デジタルモンスター
エターナル・ログ・ストーリー

第二章



 30    No−30・The last episode「This is my future」
更新日時:
2008.02.19 Tue.
結局あの3年はなんだったのだろうか。
リリスモンが倒れたあの日以来、デジモンはわたし達の前から姿を消した。
もちろんそれはルナモン達を除いて、という意味であり、つまり敵意を持った新たなデジモンがこの世界に現れなくなった、ということになる。
 
カオスモンはある夜、神楽に、サクヤモンがすでにベルゼブモンに倒されていたことを伝えた。
そのまま神楽は泣き、やがて泣き疲れてしまい眠ってしまった。
だからカオスモンの行方は分からない。
彼もデジタルワールドへ帰っていったのかもしれない。
 
 
戦いの無い日々を送っていたわたし達を震撼させたのはあまりにも身近な人の死だった。
 
黒畑さんが亡くなった。
 
現場に死体こそなかったものの、ゴツモンの遺砂が血まみれのジャケットの上に撒き散らされていた。
当時すでに警察官になっていたわたしはまっさきにその現場に行くことができ、まっさきに茫然とすることになった。
「なぜ?・・・どうして?・・・だれが・・・?」
それから数ヶ月、黒畑さんの家族はわたしの家族のもとに身をよせた。
一人娘の優美ちゃんはよく仁をいじめて泣かせていたが。
黒畑さんの家族が生活をたてなおしたころ、わたしは黒畑さんの謎を知る事になる。
 
 
数年ぶりにデジモンの気配に気づいたルナモンに先導され、わたしは車で走った。
しかし間に合うことはなかった。
桜の木の下に瀕死のフローラモンが倒れているのを発見した瞬間、わたしの脚は凍りつき、心臓は高鳴った。
天使と悪魔が神楽を向こうに引きずり込んだ。奴は黒畑も引きずりこんでいた。
そういい残してフローラモンは倒れた。
絶望しきり、わたしはその場に立ち尽くすことしか出来なかった。
 
『二ノ宮くんに積山くん。意藤さん。それに辻鷹くん。よく来てくれたね』
『谷川、お前がわざわざ呼んだんだ。なにかあったのか?』
『いや、その、ここのところやつらの動きが派手なんですよ。向こうの世界での動きがね』
『なるほど。それでわたしたちは何をすればいい?』
『向こうで直に情報を集めてほしい』
向こう、つまり大学の研究所だ。そこには膨大な研究情報が埋まる。
『よし。ではおれと意藤とで行こう』
『おれや辻鷹が呼ばれたのは?』
『二ノ宮さんと辻鷹さんには早めに有川くんに例の組織を』
『わかった』
『あいよ。了解』
 
組織計画。
かつて黒畑さんが中心となって各地を回り、見つけたテイマー達。彼らを一同に会し、強力な“対デジモン戦用組織”をつくる計画だ。
仁が生まれる数年前のこと、有川という名の青年を筆頭に偶発的にテイマーが次々と見つけられたのだ。
 
『しかし・・・。みなさん注意して行動してください。すでに黒畑くん、林未さんがやつらの手にかかっています。場合によってはぼくたちを殲滅するかもしれません』
『子供たちも危ない、と?』
『やつらが継承の仕組みを知ってるかはわかりません』
 
継承。
カオスモンが最後に神楽に言い残していったこと。
“テイマーの子孫は世界の均衡を保つためテイマーの運命を背負い生を受ける”
つまり子供たちがテイマーになる可能性があり、そのことを『黒畑、神楽を倒した敵』が知っている可能性がある。
 
『そうか・・・。しかし根絶やしにされる訳にはいかないぞ?』
『とりあえず子供たちの安全が第一ですね。キョウちゃんと健助くんと優美ちゃんはすでに保護して引き取り先も見つかってますが・・・』
『それも確かに大切です。しかし自分のことも考えてください。本当はこんな言い方したくないんですが子供たちが倒れてもぼくたちさえいれば継承をすることも可能です。でもぼくたちが倒れた後子供たちが襲われれば・・・・・』
『・・・・・』
『・・・・・なるほど。いいたいことは分かった。両立させればいいのだろう?』
『そのとおりです。くれぐれも注意しください。ぼくはすこしでもはやく資料を完成させます』
 
谷川さんはカオスモン達“バイスタンダー”から聞いたことすべてを記録し、できる限りの情報をまとめていた。
すべては子供たちや自分達にとって有益な情報になりえる。
谷川さんはそう信じて作業に従事していた。
 
「わっ!」
重い空気を引き裂き、女の子が谷川さんの机の下から飛び出してきた。
イスから転げ落ちた谷川さんを見て、計ちゃんは無邪気に笑った。
「あはははっ!びっくりしたっ?」
「びっくりしたよぅ・・・。ほんとに」
谷川さんは背中にしがみつく娘を振り返り、一度ためいきをついた。
 
結局、その日はそれで解散したのだが、次の日の朝、谷川さんからメールが届いていた。
〔どうやらロイヤルナイツにはさらに上の存在がいるらしいです〕
 
それが谷川さんからの最後のメールになる。
 
 
通報を聞き、パトカーで急行したわたしに和葉が駆け寄ってきた。
抱きかかえられ、半分気絶した状態の計ちゃんは非道い姿をしていた。
「そんな・・・・!」
現場検証の始まった谷川邸を前にわたしはまたも立ち尽くすことしか出来なかった。
「泉さん・・!これはデジモン、おそらくは魔王の仲間の仕業かもしれません」
険しい表情の和葉はわたしの正面に立った。
「フレイウィザーモンが気配を感じたから私が今ここにいるんです」
『魔王は全部で七体。だから彼らは七大魔王と名乗る』
たった一体。
最後に残った魔王か、それともベルゼブモンか。
それとも第七番目の魔王か。
 
 
その日、積山さんが姿を消した。
ファスコモンとともに。
彩華ちゃんが生まれて間もなかった。
 
今、組織や意藤さんは失踪した彼を探している。
 
 
成立した組織は法律に縛られ続けた。
有川さんと式河さんが中心になって組織を結成し、社会的にも地位のある江原教授が組織の初代総司令官に任命された。
だが組織は付属の研究所と断裂。
研究所では人体実験が行なわれ、神原という名の少年テイマーや二ノ宮さんの娘の涼美ちゃんがサンプリングされることになる。
 
やがて組織には人工的なテイマーによる軍団が配備される。
そのなかに神原や涼美がいた。
 
 
立て続けに起こる地獄のような災厄の最後を飾ったのは和葉だった。
ルーチェモンと名乗るデジモンと戦い、彼女も命を落とした。
病院に運ばれた和葉は新藤医師らによる治療も効果がなかった。
最後にわたしは彼女と話した。
とはいえわたしはただ謝るしかなかった。
和葉はわたしの胸にタロットカードを押し付けてこういい残した。
「引いたカードは『死神=デス』の“リバース=逆位置”。死は死を生み、命の連鎖を司る。・・・わたしたちの未来は長い冬の末、明るい春を迎えるでしょう。・・・いつか、必ず」
「・・・・・ごめん・・・」
「謝らないでください。前を向いてください。私の占いによると私たちの未来は明るいんです」
 
 
 
「わたしの占い、こう見えてあたるんですよ♪」
 
 
 
 
 
 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
 
式河さんにこれまでの出来事を記したCDをたくした後。
 
結局生き残ったのは、いつでも会えるのはわたしと二ノ宮さん、式河さんの三人になってしまった。
ルナモンたちはいまでもわたし達とともにある。
 
 
事件資料を運びながらわたしはエレベーターに乗り込み、壁にもたれかかって外を眺めた。
これからわたしは何をするべきなんだろう。
正直、刑事としての仕事が気を入れて出来ているとは思えない。
そう。こんなでよく刑事になれたものだ。
わたしの顔が光に照らされた。
 
 
 
やがて開いたエレベーターに刑事が3人乗り込んだ。
「あれ?なんだこの書類。だれか落としたのかな」
3人は首をかしげ、それらを拾い集めた。
 
 
 
――――――――――――――――――――――――――――
キーボードを叩く音が響く。
 
 
 
〔2・辻鷹泉・・・・完了〕
 
 
彼はイスの背もたれによりかかり、脇の壁に貼り付けられた写真にマーカーペンを走らせた。
和西を見舞いに来た際、撮った集合写真のなかの笑顔がまたひとつ、消えた。
 
 
「第一段階完了、か・・・」
その人物は呟いた。
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