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しょうせつ
ばんがいへんおきば

小説番外編置き場
いろいろな所で書いてきたエターナル・ログ・ストーリーなどの番外編を公開するページです。
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2      No-4 「You,Aer,War」
No-4 「You,Aer,War」
 
目を開けた。
白いカーテンが朝日に薄く照らされる。
 
わたしはゆっくりと体を起こした。
ルナがわたしの枕に抱きついて小さな寝息を立てていた。
「うう・・・、ん・・・」
ルナは朝日に顔をしかめ目をこすりながら起き上がった。
「ご、ごめん。起こしちゃった・・・?」
わたしは今になって謝った。
「ううん。大丈夫。おはよ」
わたしはほっとして挨拶を返した。
「おはよ」
 
わたしたちは当ても無く出かけた。
10分ほどふらふらと歩き回っただろうか。
「泉、止まって」
ルナがするどい口調で言った。
「だれか、いるんでしょう!?」
すると少し離れた所から3組のテイマーが現れた。
一人は積山。ポキュパモンが前に直立不動で立っている。
もう1人は男。眼鏡の奥の目はオレンジ色をしている。その前には3メートルほどの大きさの岩石人形のようなデジモン。
そして・・・
最後の一人の顔を見たわたしは息を飲んだ。
神楽が普段着姿で立っていた。その前にはサボテンのようなデジモン。
「左から、黒畑くん、ゴーレモン、林未さん、トゲモンだ」
積山が仲間を紹介した。そして、
「この大人数相手に勝てるかな?それとも仲間にならないか?」
そう呼びかけてきた。
「どういうこと?」
わたしはまた思わず訊いた。
「おれのケータイにメールが来たんだよ。『君こそが正義の名を冠したテイマー。君に全ての悪のデジモンを倒す事をまかせたい』てな」
積山の言葉に思わずわたしは笑った。
「なによそれ。まさかそんなメールを信じてるんじゃないでしょうね」
積山も笑った。
「もちろん信じてない。だけどな。そんなことはどうでもいい。おれたちは自分の意思で戦う」
「ならほっといて欲しいわね」
ルナがわたしの肩から飛び降りた。
「そうかい?別にほっといてもかまわないんだこっちとしてはね。ただ今日は君たちに仲間にならないかと誘いに来たんだ」
「仲間?」
わたしとルナの声が重なった。積山は続ける。
「そう。仲間だ。一緒に戦おう」
それを聞いてわたしたちは前に歩いた。数歩進んでわたしは神楽の肩を掴んだ。
「ねぇ神楽!あなたこんなことするの?喧嘩とかは本当は嫌いだって言ってたじゃない!」
神楽はほんの少し考え、首を縦に振った。そして
「わたしはそれでも戦う」
わたしの目をしっかりと見据えて答えた。
「そんな・・・・。戦うってどうするの!?殺すの!?」
わたしは少し落ち着きが足りないみたいだ。
「・・・・・・・結果的にはそうなる・・」
色黒の黒畑という男が言った。
わたしとルナは後ろにあとずさった。さっきと同じところに立った。ルナがわたしを見上げ、頷いた。
「そうならわたしたちが止める。わたしたちが食い止める」
わたしは右手の機械を抱きしめた。わたしの胸元と右横が光り輝く。
「ルナモン進化・・・!」
3体のデジモンはすでに間合いを詰め3方向から攻撃を繰り出す。
「[マッドネスブローチ]」
「[ゴーレムパンチ]!」
「[マッハジャブ]!」
 
「    レキスモン     」
 
光が消え、3体の攻撃は空振りに終わる。
その瞬間わたしの体は宙を舞い、いつの間にか離れた所に着地したレキスモンに抱きかかえられていた。
「危ないじゃない。泉に流れ弾でも当たったらどうするつもり?」
レキスモンはわたしを下ろすと3体の前に立って挑発した。
「悪いんだけどね。泉になにかしようなんて私がいる限り無理よ」
言うが早いかレキスモンは飛び上がりポキュパモンにとび蹴りを撃ち込んだ。
すぐ脇に吹き飛ばされたポキュパモンにまったく動じず黒畑はたった一言ゴーレモンに指示した。
「左だ」
とっさに左を向いたゴーレモンのわき腹に炎が炸裂する。
道路にヒビを入れ倒れたゴーレモンの上に紅蓮の衣をまとったデジモンが立っていた。
「泉さん!」
聞き覚えのある声に反応して振り向いたわたしの目に蒼い巨鳥が映った。
「谷川さん!」
ピーコックモンから飛び降りた谷川さんは誰か、女の子と一緒だった。
「援護に来ました。なにしてるんです?」
「止めるの!あの3人と3体を絶対に止める!」
「分かりました」
早口に会話を終えた谷川さんはピーコックモンに指示を出した。
わたしは谷川さんよりも背の低い紅い髪の女の子を見ていた。
「谷川さん・・。この娘、だれですか?」
谷川さんは手で指して紹介してくれた。
「彼女は嶋川和葉さん。あそこにいるフレイウィザーモンのテイマーです」
「嶋川和葉です。はじめまして」
ペコリと頭を下げてくれた。わたしも頭を下げる。
 
レキスモンはポキュパモンの体から伸びるナイフを避けまわし蹴りを顔面に叩き込んだ。
しかしびくともしない。逆に足をつかまれ道路に叩きつけられる。しかし寸前で体をひねって激突を避けた。
「[ムーンナイトキック]!」
飛び上がり、くるりくるりと2回転するとレキスモンは勢いをつけてポキュパモンの脳天に急降下蹴りを叩き込んだ。
とたんに悲鳴が上がりレキスモンが倒れた。ポキュパモンは直撃を受け気絶したようだ。
わたしは足を押さえて呻くレキスモンを見て頭の中が真っ白になるところだった。
「泉さん!」
谷川さんがわたしの肩をつかんでゆすっていた。わたしは我に帰ってレキスモンに駆け寄った。
「大丈夫!?レキスモン!!ねぇ!!」
レキスモンは起き上がって押さえていた右足から手を離した。表面が裂けている。
わたしは息を詰まらせた。
「だいじょうぶだ!心配いらない。人間で言う切り傷だ。そのうち直る!下がってろ!」
フレイウィザーモンがわたしたちとゴーレモンの間に割って入った。
「やばい・・・。こいつら強い!」
フレイウィザーモンはチラリと後ろを見た。
「和葉!逃げろよ!」
「いやよ!あなた置いて逃げられるわけないじゃない!」
フレイウィザーモンは笑うと言った。
「それ聞いて安心した!」
言うが早いか両手を掲げて叫ぶ。
「くらえ・・・![ファイヤークラウド]!!」
轟音とともに火球が現れフレイウィザーモンはゴーレモンにそれを叩きつけた。
ほとんど音は無かった。炎がゴーレモンを包み、それが消えゴーレモンは真横に倒れた。
やがて
「・・・・きつい・・・」
フレイウィザーモンもひざをつき、倒れてしまった。
和葉ちゃんが悲鳴をあげて座り込んでしまった。
 
 
「休戦です!!やめろ!!もうやめろ!!!」
 
 
谷川さんが間に立った。神楽とトゲモン、ピーコックモンもだ。
 
 
「もうやめろ!戦うな!」
「言われなくても戦えねぇよ!」
積山が吼える。ファスコモンを抱いていた。
「いまさら“戦うな”・・・!?」
和葉ちゃんもフレイウィザーモンに肩を貸して立ち上がり声を荒らげる。
「今神楽さんと相談していた。仲間になろうなんてもう言わないでくれ。個人で行動して欲しい。どうしても誰かと組みたかったら相手の意見を尊重する。これでどうだ!?」
谷川さんがみんなを見回した。
 
やがて和葉ちゃんがフレイウィザーモンを気遣いながら去っていった。
 
「いい案だ。私は賛成だな」
落ち着いた声で言い残すと退化したゴツモンを背負って黒畑も帰っていった。
 
わたしはルナを抱きかかえると逃げるようにその場を後にした。
              
 

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