某所、某マンションのとある部屋、
とりあえず8人そろった十闘神のうち5人がパートナーとクーラーの効いた部屋で寝ていた。
「涼しーね」
谷川が上着を体にかけた状態で寝返りをうつ。
「涼しいなぁ・・・」
辻鷹は目を細めて、同じように寝返りをうつ。
その瞬間だった。
ピッ!バキッ!
「ピッ?」
コテモンが面の奥の目で瞬きした。
強烈に叩きつけられた辻鷹の右腕がクーラーのリモコンを破壊したようだ。
同時にクーラーが停止を始める。
「おいおいおいおいおいおいおいおいおい」
嶋川がクーラーに駆け寄るがクーラー、
沈黙。
セミの声だけが響く。
「暑いよー!死んじゃうよー!」
真夏の太陽の下、避雷針に上下逆さに縛られた辻鷹は目の前に立てられた炎撃刃から顔を背けていた。
「暑い」
上着を脱ぎ捨てた状態の谷川が寝返りをうつ。
「なるべくそういうこと言わないでよ」
二ノ宮が窓の縁に腰掛けて言った。
「暑い暑い暑い暑い暑い!!」
谷川が怒鳴る。
「・・・・・・・」
「あー、もう!余計暑くなっちゃった!!」
たまらず身を起こした谷川を見て嶋川は呟いた。
「どっかのマンガでやってそうな状況だな」
すでにトレードマークのバンダナを外していた林未が提案した。
「なぁ。どっか店、行かないか?」
全員一致で彼らは部屋を出た。
「暑っついなー!」
部屋に続く廊下を6つの影が歩いてきた。
「そういうことはなるべく言わないように」
背伸びのように体を伸ばして叫んだ柳田を積山がたしなめた。
「にしてもアイスと飲むもん買ってこい、言われてジャンケンで買いに行くやつ決めて積山全部負けるんやもんなぁ」
自分達の状況を急に喋りはじめた柳田にギルが言った。
「・・・なんで説明口調なんだ?」
部屋の前に彼らが近づくにつれて会話が室内からも聞こえてきた。
「ほやけど、なんでそんなにジャンケン弱いんや?」
「知らないよ。何故か僕が出した手はいつも負ける」
「そんなもんか?いままで一回も勝ってないんやろ?さーて・・・」
ドアが吹き飛ぶ寸前まで勢いをつけられ開いた。
「アイス買ってきたぞー!!!!!・・・・・・・?」
室内の入った積山たちは割れたリモコンと停止したクーラーを見つめ、そして誰かの声に気づいた。
屋上で干物寸前になっていた辻鷹とガブモンを発見するのにそう時間はかからなかった。
「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ・・・死ぬと思った・・・・。死ぬんだと思った・・・・」
不気味な笑いを含んで鼻をすすったガブモンと辻鷹を見て積山とギルは肩をすくめた。
「あっ、帰って来たな」
コクワモンがぞろぞろと建物に入っていく人影+デジ影を見つけて声を上げた。
「じゃあクーラーでもつけといたるか」
柳田がにやにやした笑みを浮かべて言った。
「涼しかった」
二ノ宮はドアノブを握ると扉をあけ、同時に驚いた。
「冷た・・・!」
ペットボトルのお茶を飲んでいた4人と4体が同時に顔を上げた。
「あっ、お帰り。暑い中ごくろーさん」
柳田がボトルを咥えたままフゴフゴと言った。
「どーして?どーしてクーラー動いてるの?」
谷川が辻鷹を揺さぶる。夏バテですでにふらふらの彼はそのまま後ろに倒れる。
辻鷹仁。ダウン。
ギルが事も無げに答えた。
「なんでって・・・。スペア」
四角い物体を持ち上げた。
「!ありえねぇ!!」
アグモンが愕然とした顔で叫んだ。
積山がため息をついてクーラーを指差しながら言った。
「あるわけ無いでしょ。スペアなんて」
そして続けた。
「直接スイッチ入れましたよ」
「・・・・・・・・・・・」谷川。
「・・・・・・・・・・・」ホークモン。
「・・・・・・・・・・・」二ノ宮。
「・・・・・・・・・・・」ファンビーモン。
「・・・・・・・なるほど」林未。
「・・・・・・・・・・・」コテモン。
「おいおいおいおいおいおい」嶋川。
「!ありえねぇ!!」アグモン。
静まり返った部屋でいままでずっと麦茶を飲んでいた和西とゴマモンが呟いた。
「・・・ぼくら一言もしゃべってないし・・・」
END。よい夏をお過ごし・・・ましたでしょうか?
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