デジタルモンスター
エターナル・ログ・ストーリー

第一章




 51    第51話 「選択」
For:
2008.06.22 Sun.
まったく同じ時間。
林未とシュリモンは3組のテイマーに囲まれていた。
林未が口を開いた。静かな口調だ。
「どいてくれるか?今仲間が戦ってるだろうからな」
3人のテイマーのうちの一人、イヤホンをつけた少年が言った。
「仲間?他にもテイマーがいるんだ。悪いけど通すわけには行かないんだよね」
「どういうことだ?」
シュリモンが訊いた。
彼はこう答えた。
「知らないのかい?他のテイマーを倒して
一番強い者を決める。・・・おもしろいゲームだろ?」
林未はあきれ返った。
「なんだそれは。何を言ってるんだ?」
どうやら本気らしい。彼は続けた。
「ゲームだって言ってるだろう?テイマーを倒してデジヴァイスを戦利品として奪う。まぁほとんど戦う前に降参してパートナーと逃げたやつばっかりだったな」
そう言った彼の手にはいつの間にかデジヴァイスが4つ、握られていた。
「それが戦利品か?ばかばかしい」
林未はため息をつくと背を向けた。その背に一人が呼びかける。
「まてよ。逃がさないよ?デジヴァイスか命、どちらか置いてけよ」
3人の後ろからそれぞれオーガモン、グラディモン、ソーサリモンが進み出た。
「馬鹿な・・・」
シュリモンが呟く。
「これで終わらせるッ!!!」
オーガモンが棍棒をシュリモンめがけて振り上げる。
全身の筋肉が盛り上がり、巨大な棍棒がシュリモンの頭に直撃する刹那、
「[峰撃ち・紅葉卸]!!!!!」
瞬間移動からの両腕の手裏剣を使った峰撃ち。
オーガモンとグラディモンがドサリと倒れた。完全に気絶。
「な・・・・・・・・?」
数秒たって状況を飲み込んだソーサリモンはとっさにテイマーの少女とシュリモンの間に割って入った。
茫然としてオーガモンの背中を見つめていた少年はいつの間にか前に来ていた林未に胸倉を掴まれてヒッ・・・、と声を上げた。
「お前、ゲームオーバーだな」
あまりにも冷たい彼の視線に少年は震え上がった。
 
「・・・。その戦利品のデジヴァイスは持ち主に返せ。戦いはゲームじゃない。分かったな?・・・・何も分からないようなら俺がゲームの相手をしてやる・・・!」
林未の脅しに3人と3体はカクカクと首を縦に振ると一目散に逃げていった。
そして彼はシュリモンの肩を叩いて言った。
「君が腕利きでよかったな」
シュリモンの覆面の奥の目が大きくなった。
 
シャッ・・・・・・
 
ドーム、それも今までに無い大きさ、直径だけでも40メートルはありそうだ。
それから数十本もの触手が円を描くように伸び、先端の鋭利な金属板がワスプモンをかすめる。
「いまのは近かった・・・。全体、触手の根本を砲撃!」
二ノ宮の指示に従い部隊がイソギンチャクのようなアンノウンを囲む。
腹部のエネルギー砲が火を噴いた。
爆発、炎上。
轟音と衝撃波が周囲のビルを砕き、煙が通りを包み込む。
そしてそれが晴れたときだった。
「!」
「ダメか・・・!」
離脱したキャノンビーモンの上で二ノ宮は目を見張った。
まったく無傷のドームが開き、中から一体飛び出した。
煙を吹き飛ばし一瞬でキャノンビーモンの前まで上昇した相手はいきなり両腕からミサイルを撃ち込んだ。
その間2秒。
上空で爆発音が轟き、煙の中から地上に向かって二ノ宮とファンビーモンが、上空にはドームから現れた敵・メガドラモンがそれぞれ抜け出す。
爆発音に反応して空を見上げたグレイモンの耳に風を斬る音が届き、シュリモンが二ノ宮とファンビーモンを空中で捕まえ和西のとなりに着地した。
様子を目で追っていた和西はシュリモンからファンビーモンを受け取り、礼を言った。
「いや、礼はいい。それよりもここは退いたほうがよいという健助殿よりの伝言を預かってきた」
林未の名を聞いた辻鷹は柵から身を乗り出して下を見下ろした。
すでにグレイモンたちがこちらを見上げて待っている。
そばに林未が立っているのが見えた。
次に彼は空を見上げた。
メガドラモンが両腕から無数のミサイルを撃ちだす所だ。
「確かにあれは分が悪そうだよ。どうする?」
柳田、嶋川、谷川がそろって首を横に振った。
それを見た和西は何度か頷いて見せた。
「よし。逃げよう。林未くんの言うとおりだ」
 
アクィラモンに全員がしがみついた。
なんとか足にしがみつけそうだと確信した和西は振り向いた。
落下音と爆音、そして物が崩れ落ちる音が辺りを包み込んでいく。
「今に見てろよ」
すこし見通しの良くなった街を睨みつけると和西はアクィラモンの足につかまった。
 
 
 
「ほら、もう大丈夫だよ。お姉ちゃんとお母さんのとこ行こうね」
倒壊したビルの影からメガドラモンが姿を消したころを見計らって2つの人影が現れた。
黒畑が小学校低学年ほどの子を連れてまったく人の気配のない大通りを歩いていく。
「優美のお姉ちゃん、疲れたよぉ」
その子は黒畑から手を離すと街路樹の根本に座り込んでしまった。
それを見かねたのか彼女の肩から茶色いデジモンが飛び降りて首をかしげた。
「すこし休憩しようね」
目を細めてその様子を見ていた黒畑は道路の上に何か落ちているのに気づいた。
「ロップモン、ちょっとその子見てて」
ロップモンと呼ばれたデジモンは抱きつかれたままフゴフゴと頷いた。
 
道の真ん中に落ちていたそれは紅いプログラムカードだった。
「なんだろうこれ。誰かが落としたのかな」
裏返した面に文字が刻印されていた。
[極秘  進化プログラム  試作品]
一瞬考え、彼女はそれをズボンのポケットに入れた。
 
再び手を引いて歩き出した黒畑は言った。
「避難所、もうすぐだと思うよ。きっとお母さん待ってるからね」
ロップモンも頷いて見せた。
黒畑の右腕にはデジヴァイスが付けられ、手の甲には紋様が浮かび上がっていた。
 


Back Index Next

ホームへ

| ホーム | エターナル・ログ・ストーリー | エターナル・ログ・ストーリー  第二章 | エターナルログストーリー  第三章 | 掲示板 | 登場人物・登場デジモン | 二章 キャラ紹介 | 3章 キャラ紹介 |
| 関連資料室 |