〔リリスモンはシンドゥーラモンの電撃ですらかわす瞬間移動能力、アスタモンを一撃で倒す右腕を武器に戦う 谷川〕
〔つまりその両方を封じればいいわけですよね 辻鷹〕
〔長距離から瞬間移動を封じればリーチの短い右腕はこわくない 積山〕
〔瞬間移動を封じるなんて出来るんですか? 神楽〕
〔ムリね 意藤〕
〔なら長距離からの狙撃はどうだ? 黒畑〕
〔電撃も当たらなかったんだぞ 式河〕
〔式河、ワイズモンの攻撃は?あれはまともに役立っただろう 積山〕
〔敵に近づかないと無理でね。それにリリスモンもワイズモンと当たるのだけはさけると思うよ 式河〕
〔リリスモンが一瞬でも動きを止めれば勝ち目も出てくるんじゃないか? 二ノ宮〕
〔ええ、全方向から攻撃を加えればもしかしたら 和葉〕
〔問題はどうやって止めるか、か。 黒畑〕
〔それなんですよね 和葉〕
〔だれかがオトリになるというのはどうですか? 辻鷹〕
〔よし、アサルトモン、二ノ宮!行け! 積山〕
〔そんな法律はない。冗談じゃないよ。妻子持ちだぞ 二ノ宮〕
〔こんなときにそんな事いいって・・・ずるいぞ・・・。 積山〕
〔あのね。結婚してない上に子供もいないからそんなこと言えるんだよ 二ノ宮〕
〔論点ずれてます・・・ 和葉〕
〔あの、言い出したのはわたしたちです。
「かかってきなよ・・・!!」
リリスモンへの挑発を続け、クレシェモンは右手にもつ弓を引き絞る。
〔なら私もオトリになりましょう。相手が増えればリリスモンの動きが鈍る可能性は高まります。 意藤〕
エンジェウーモンも左手を掲げ、前に突き出した。
弓の様へと変化したそれに光の矢をつがえる。
2組の弓にはさまれたリリスモンは自分に銃口を向ける人間に気づき、驚きをあらわにした。
「お前ごときが我を倒せるとでも?」
リリスモンは冷笑を浮かべる余裕を見せ付け、辻鷹を見下ろす。
氷の拳銃を構える辻鷹は優雅に微笑み返した。
「いいえ・・!でも命中すれば氷の塊があなたにまとわりつくでしょうね」
しっかりとその場に踏みとどまり、銃を握り締められるわたし自身にわたしが驚いていた。
本当に、驚くほど恐怖が薄れていくのが分かった。
「今だッ!!」
「アイ・サー!」
双眼鏡を覗いていた二ノ宮はとなりのアサルトモンに合図をし、アサルトモンは通信機のスイッチをすべて跳ね上げた。
同時に自身も隠れていた瓦礫から抜け出し、高威力のライフルを構える。
携帯電話に着信が入った瞬間、神楽がリリモンにゴーサインを出す。
すでに両腕をエネルギー砲に変化させていたリリモンはすこしためらい、言った。
「ひょっとしたら帰れないかもしれない・・・」
それを聞いた神楽は黙って首を横に振った。
「・・・本気だしてがんばってきて・・。私の武器は刀が一振りだけ。でもそれでもあなたと一緒に戦える」
黙って聞いていたリリモンはいくらか救われたような表情を見せた。
「本気でいいのね?」
「ええ、今本気ださずにいつ本気だすの?」
〔クレシェモンとエンジェウーモンがオトリになるとして、辻鷹さんまではちょっと・・。 谷川〕
雲の中からシンドゥーラモンが急降下を始める。
〔いや、すこしでもリリスモンのすきを広げたいところだ。 黒畑〕
マンホールをそっとあけ、インセキモンが真上のリリスモンの様子を覗う。
〔一発でも攻撃があたればそれがすきを生み、さらに攻撃があたる確立が上がる。そしてそれがまたすきを生む。 和葉〕
巨大な倉庫の扉を押しあけ、デスメラモンが静かに現れる。
〔飛び入りで戦う僕を簡単に受け入れてくれたんだ・・・。絶対にしくじるわけにはいかない・・! 式河〕
経緯を見守っていたワイズモンは両手の指を鳴らした。
その手のひらが開かれ、両手にエネルギーの球が出現する。
〔なに、成功するだろ。失敗するなんて考えてんじゃねぇ 積山〕
トタンの屋根に膝をつき、アスタモンのガトリング砲がリリスモンに向けられた。
〔リリスモンは挑発に乗り、クレシェモンを狙う。冷静さを失わせるために攻撃も加え続けた。エンジェウーモンはクレシェモンを狙ってホーリーアローを放つ。 意藤〕
テイマーの指示通り、リリスモンをはさんでクレシェモンに狙いを定める。
エンジェウーモンの目はリリスモンの動きを見逃すまいと見開かれていた。
たとえ瞬間であっても。
〔わたしはクレシェモンを信じてます。別に無理に信じてるわけじゃない 辻鷹〕
全身を緊張させながらクレシェモンは大きく息を吸った。
最後の対リリスモン用最悪の悪口をいうために。
和西の体は高速で水平移動していた。
ストレッチャーの車輪が猛烈な音を発し、他の人々を威嚇する。
血で紅く染まった視界に辻鷹、嶋川、黒畑、意藤。
様々な人の顔が現れては消え、現れた。
(?おれは・・・、血を吐いたのか・・・)
和西の目の脇を水滴が流れ、血を洗い流した。
(せめて子供ができるくらいまで生きてたかったな・・・)
そう思ったとき、カメモンが視界に浮かんだ。
『おまえさ、なに死ぬ気になってんだ?』
(そういえばそうだな。まだだ・・・。まだバルバモンにやれらるわけにはいかない・・!)
手術室に入る瞬間、和西は気絶した。
クレシェモンの体は宙に浮いていた。
誰に支えられているでもない、自力で浮いていた。
リリスモンは思惑通りに動いた。
怒り狂った右手はクレシェモンによけられる寸前氷の壁に閉じ込められ、反動でそれにたたきつけられた彼女の背にエンジェウーモンの矢が命中した。
動きが完全に止まった瞬間、8体分の攻撃がリリスモンを直撃していた。
猛烈な攻撃を受け、リリスモンはインセキモンの近く、つまり真下に落ちた。
半身がすでに消滅をはじめたリリスモンを囲み、テイマーとパートナーたちが身構えた。
「・・・我が敗けたというのか・・・」
茫然と呟いたリリスモンに和葉が答えた。
「ええ。せっかく苦労して考えた作戦だったんです。みんな死に物狂いで戦った結果です」
「あんた一人なら完全体を束にすれば勝てない事も無い」
二ノ宮が肩をすくめて見せる。
氷の壁を生み出した銃をホルダーにしまい、わたしはリリスモンだった砂に向かって言った。
「 もしあなたが仲間と戦っていたらわたしたちは負けていたかもしれません。・・・チームワークって案外大事なんです 」
空は曇っていた。
それでもわたしたちは不快感を感じなかった。
リリスモン達魔王を倒し続け、疲れきったわたしたちにお似合いの天気だったからかもしれない。
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