今週に入ってデクスドルガモンが出没する割合が高くなった気がする。
和葉とフレイウィザーモンの話によればデクスドルガモンが他のデジモンを倒した例もあるそうだ。
「それほどにデクスドルガモンの闘争本能が高い、というわけか」
積山が納得顔で何度か頷いてみせた。
「なんでここにいるんだ?」
フレイウィザーモンが言ったが、
「まぁ・・・、あまり気にしないであげてくれませんかね」
土井藤が仲介に入った。
わたしたちはデクスドルガモンをさらに数体倒した。
無謀にもポキュパモンが攻撃の中心に割って入りその場にいたデクスドルガモン全てを叩き潰す。
レキスモンは呆れ顔で見ていたが和葉は瞳を輝かせてその様子を見ていた。
前回の戦い以来、半分仲間みたいな状態の積山、ファスコモンが加わったことでデクスドルガモンを倒すのがいくらか楽になった気もする。
戦いを遠目に見守るしかできないわたしにレキスモンが意味ありげな視線を送って上を見上げた。
レキスモンの視線にそって上を見上げたわたしの視界に電柱が止まる。
その上にダルクモンが立っていた。
腕を組んでおそらくは最初から戦いの様子を見ていたのだろう。
そんな中、突如フレイウィザーモンの背後のマンホールが跳ね上がった。
ガワッパモンが姿を現し、道路の一方をふさいだ。
場の異常さに神経を尖らせるわたし達の前に、前に会った事のある意藤という女性、和西という男、さらには二ノ宮、黒畑、さらには林未までいた。
一度に9人のテイマーがそろったことになる。
これ以上ない張り詰めた空気のなか二ノ宮が歩み寄った。
「戦うつもりはない。これを見て欲しいんだが」
手に持った紙を差し出してきた。
捜索願の手配書だ。
「それが・・・、なにか?」
谷川が油断なく聞き返す。
二ノ宮はとうとう手を伸ばせば体に届く位置までやってくると口を開いた。
「この行方不明の男、“有川英燵”、デジモンに連れ去られたらしい」
積山、和葉、谷川、辻鷹の表情がすこしふれた。
「なに・・・?」
積山が思わず言葉を漏らす。
「そこでだ。救出を手伝って欲しい」
「そーいう話ならすぐにでも協力したいけどサ・・・」
まだ様子を覗っている和葉が口ごもった。
「人がさらわれて生きてるかどうかもわかんねぇんだ。別に妙なこと考えちゃいないさ」
和西が肩をすくめてみせた。
「おれらだって人を救うために戦っている」
フレイウィザーモンが食って掛かる。
「それは分かる。だがお前たちだけですればいい。そうしないということはそれ相応に強い相手、ということか・・?」
意藤、和西が一度顔を見合わせた。
「・・・察しがいいな。それでも一緒に戦ってくれるか?」
今度は谷川たちが顔を見合わせる番だった。
わたしは一度大きく頷いた。
レキスモンの表情が気になったが心配とは裏腹にいい笑顔を返してくれた。
「どうしても完全体に進化しないと太刀打ちできない。こちらではガワッパモンとゴーレモンが進化できるようになったが・・・・」
「こっちはあたし達だけだね」
和葉がフレイウィザーモンと並んで立ち、顔を見合わせた。
「まずは進化の方法を探る事からはじめたい」
意藤が思案顔で呟いた。
上も下も左も右も。前も後ろすらも分からない世界に声だけが響いた。
「まだリアライズできん、のか・・・」
重く、年老いた男性のような声だ。
「ムリにでも出ちまえばいいのにさ」
高い女性の声が苛立ちを口調で表せてみせる。
「無理だ。我々ほどの容量がリアライズすることは容易ではない。たとえリアライズできたとしてもなんらかの制約がかかるだろう・・・」
氷のような冷たさを感じさせる若い男の声だ。
「この我輩が知った事か!制約など・・・この『デーモン』の力に制約をかけるだと・・・!?我が力、侮る出ないぞ・・・!」
デーモンと名乗った声はそれきり聞こえなくなった。
「奴め・・・死ななければいいがな」
吼えるような壮大な声があざ笑うかのような口調で言った。
魔王達の声を黙って聞いていたベルゼブモンは首を振った。
「いや、デーモンは死ぬだろうな」
そういい残し、ベルゼブモンはその場から立ち去った。
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