。
 


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