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エターナル・ログ・ストーリー

   第2章
この<第2章>は『エターナル・ログ・ストーリー』最初の10人の物語です。
 
第二章と銘打っていますが第一章、第二章、どちらから読んでいただいても結構です。
ただ、<第三章>は全てを読んだ一番最後に読んでください。
 
 
テイマーたちの戦いをご一読いただければ幸いです。
 
7      No−7「What,Time,Yesterday」
本物の日本刀まで置いてあるその部屋はおおよそ16歳の女子高生の部屋とは思えない。
「話、とはなんですか?」
神楽が向かいに正座で座る。
ゴツモンと顔を見合わせ、黒畑が口を開いた。
「私たちはこの戦いから降りることにした」
神楽もフローラモンも表情をまったく変えず聞いていた。
「この戦いに意味はない。そう思う。第一私たちの意志に反する」
黙っていた神楽だがやがて口を開いた。
「わたしはただフローラモンと友達としてあり続けたい。戦友なんかには・・・・なりたくない」
「それが君たちの意見なんだね。ぼくたちも同感」
「そうね」
ゴツモンとフローラモンも賛同する。
「どう考えてもレキスモンやポキュパモン、ピーコックモンがやっているのは・・・。私は死に耐えられるほど強くない」
「・・・・・・なるほど」
神楽は目を細めるとそのまま伏せた。
「これからどうするわけ?」
フローラモンが訊いた。
「とりあえず僕たちは他のデジモンと組んだ人間、テイマーを監視するけど。きみたちはどうする?」
ゴツモンが答える。
神楽は目を上げ、黒畑たちを見た。
「分かりました。わたしたちも様子を見る事にしましょう」
黒畑は初めから終わりまで無表情のまま腰を上げた。
ゴツモンが言う。
「じゃあ失礼するね。お茶、ごちそうさま」
神楽は廊下に出た黒畑の背中に声をかけた。
「・・・・・・・・なにか」
「じつは・・この前の女の子、わたしの友達なんです」
黒畑は顔だけ向けて、そして無言のままゴツモンと姿を消した。
「お気をつけて」
神楽は黒畑に呼びかけた。
 
外に出た黒畑とゴツモンはしばらく歩いた。
何度も角を曲がり、そして黒畑は前を向いたまま言った。
「いるんだろう。姿を見せたらどうだ」
反応はない。
「あの部屋にいた全員があなたの盗み聞きを知っています」
神楽が曲がり角から姿を現した。
彼女の視界にはフローラモン、黒畑とゴツモンしか見えない。
やがて何もいない場所から声が聞こえた。
「驚いたな。お前たちごときに見破られるとは」
4人が思わず身構える。
そして体の緊張を解いた。
「逃げたみたいだ」
ゴツモンがテイマーに告げた。
「何者・・・?」
フローラモンが他の3人を見まわして言った。
「わからないが、他の4人のも知らせるべき・・・、だと思う」
黒畑はそうつぶやき神楽とフローラモンの横をゴツモンと通り過ぎて消えた。
 
 
通り過ぎた瞬間、
「お気をつけて」
「そちらこそ」
という短い会話が交わされる。
 
 
ふと、蛍光灯の下で立ち止まった和葉は電柱から飛び降りてきたフレイウィザーモンと眼を合わせた。
「・・・さっきから思うんだけど、つけられてるね」
「同感。どうする?引きづり出すか?」
和葉は軽く、注意して見ないと分からないように頷くと再び歩き始めた。
ワンテンポ遅れて黒い影が追いすがる。
 
「[ファイヤークラウド]!!!」
黒い影を炎の塊が直撃し、周囲が一瞬昼間のように明るくなった。
「やった・・!?」
「いや・・・、はずした」
舌打ちを漏らしたフレイウィザーモンは視線の先を見据えた。
黒い影は3メートルほどの高さまでせり上がり2つの目が2人を見下ろす。
「フフフフフフ・・・・・。愚かしい雑魚め・・・」
声が途絶えた瞬間、暗黒の空間に黒い歪みのようなものが現われた。
 
2メートルほどの細い体躯には巨大な黒い翼が目立ち、白く無表情な牡鹿の顔はそれと対照的だった。
 
メフィスモン、完全体。
 
「我使命は人間とデジモン、即ちテイマーとパートナー。お前たちの滅殺である。[ブラックサバス]」
暗黒の衝撃が2人を直撃し私立の碧の制服が引き裂かれる。
この瞬間和葉は気を失った。
ピンポイントの一撃は路地の一部を吹き飛ばし闇の柱が立ち昇った。
「・・・・他愛も無い」
メフィスモンは闇の柱を後にし歪みに戻っていく。
その足が歪みにかかった瞬間だった。
「フレイウィザーモン進化」
闇の柱からくぐもった声が響く。
「何ィィィ・・・・・!?」
 
ありえないはずの事実に目を見開いたメフィスモンが振り向く。
 
「        デスメラモン       」
 
炎に闇の柱が飲み込まれそして両方とも消えた。
膨張した空気が風を巻き起こす。
抱きかかえられた和葉の胸元、鎖で首にかけられた機械が紅々と輝き、全体がルビーのように光を放つ。
「ば、・・・かな・・。完全体、だと?」
メフィスモンが後ずさりを始める。
「おのれ・・・・、闇で押しつぶしたはず・・・」
デスメラモンは和葉を地面に横たえると長く伸びた鎖を握り締める。
「[デスクラウド]!!!」
「[ヒートチェーン]!!!!!!」
壮絶な叫び声をあげ、デスメラモンとメフィスモンが鎖でつながれる。
メフィスモンの体を貫いた鎖は遠心力により彼の身体を強烈に締め上げる。
炎が吹き上げ、焼き尽くした。
 
 
ほぼ全ての力を使い果たしたフレイウィザーモンはパートナーを抱えるとなんとか立ち上がった。
消し炭同然になったポストが無残にも崩れ落ちる。
 
朦朧とした意識のなか、フレイウィザーモンははるか後ろで何人かの人間が破壊された路地を見つけてなにかを叫ぶのを聞いた。
更新
2007/11/26 

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