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しょうせつ
ばんがいへんおきば

小説番外編置き場
いろいろな所で書いてきたエターナル・ログ・ストーリーなどの番外編を公開するページです。
よろしければご意見や感想を雑談掲示板にお願いします。
6      No−5 「Yes,Or,No」
 
ルナの足の包帯は予想していたよりも早くにとれた。
傷はすっかり消えている。
「だいじょうぶなの?」
わたしは足をなでながら訊いた。
「だいじょうぶよ。心配しないで」
ルナはいつもどおりの表情で答えた。
 
ここは谷川さんの家の地下室。ひろびろとした部屋はひんやりとしていて居心地がいい。
ルナは傷が癒えるまでここで休んでいた。
 
「谷川さん、ありがとうございました」
わたしたちは素直にお礼を言った。
玄関まで送ってくれた谷川さんは抱えていたペンモンを下ろしてわたしの顔を見た。(というよりも見上げたんだけどね)
「泉さんとルナがいいのならの話ですけど僕たちと組みませんか?」
「要するに今までどおり?」
ルナが飛び降りてペンモンにじゃれあいながら言った。
「そういうことです」
「わたしはいいよ。これからもよろしくね」
わたしがそう返事した瞬間だった。
「おれたちも混ぜてくれよ」
後から聞き慣れた声がした。あまりにも突然でわたしは驚いて振り向いた。
積山とファスコモンがすぐ後ろに立っていた。
・・・この人たちは忍者?
「おたがい悪い話じゃないと思うけど?」
ファスコモンがククク、と笑いながら言った。
「まぁお前らの意見を尊重する。これはルールだからな」
谷川さんは瞬き1つせず見ていた。すこし時間がかかって、
「僕はかまいません」
そう答えた。
わたしも自分の意見を告げる。
「わたしも別にかまわないよ」
ルナも頷く。ペンモンは興味なさそうにルナを頭に乗せた。
 
 
 
黒畑はコートを着たまま座布団に座っていた。
本物の日本刀まで置いてあるその部屋はおおよそ16歳の女子高生の部屋とは思えない。
「話、とはなんですか?」
神楽が向かいにやはり正座で座る。ゴツモンと顔を見合わせ、黒畑が口を開いた。
「私たちはこの戦いから降りることにした」
神楽もフローラモンも表情をまったく変えず聞いていた。
「この戦いに意味はない。そう思う。第一私たちの意志に反する」
黙っていた神楽だがやがて口を開いた。
「わたしはただフローラモンと友達としてあり続けたい。戦友なんかに・・・・なりたくない」
「それが君たちの意見なんだね。ぼくたちも同感」
「そうね」
ゴツモンとフローラモンも賛同する。
「どう考えてもレキスモンやポキュパモン、ピーコックモンがやっているのは殺しと殺し合いだ。私は死に耐えられるほど強くない」
「・・・・・・なるほど」
神楽は目を細めるとそのまま伏せた。
「これからどうするわけ?」
フローラモンが訊いた。
「とりあえず僕たちは他のデジモンと組んだ人間、テイマーを監視するけど。きみたちはどうする?」
ゴツモンが答える。神楽は目を上げ、黒畑たちを見た。
「分かりました。わたしたちも様子を見る事にします」
黒畑は初めから終わりまで無表情のまま腰を上げた。ゴツモンが言う。
「じゃあ失礼するね。お茶、ごちそうさま」
神楽は廊下に出た黒畑の背中に声をかけた。
「・・・・・・・・なにか」
「じつは・・この前の女の子、わたしの友達なんです」
黒畑は顔だけ向けて、そして無言のままゴツモンと姿を消した。
「お気をつけて」
神楽は黒畑に呼びかけた。
 
外に出た黒畑とゴツモンはしばらく歩いた。
何度も角を曲がり、そして黒畑は前を向いたまま言った。
「いるんだろう。姿を見せたらどうだ」
反応はない。
「あの部屋にいた全員があなたの盗み聞きを知っています」
神楽が曲がり角から姿を現した。
彼女の視界にはフローラモン、黒畑とゴツモンしか見えない。
やがて何もいない場所から声が聞こえた。
「驚いたな。お前たちごときに見破られるとは」
4人が思わず身構える。
そして体の緊張を解いた。
「逃げたみたいだ」
ゴツモンがテイマーに告げた。
「何者・・・?」
フローラモンが他の3人を見まわして言った。
「わからないが、他の4人のも知らせるべきだと思う」
黒畑はそうつぶやくと神楽とフローラモンの横をゴツモンと通り過ぎた。
 
 
通り過ぎた瞬間、
「お気をつけて」
「そちらこそ」
という短い会話が交わされた。
              
 

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