デジタルモンスター
エターナル・ログ・ストーリー

第一章




 71    第71話 「決闘」
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2007.12.31 Mon.
神原から手渡されたダンボールを見て二ノ宮はしばらく黙った。
「別に妙なもんは入ってねーよ」
彼女の様子を見て神原は一言付け加える。
「有川さんからだ。“全員”に渡してくれ」
「はぁ・・・」
「何?朝早いのに」
話し声で起きた谷川が顔を覗かせる。
「差し入れだよ。8時に朝飯だ」
そう言い残し神原は部屋を出て行く。
「なによこれ」
二ノ宮と谷川はお互いに顔を見合わせた。
 
 
 
9人が組織の戦闘服に身を包む。
 
黒畑・二ノ宮は長い髪を結ぶ。
 
9人が“コート”を羽織った。
 
林未は剣をコートの下に差す。その背中には右腕と同じ紋様の刺繍が入る。
有川から差し入れられたのは10種類の紋様が入ったコートだった。
彼は襟を正すとトレードマークであり遺品でもあるバンダナをいつもよりきつく締める。
 
谷川、二ノ宮、彩華、黒畑の4人はほぼ同時に髪をコートの上に出した。
 
嶋川は背中に炎撃刃をたすき掛けにすると振り向いた。
目が合った柳田はいつもどおりの笑顔で応える。
 
全員が準備を整えるのを待ち、和西は積山の分のコートをしっかりと背負った。
 
準備を終えたテイマーは長い廊下を進んでいった。
自らの意思で戦場に向かう。
 
9人を出迎えたのはそれぞれのパートナーと時、有川だった。
その後ろには何十体ものダークドラモンとタイガーヴェスパモン、タンクドラモン、キャノンビーモン。
和西を含めた9人全員がパートナーと共に走り出した。
 
大地をダークドラモン、タンクドラモンが駆け、空をタイガーヴェスパモン、キャノンビーモンが飛ぶ。
 
5体のギガドラモンが辻鷹・ガブモンを先頭に進む部隊の前に迎撃に現れる。
辻鷹は究極体プログラムを取り出す。
氷の柱が立ち上がる。
「   ガブモン進化   !!」
それが砕け散り、そのなかから現れた蒼いデジモンが顔をゆっくりと上げた。
「メタルガルルモン」
右手を突き上げる。それが展開し、ガトリング砲がせりあがる。
「[ガルルガトリング]!!」
冷気弾が正確に撃ちこまれる。
一撃で消滅したギガドラモンを目前にメタルガルルモンは呟いた。
「よ・・し。いい感じだ」
 
 
戦闘は圧倒的な差で人間側が有利だった。
辻鷹に続いて和西・ゴマモンはネプトゥーンモンに進化し、
黒畑・ロップモンはミネルヴァモン、二ノ宮・ファンビーモンはタイガーヴェスパモンへと進化した。
谷川・ホークモン、嶋川・アグモンも初期からそれぞれヴァルキリモン・ウォーグレイモンXへと進化している。
 
 
すでにドームは半数以上破壊され、一際巨大なものの前にウォーグレイモン、ヴァルキリモン、彩華・チィリィンモン、林未・カラテンモンが集まっていた。
 
「落とすか・・・!?」
ウォーグレイモンが指を鳴らす。
ヴァルキリモンは腰から剣を抜いた。
「やるならあたしだって」
彩華は究極体プログラムを読み込ませる。
「    クダモン進化    」
閃光が煌き、真紅の騎馬騎士が姿を現した。
「スレイプモン」
騎馬の足を開くと腰を落として右腕のボウガンを構える。
「[ビフロスト]!!」
光の矢が撃ちだされドームに直撃する。
衝撃でゆれる地面にウォーグレイモンが両腕のドラモンキラーを突き立て、大地の力と共に引き抜き、頭上に掲げる。
炎が巻き上がり、巨大な火球が発生した。
「[ガイア・フォース]!!!!」
熱風と豪炎がドームを包む。
「[ファンリルソード]!」
相当なダメージを受けたそれを風と氷が斬り裂いた。
それまで黙って様子を見ていた林未はついに耐え切れずに崩れたドームの中に何かが動く気配を感じ、目を見張る。
「離れろ!中にいるぞ!」
すかさず究極体プログラムを起動する。
「    コテモン進化    」
植物のツルが柱を組み、それを叩ききってデジモンが繰り出す。
「メルクリモン!」
異常な大きさのデジモンに先手を打つべく、メルクリモンが迫る。
「[スピリッチャルエンチャント]!」
短刀の軌跡から黒い影が現れ、そのデジモンを絡めとった。
「オレに任せろ![ブリッツ・アーム]!」
黄金色のデジモンが真上から鉄拳を振り下ろす。
電撃がほとばしり、ドームの残骸が吹き飛んだ。
自分のとなりに着地したそのデジモンにメルクリモンがかすかに親しげに声をかけた。
「柳田だな?」
「今は“ライジンモン”」
「こだわるんだな」
ライジンモンはアーマーの奥の顔を笑顔にし、前を見据えた。
「倒せるか・・・?“ゴクモン”は手強いで?」
上半身まで姿を現したゴクモンを見上げ、メルクリモンは無言で頷いてみせる。
空気を吸い込む音が重く響く。
ゴクモンの右腕が無造作に振り下ろされた。
「[ギアスティンガー]!」
腕が弾かれ、一体のタイガーヴェスパモンが視界に入る。
ゴクモンとメルクリモンの間に割って入ったそのタイガーヴェスパモンは両手のビームランスを握りなおす。
「二ノ宮か?」
ウォーグレイモンが口を開いた。
タイガーヴェスパモンは軽く頷き、
「気をつけてね。リアライズが中途半端だけど・・・・・、強い」
すぐに剣を向けたヴァルキリモンの横でスレイプモンがボウガンで狙いをつけ、ウォーグレイモンは体を半身に構えた。
上半身だけという姿のゴクモンはゆっくりとした動きで体をひねって辺りを見回していたが、やがてその口が歪む。
「[蛇炎煉獄]」
 
たった一撃。
温度的にはウォーグレイモンのものにも劣る炎の攻撃がゴクモンの周囲を火の海に変えた。
ライジンモンたちは攻撃より一瞬早く反応し、直撃を避ける。
その攻撃は全員に同じ考えをよぎらせる事になった。
 
“ゴクモンが完全に現実化したらあっというまに世界が焼かれる”
 
 
「[デモンズ・シュナイダー]!」
 
初めに反撃に出たのはメルクリモンでもウォーグレイモンでもなかった。
赤い光がゴクモンの右腕を斬り落とす。
黒い翼を持ち、鎧に全身を包んだデジモンがゴクモンの後ろにいた。
その暗黒騎士を見てウォーグレイモンはそれが誰かすぐに分かった。
「積山だな・・・。いいところで出て来やがる」
ウォーグレイモンはすぐに行動に移った。
ドラモンキラーを構え、猛然と突進する。
「[ガイアフォース・ゼロ]!!!」
至近距離での直撃を狙った大技。
大爆発が起こり、酸素濃度が一気に下がる。
それが一瞬でもとに戻ったとき、ゴクモンの前部の装甲がすべて焼け崩れていた。
「[マッハスティンガーヴィクトリー]!」
「[セントランス]」
「[ビフロスト]!」
タイガーヴェスパモン、ヴァルキリモン、スレイプモンが同時に必殺の一撃を叩き込む。
ゴクモンは完全に破壊された腹部から後ろに倒れた。
その際、残った腕の鋭利なツメが3体に襲い掛かる。
「[マッドネスメリーゴーランド]!」
ゴクモンの攻撃がスレイプモンの鎧をかすった瞬間、岩石の柱が腕と大地を縫いつけた。
ミネルヴァモンが“オリンピア”を構えて立つ。
倒れたゴクモンの真上からライジンモンが全身に電気を放電させ、両腕に全身の電撃を集中させる。
「[エレクーゲル]!!」
渾身の叫びとともに振り下ろされた一撃がゴクモンの頭部をショートさせた。
 


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