意藤がシンドゥーラモンに気づくのはかなり早かった。
着地できるかを見極めるとシンドゥーラモンは手近な建物の上に降りる。
柱や鉄骨が悲鳴をあげる音が聞こえたが、意藤はそんなことにまったく構わなかった。
「空を飛んでくると思ったわ。そのほうが効率がいいものね」
建物から飛び降りた谷川と嶋川はそれを聞き流し、訊いた。
「僕たちはどう動けばいい?」
「ひとまず時間稼ぎはしている」
そう前置きし、意藤は作戦を2人に伝えた。
谷川がニ、三度質問をし、和葉が二、三度聞き違えただけですみ、説明は手早く済まされた。
「作戦の内容は理解しました」
脳内で作戦を反芻しながら谷川は頷いて見せた。
気配を感じて意藤は2人から目を離した。
その真上をリリモンが飛び、クレシェモン、デスメラモンが続く。
それらの影が意藤の顔から引いたとき、彼女は訊いた。
「積山は来ない・・・・みたいね」
「積山さんは連絡とれませんでした」
「そう、まぁいいわ。すぐにでも始めましょう」
「了解」
「[ゴーレムパンチ]」
事実上岩石の塊であるゴーレモンの一撃がデーモンの胸部に当たる。
まったく動じないデーモンは勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
その口が歪む。
「[フレイムインフェルノ]!!」
至近距離からの灼熱の攻撃はすこし射線からはずれただけでよける。
直後、ズドモンのツノが校舎ごとデーモンを串刺しにしようと床と天井を突き破る。
すでに臨界点に達していた校舎3階が崩れ落ちた。
黒畑は辛うじて4階の階段にしがみつく。
軽い身のこなしで安全な足場に飛び乗ると校内を走りぬいた。
「まだか・・・?」
舌打ちを漏らし、黒畑は校舎の反対側に滑り込んだ。
その時、窓の外を蒼い影が校舎を飛び越え、ズドモンの甲羅を中継し、反対側の校舎に移る。
「あれは・・・・辻鷹のパートナーか?」
しかし確認のしようがない。
黒畑はひとまず意藤に合流することに決めた。
すでに崩れた屋根から侵入するとクレシェモンは片端から教室を覗いて回った。
予想通り、炭同然のようになった一帯の中心にデーモンがいた。
まずは狙撃を試みる。泉と相談したとおりに攻撃をしかける。
クレシェモンは武器を体の前で組み合わせ、デーモンに狙いをつけた。
「[アイスアーチェリー]」
氷の矢が猛烈なスピードで撃ち出され、デーモンの肩に突き刺さる。
「む・・・・・・・」
デーモンはうなると矢を引き抜いた。
握られた矢は瞬時に固体から気体へと一気に昇華する。
「ほぉう」
デーモンは呟き、背中の翼を広げる。
瞬間移動ともとれる動きでクレシェモンの鼻の先まで間合いをつめたデーモンは言った。
「おもしろい」
クレシェモンの体が反応した瞬間、デーモンの背中が爆発した。
“憤怒”をあらわにしたデーモンの目に両手の変化した銃をかまえたリリモンが映った。
「神楽にはそのクレシェモンを全力でサポートするよう言われています」
デーモンは歯ごたえのありそうな敵の出現に残忍な笑みを浮かべた。
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