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しょうせつ
ばんがいへんおきば

小説番外編置き場
いろいろな所で書いてきたエターナル・ログ・ストーリーなどの番外編を公開するページです。
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5      No−7 「You,Well,Get,Chance?」
 
その日の朝・・・・・・・
 
「無理しないでね」
和葉の寮の部屋、ベットの上にフレイウィザーモンが体を起こしていた。
「だいじょうぶだ。和葉こそ寝てないんじゃないのか?」
彼女は首を横に振り背を向けた。
「もう限界・・・。わたし、谷川とか言ってたやつに会ってくる」
 
 
まだ日が昇る気配もない路地を和葉とフレイウィザーモンが歩いていた。
「ついてこなくても良かったのに」
パートナーを気遣いながら手元のメモで道を確認しようとした和葉は不意に暗くなった手元に驚いた。
何もいない。薄いグレーの空が見える。
しかし2人は完全に影に覆われていた。
「何者だ・・・!?」
フレイウィザーモンがマッチのように見える杖を抜いて目を凝らす。
 
「フフフフフフ・・・・・。愚かしい雑魚め・・・」
声が途絶えた瞬間何も無い空間に黒い歪みのようなものが現われた。
 
2メートルほどの細い体躯には巨大な黒い翼が目立ち、白く無表情な牡鹿の顔はそれと対照的だった。
 
メフィスモン。完全体。
 
「我使命は人間とデジモン、即ちテイマーとパートナー。お前たちの滅殺である。[ブラックサバス]」
暗黒の衝撃が2人を直撃し私立の碧の制服が引き裂かれる。この瞬間和葉は気を失った。
ピンポイントの一撃は路地の一部を吹き飛ばし闇の柱が立ち昇った。
「他愛も無い」
メフィスモンは闇の柱を後にし歪みに戻っていく。その足が歪みにかかった瞬間だった。
「フレイウィザーモン進化」
闇の柱からくぐもった声が響く。
ありえないはずの事実に目を見開いたメフィスモンが振り向く。
 
「        デスメラモン       」
 
炎に闇の柱が飲み込まれそして両方とも消えた。膨張した空気が風を巻き起こす。
抱きかかえられた和葉の胸元、鎖で首にかけられた機械が紅々と輝き、全体がルビーのようになっていた。
「ば、・・・かな・・。完全体、だと?」
メフィスモンが後ずさりを始める。
「おのれ・・・・、娘と共に闇で押しつぶしたはず・・・」
デスメラモンは和葉を地面に横たえると長く伸びた鎖を握り締める。
「ただ逝け![デスクラウド]!!!」
「[ヒートチェーン]!!!!!!」
壮絶な叫び声をあげ、デスメラモンとメフィスモンが鎖でつながれる。
メフィスモンの体を貫いた鎖は勢い余って遠心力が生じ彼の身体を強烈に締め上げ、そこから炎が吹き上げ、焼き尽くす。
 
 
ほぼ全ての力を使い果たしたフレイウィザーモンは和葉を抱えるとメモを拾い上げた。
しかし消し炭同然になっていたそれは無残にも崩れ落ちる。
 
朦朧とした意識のなか、フレイウィザーモンははるか後ろで何人かの人間が破壊された路地を見つけてなにか叫ぶのが聞こえた。
 
 
 
そして半日放浪していた2人は林未と書かれた表札を発見した。
フレイウィザーモンは最後のチャンスを賭け、塀を飛び越える。
 
 
 
「病院についたそうです」
簡単な羽織の寝巻き姿の神楽が受話器を置いて隣に立っていたフレイウィザーモンに言った。
彼は心の底から安心した表情で息を吐いた。
「よかった・・・・。和葉になにかあったら私は死んでも死にきれない・・・」
そうつぶやく。それを聞いたフローラモンが訊いた。
「何があったの?」
いくらかきれいになった帽子を被りなおすとフレイウィザーモンは若干聞き取りにくい声で説明を始めた。
そして・・・・
 
「あなたの仲間にして欲しい。フローラモンから話は聞いた。戦いを望まないのなら私たちも同じ意見だ」
フレイウィザーモンは神楽を見、神楽は頷いて見返した。
フレイウィザーモンは軽く何度か頷き、その場に崩れるように座り込み、寝てしまった。
 
「気が緩んだんだと思う」
神楽は横にした彼に毛布をかけながらフローラモンに言った。
「和葉のことはどうするの?」
「とりあえず黒畑さんに連絡したらどうしたらいいか教えてくれた・・・・・・
 
彼女は交差点で倒れていた。
 
「なるほどね。そう言い訳するのね」
フローラモンは納得したように軽く首を振り、やがて床の間に戻っていった。
「そういうこと。そうだ、和葉さんにも口裏を合わせてもらわないと・・・・・」
神楽は布団に横になり、そうつぶやいたかと思うとすぐに寝息が聞こえ始めた。
 
              
 

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