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エターナル・ログ・ストーリー

   第2章
この<第2章>は『エターナル・ログ・ストーリー』最初の10人の物語です。
 
第二章と銘打っていますが第一章、第二章、どちらから読んでいただいても結構です。
ただ、<第三章>は全てを読んだ一番最後に読んでください。
 
 
テイマーたちの戦いをご一読いただければ幸いです。
 
6      No−6「This,Acsiadent,Know?」
二ノ宮、和葉に招き入れられたのは大きな大学の一角だった。
黒光りしたソファに何人か腰掛けている。
「ようこそ」
「はじめまして」
口々に挨拶してくる人々のとなりには一体ずつデジモンが見えた。
「あ・・・、どうも・・・・」
上の空で応えながらわたしはひとりひとりをみた。
まず、一番手前にいたのは軽く日に焼けた顔をした高校生くらいの男性、よこにはヘルメットを被ったカメのようなデジモン。
そのむかいには大人びて見える女性が微笑み返していた。
膝の上にオレンジ色の毛をもつデジモンが寝息をたてている。
それぞれ、
「和西良平!よろしくな!」
「意藤響音です」
和西さんは人畜無害な笑顔で自己紹介し、意藤さんは軽くお辞儀をした。
「僕はカメモン。響音の上で寝てるのはパタモンさ。よろしくなぁ」
どこかの方言みたいなしゃべりかたでカメモンが自己紹介をする。
パタモンの耳が一度、ピクピクと動いた。
 
頃合いを見計らっていたのかもしれない。
不意に和葉がわたしを見上げて言った。
「あたしはね。嶋川和葉。和葉ちゃんってよんでもいいよ。普段は占いのバイトしてる」
“和葉ちゃん”はフレイウィザーモンを紹介し、わたしにソファをすすめた。
その向かいに“二ノ宮”が腰掛ける。
「はじめまして。おれはまぁ、この研究室の二ノ宮洋一ってもんだ。パートナーはハグルモン、つまり、コイツ」
ずっと無言を通していたハグルモンは、
「・・・・・・・・・・・・・・・」
やっぱりしゃべらない。
 
二ノ宮さんは手早く説明をはじめた。
要約すると、
・自分と和葉ちゃん、和西、意藤の4組のテイマーは2年前というだいぶ早い時期から戦い続けてる、ということ
・たまたま電子科の研究所に所属していた自分はあるとき、デジモンがデジタルワールドという別世界からやってくるということを知った
・デジモンテイマーは世界中にいるらしく、テイマー同士戦うことも多いこと
・自分達はデジタルワールドへ行く方法を探していること
 
「なんでデジタルワールドに行きたいんですか?」
わたしの問いに意藤さんが答える。
「確実にデジタルワールドへの入り口を開く方法を探して、デジモンを送り返す」
わたしは驚いた。
「どうしてですか・・!?」
「どうしてって・・・、そりゃもちろん・・」
和西が口を開いたがわたしはそれ以上聞く気になれなかった。
「もういいです!失礼しました」
勢いよく立ち上がり、部屋を後にしたわたしは駆け足で大学のキャンバスを抜け、もとの街に戻った。
何度か振り返り、誰も追ってこないのを確認したわたしは息をついてガードレールにもたれかかった。
そんなわたしの目の前に和西が現れる。
「ひ・・・!」
思わず声を上げたわたしを和西さんが引き止めた。
「あのさ、これだけ・・、ちょっと言っときたかったんだが。近頃ナイトメアソルジャーズとかいう連中がうろついてるんだ。あんたも気をつけたほうがいい。俗にいう悪魔とかそういう系の姿してるからすぐ分かるとおもう」
わたしは首がしまる直前くらいのつよさでルナモンを抱きしめた。
そんなわたしの様子を見て和西は付け加える。
「さっきのことだが・・・、誤解されたとは思ってない。普通に考えてデジモンが街で暴れるなんてあんまり安全そうな話には聞こえないだろう?」
結局、最後まで警戒しつづけたわたしに軽く手をふって和西は人ごみのなかに消えていった。
いまごろになって背中を嫌な汗が流れるのがよく分かる。
 
 
かなりの速さで大学内を駆け抜けた和西はちょうど扉の前にやってきた積山、黒畑と林未に声をかけた。
「おい、遅かったんじゃねぇの?」
「悪い。人が多くてな」
積山は少しも悪びれずに答えた。
黒畑はパートナーのゴツモンを部屋の中に入れながら訊いた。
「二ノ宮が言ってた“新しいテイマー”ってだれだ?」
「そいつなら今帰ったよ」
それを訊いた林未はすこし視線を落とした。
「だいぶ出遅れちゃったみたいですねぇ・・・」
積山は時計を見ると和西を睨みつけた。
「おれ達は遅刻してねぇぞ?・・・で?名前とかは?」
和西は首の後ろをさすりながら言う。
「たしか、辻鷹泉だったな。ルナモンを連れてた」
「泉さんが来たんですか」
神楽を見てファスコモンが訊いた。
「知ってんのか?」
「よく知ってましたよ」
更新
2007/11/25 

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