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しょうせつ
ばんがいへんおきば

小説番外編置き場
いろいろな所で書いてきたエターナル・ログ・ストーリーなどの番外編を公開するページです。
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7      No−3「This,Acsiadent,Know?」
 
 
谷川さんの部屋に通されたわたしは驚いた。ルナモンもそうだろう。
無駄に狭い。
ここまでの道筋は広い庭、大きな玄関、長い廊下などとにかく大きかったのだけど・・・。
「ごめんなさい。普通は女性をこういう部屋に通すわけには行かないんですけどね」
「でもなんでこの部屋こんなに狭いの?」
あやまった谷川さんにルナが ―昨日の夜ベットの中でそう呼ぶ事に決めた呼び名だ― 容赦なしの質問を投げかけた。
「広い部屋だと落ち着かないんです」
そう答えて谷川さんはペンモンを抱き上げて自己紹介をした。
「ぼくは谷川巧一。高校2年生です。パートナーは彼」
「ペンモンだよ。よろしくね」
わたしは谷川さんを眺めた。わたしよりこぶし2つ分くらい背が低い。でもこれは言ってはいけないことだよね。
「泉より背、低いよね」
ルナの言葉にわたしは慌て谷川さんの顔が引きつった。
 
 
復活した谷川さんを先頭にわたし達は廊下を歩いていった。谷川さんは振り返って右手につけられた機械を触って言った。
「この機械はどうやらペンモンやルナモンをピーコックモンやレキスモンに進化させることが出来る。そういう機械だと思うんです。そして多分ポキュパモンも積山の持つ機械の力で進化したものだと」
わたしはあらためて機械を眺めていて、そして谷川さんにぶつかってしまった。
謝ったが谷川さんはさほど気にせずに庭に出た。そのまま真ん中まで歩いていき胸の高さで機械を押さえた。どうやら進化させようとしているらしい。
 
「ペンモン進化・・・!」
突然ペンモンが輝き、光の向こうから声が聞こえた。金属がぶつかる音が響き、強い風と共に光が吹き飛ばされた。
 
「ピーコックモン」
 
 
谷川さんは右手の機械を2、3度なで、やがてピーコックモンを軽く叩いて言った。
「いまさらなんですけど信じられませんよね」
確かに。あまりにも“非日常”続きで感覚が変になってるのかもしれない。
ピーコックモンへの進化を別段驚きもしなかったのだから。
わたしは思い切って質問をしてみることにした。
「どういう仕組みなんですか?・・・進化、てなんですか?」
谷川さんは難しい顔をし、やがて首を横に振った。
「わかりません。さっぱり。ピーコックモンは分かります?」
ピーコックモンは首をひねった。金属がこすれてその音が響く。
「皆目。見当もつかん。しかし進化にはテイマーの意思が必要だとおれたちは知っている」
「つまり物理的なことは分からないけどぼくたちの思いが進化に必要、ということか・・・」
・・・わたしにはすこし分かりにくいんだけど。
 
 
林未神楽。彼女は校庭の一角の芝生の上でのんびりと座っていた。
「いい天気だなぁ・・・」
「いい天気だね」
長い髪を解いた神楽のとなりに花のような姿のデジモンが座っていた。
空には雲ひとつ無い。ふいに神楽が口を開いた。
「ねぇフローラモン」
「わかってるって」
次の瞬間神楽は後ろに飛びのき、フローラモンはファスコモンの体当たりを軽くよけ宙返りをして神楽のとなりに着地する。
「はっ、やるねぇ」
ファスコモンが口元を笑わせてフローラモンを見た。
「いきなりなんて非道くない?」
フローラモンはズタズタに引き裂かれた1枚の花飾りを投げ捨てた。
「悪かったよ」
神楽が初めから睨んでいたところから積山が現れた。
「だれ・・?」
「積山雄介。君と同じ立場の者だよ」
フローラモンが神楽と積山、ファスコモンの間に入り込む。
「同じ立場?」
「そう。仲間になる気はあるか?」
神楽はまったく動かない。張り詰めた空気が覆いつくす。
「同じ立場ってどういうことです?」
「守る事が出来る立場なんだ。君たちの力を貸して欲しい」
強い風が吹き神楽の髪が踊る。
「詳しい話を聞かせてください」
 
 
積山・ファスコモンに続いて神楽・フローラモンが歩いていく。
これこそが神楽の人生が永遠に変わってしまった瞬間だった。
              
 

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