デジタルモンスター
エターナル・ログ・ストーリー

第一章




 53    第53話 「生死」
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2007.12.31 Mon.
辻鷹が羽織るジーンズの裾が風にあおられて踊っていた。
「さっきのはなんだかわかるか?」
真下からの質問に彼は首を横に振って答えた。
「さぁ?よく分からないけど嫌な予感がする」
ガルルモンは真上からの返事に同意した。
「たしかに。・・・で、どうする?一番乗りしちまったが」
辻鷹自身、自分から入っていこうとは到底考えない。発電所が一瞬光った。
「いや・・・、ほんとにここ入るの?」
 
 
発電所の前で辻鷹が尻込みしているころ。
「行かなくていいの?」
コテモンが林未の背中を突いた。
「それはまぁ、行くけどさ」
小さな仏壇の前で座っている彼にコテモンが言った。
「この前から訊いてみようと思ったんだ。後悔してたりするのか?」
林未は顔をコテモンのほうに向けはぁ?、と訊きかえした。
「だから、本当は健助がテイマーになるはずじゃなかっただろ?」
「そりゃそうだけどねぇちゃんも母さんも関係ない。別に後悔してるとかそんなんじゃないよ」
「そんならいいんだけどさ」
林未は頷くと上着のポケットからカードを取り出し、読み込ませた。
「コテモン進化!!!」
「バッ、バカ!静かにしろ!」
「・・・・・シュリモン」
窓から飛び出るとシュリモンは林未の体に腕を巻きつけて固定した。
「む、参る!」
シュリモンは身軽に屋根の上を飛び越えて行った。
「積山か?」
不意に林未が呟いた。
「積山殿がどうかしたのか?」
林未は一言、勘だ、と答えた。
「どうもあの雰囲気は似てるきがする。ひょっとしたら・・・・」
彼はかすかに見える発電所を見つめた。
「あいつ、あそこにいるのか?」
 
 
地響きをたて、グレイモンが大通りを走っていた。
「いい!スカッとするな!」
グレイモンは歓喜の声を上げている。
その頭の上に嶋川が座っていた。
「あんまり首動かすな。落とすんじゃねぇぞ。・・・・?、谷川か」
平行するように高度を下げたアクィラモンの上から谷川が叫んだ。
「あれ、なんだと思う!?相当やばそうだけど!!」
嶋川も叫び返す。
「知らん!それよりお前、これなんか分かるか!?」
嶋川の左手に握られた紅いカードを見た谷川は首を振った。
「知らなーい!!使ってみれば!?」
「それもそうか・・・・」
嶋川はリーダーに挿入し、読み込ませた。
「うわっ・・・」
とたんにグレイモンが紅く光りだす。
「グレイモン進化・・・・!」   
グレイモンの動きが一瞬で止まり、次の瞬間には動いていた。
「     メタルグレイモン      」
頭部は銀色の鋼鉄に覆われ、右腕は完全に機械化している。背部にはブースターが装備され、それが起動する。
噴射される炎はまるで翼のような形にも見えた。
「おおおぉぉぉ!!!飛んでるじゃねぇか!!」
メタルグレイモンは空に飛び上がった。
「なんだ?それは!」
ビルの上をシュリモンと林未がやって来て訊いた。
「メタルグレイモン!おれのパートナーだ!」
嶋川が勝ち誇ったように言った。
「そうだ!多分相当強いだろうぜ。・・・だから後ろのアイツはおれ達が相手してやる!」
メタルグレイモンは急旋回して右腕の鋼鉄のカギヅメがメガドラモンに叩きつけられた。
リード線によって引き戻されたカギヅメを曲げ伸ばししてメタルグレイモンはビルに着地した。
「お前微妙に邪魔だ。まってろ」
嶋川を下ろすとメタルグレイモンは嶋川と同時にアクィラモン達に向かって叫んだ。
「大丈夫だっつーの!行け!」
アクィラモンの上で谷川は苦笑すると頷いた。
 
「さて・・・、さっさと・・!?」
メガドラモンの両腕からミサイルが撃ちだされ、メタルグレイモンに直撃したかに見えた。
命中まであと10数メートルの所で切断され落下、爆発、炎上。
ほとんど無音で近くのビルの屋上に着地したアンティラモンが言った。
「優美の頼みだ。助太刀を許して欲しい」
メタルグレイモンはアンティラモンを一瞥すると答えた。
「好きにしろ」
「了解。好きにする。[宝斧]」
地面に撃墜されていたメガドラモンにアンティラモンの両腕が強烈に叩き込まれる寸前、メガドラモンは攻撃をすり抜け、アンティラモンの背後をとった。
「ふむ・・・。速い」
「感心してる場合か!!」
メタルグレイモンの胸部が開き、ミサイルが発射された。メガドラモンの背中に命中する。
背中から煙をあげたメガドラモンがメタルグレイモンを見上げ、睨みつけた。
その瞬間。
メガドラモンが消滅する。通りにトラック数台分の白い砂を残して。
ちょうどメタルグレイモンの真下に着地したアンティラモンが言った。
「油断大敵。[宝斧]」
すぐとなりのビル、 ― 嶋川と黒畑のいるビルの屋上に飛び上がるとアンティラモンは退化し、ロップモンに戻った。
「大丈夫?ケガとかしなかった?」
ロップモンを抱きしめて訊いた黒畑に嶋川は声をかけた。
「あのさ、さっきの話だけどな・・・」
発言の途中で嶋川の携帯電話が鳴った。
だよこんなときに・・・。しぶしぶ電話に出た嶋川の耳に柳田の声が飛び込んできた。
『あほかお前!なに負けとるんや!』
「はぁ!?おれが負けるだと!?いつの話だよ!」
『いまや!メガドラモン生きとるやないか!』
「知るか」
通話を一方的に断ち切ると嶋川は黒畑に再び話しかけた。
「いや、ごめん。だからさっきの・・・」
再び携帯電話が鳴る。通話を始めると同時に嶋川は怒鳴った。
「何度もかけてくるんじゃねぇよ!メガドラモンくらいお前らで何とかしろ!!」
『君は嶋川浩司くんだね?』
嶋川は自分の目が見開かれるのを感じた。そしてこう思った。
ってゆうかコイツだれ?なんでおれの番号知ってんだ?
「お前はだれだ。なんでおれの番号知ってるんだ?」
『警視庁の吉岡というものだ。君が出入りしている組織のリーダー、有川と幹部三名、数人の上級官を逮捕した。君の番号は和西から訊いた』
「逮捕だ!?なんでだ!」
『無意味に都市の攻撃を繰り返し、肝心の怪物退治もできない始末。それでついさっき逮捕状が下りたんだよ』
「ふざけるな。何が無意味に、だ。知ったような口で」
『まぁその辺はあとで聞く。逮捕状が下りたのはリーダーの有川、幹部の式河、神原、秋山、それと上級官の二ノ宮涼美、和西高の6名だ。積山慎は失踪中だが・・・。すでに指名手配済みだ』
「おい、ちょっと」
嶋川の発言に覆いかぶさるように吉岡と名乗った刑事は言った。
『それから、明日より自衛隊を中心とする部隊でここ中心を飛び回る怪物の退治をする。君達はただちに立ち退きなさい。いいね?』
嶋川が反論する間もなく電話は切れた。
彼は混乱して立ち尽くした。
 


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