デジタルモンスター
エターナル・ログ・ストーリー

第一章




 52    第52話 「構造」
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2008.09.08 Mon.
「んのヤロー・・・!」
嶋川は反射的に舌打ちを漏らした。
避難の完了した街は街灯の明かりすら見えない。
街の様子を調べに来ていた彼はその作業の途中巨大な人影に遭遇したのだった。
「でかい図体してるくせに!」
ベルトに付けられたホルダーからプログラムカードを抜き出し、読み込ませた。
「アグモン進化!!」
嶋川の背後でアグモンが光だし、進化しながらテイマーの頭上を飛び越え前に躍り出た。
「      グレイモン      」
雄たけびをあげ、そのまま巨大な火炎弾を立て続けに3発撃ち出した。
足元のコンクリートが砕けるほどの反動で繰り出された攻撃は電柱の上で様子を覗っていた相手に右腕一本で弾き、消し飛ばした。
そしてその姿が消える。
「[宝斧(バオフー)]」
自身の目を疑うグレイモンの背後で静かな声が響いた。
「な!?        ――ガッ・・!!!」
その影は背後を振り向いたグレイモンの首を右腕で屋上に押さえつけた。
「無駄な抵抗はよしなさい。私のテイマーの話を聞いてもらいたい」
グレイモンは月の逆光で姿のよく見えない相手の顔を睨みつけた。
「テメェ・・・、何者だ!?」
歯軋りをするグレイモンの顔にもう一筋の細い影が差し込んだ。
「私のパートナーのアンティラモン。ごめんね。でもちっともおとなしくなかったから」
黒畑は手でアンティラモンにグレイモンを解放するよう促した。
右腕を振り払ったグレイモンは嶋川の脇に戻った。
「どうだ?勝てそうか?」
嶋川が耳打ちのつもりでささやいた。
「だめだ。全然歯が立たない」
グレイモンは頭を振る。
黒畑が口を開いた。
「まずはこれ、なにか知ってるかと思って」
差し出されたのは紅いプログラムカードだった。
「なんだこれ。どこで手に入れた?」
嶋川はグレイモンに進化させるカードなら知っていた。
デザインはまったくといっていいほど同じだ。
「拾ったの。ここからすこし離れたところの道路でね。避難所の近くだからすぐ分かると思う」
カードを受け取った嶋川の眼を見上げると彼女は続けた。
「ここ最近世界中でデジモンが比較的頻繁に現れるようになった。でもここは特に激しい戦いをしている。前会ったテイマーがそう言ってた」
グレイモンもアンティラモンも無言で2人のやり取りとお互いの様子をじっと見ていた。
黒畑はアンティラモンの腕に座ると言った。
「ところで・・・、この前の戦い。一体どういうつもり?」
「どの戦いだ?」
「この前、公園でテイマー同士、それも多分、10人いる仲間どうしで戦ってたじゃない?」
「ちょっと待て、あれはなぁ・・・・」
嶋川が訂正をこころみたが黒畑の発言がそれを跳ね飛ばした。
「わたしは仲間と戦うような人間もそのパートナーも仲間とは思わない。     『私は土の剣闘士』。名前は黒畑優美」
その言葉が耳に届いたときにはアンティラモンの姿は電柱の上を飛んで姿を消したところだった。
嶋川とグレイモンは反射的に屋上の端に駆け寄った。
「あ”〜、しまった・・・。なんかスゲェこじれちまったな」
「生き返って早々ご苦労さんだな」
嶋川は何度か頷くと右手のプログラムカードを裏返したりして観察した。
「極秘、プログラムカードの試作品か」
月明かりに浮かび上がった文字を眺めていた嶋川はフェンスにもたれかかって顔の前でカードを何度か回転させ、その様子を眺めていた。
そして気づいた。
「なんだ・・・?あれ・・・」
 
 
・・・同じ頃
狭い寮の一室で谷川は窓を全開にして抜け出した。
「体小さいのも得かもね。じゃぁ、行くよ。アクィラモン」
 
 
・・・同じ頃
広い会議室で地図とにらめっこをしていた和西は手元で走らせていたボールペンからインクが漏れ出したのに気づいた。
「えっ・・?」
インクは机の上を伝い、1つの書類にしみを作った。
「うわっ・・・やば、ていうか・・・縁起悪い、な」
書類にはある人物の情報が書かれ、その名前の部分に紅いインクが染み込む。
書類の名前は、
『闇の守護帝・積山慎に関する報告書』
 
 
・・・同じ頃
組織が設けてくれた一室で、
柳田が真剣な表情でパソコンに向かっていた。
なれた手つきでタイピングを続ける彼は深くため息をついた。
「悪いな。これでお前は止まるしかなくなる」
エンターキーを叩くと彼はパソコンの前を離れた。
画面では何かが送信されていた。
「終わったのかい?」
自分の体から伸びたプラグをコンセントから引き抜くとコクワモンが話しかけた。
「あぁ、ほんまに手間かかる・・・。メシでも食いにいきたいんやけどついて来てくれへんか?」
連れ立って2つの影が部屋から出て行った。
 
 
・・・同じ頃、
発電所内、中でももっとも広い場所に積山がいた。
「これが・・・・・・・・・・」
積山は自分の右腕を眺めた。
紋様に亀裂が入り、服もところどころ血で染まっていた。
 
発電所の展望室、そのソファにギルが縛り付けられていた。
薬が効いているのか、そもそもデジモンに催眠薬が効くのか・・・・。
それでもギルはピクリとも動かなかった。
鎖とロープでつながれ、毛布をかけられたそのそばの床に一枚、写真が落ちていた。
 


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