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しょうせつ
ばんがいへんおきば

小説番外編置き場
いろいろな所で書いてきたエターナル・ログ・ストーリーなどの番外編を公開するページです。
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8      No-2「Hard,Feeling」
 
 
次の日から2日間。わたしはなにをしていたのかよく覚えていない・・・。
目を閉じるとさびしげな表情でうつむくレキスモンの姿が浮かぶ。
 
いま、今日もわたしは放課後部活をサボってルナモンとぶつかった場所にいる。
「なんであんなこと言っちゃったんだろう・・・」
そうつぶやいていた自分に気がついた。ため息をついてみた。
「取り返しのつかないこと、かなぁ」
わたしは頭を2,3度振って立ち上がった。スカートに砂埃がついていないか確かめる。
もう一度振り向いて、そしてもう帰ろうとしたときだった。
 
アスファルトを揺るがし空気を振るわせる重低音が響いた。
 
わたしはハッとして周囲を見回した。そして見つけた。いつの間にか夕暮れ。いつもならあきらめて帰る頃だ。
でも今日のわたしは期待を胸に細い黒煙の上がる方向に走り出した。
 
 
「ルナモン!?ルナモン!ルナモン!!どこ!?」
真っ暗な空の下をわたしは狂ったようにルナモンの名前を呼び続けていた。崩れた塀、割れた道路、ヒビの入った電柱。変わり果てた路地を走り回り、探し回った。
さすがに息が切れた。膝に手を置いて息を整えていたわたしの耳に足音が聞こえた。
「!、ルナモン!?」
急いで角を曲がった瞬間わたしは動けなくなった。
呼吸機械の立てる独特の呼吸音。体から無数に突き出した刃物の当たる金属音が鳴り響く。
そのあまりにもおぞましい姿にわたしは逃げるどころか悲鳴をあげることも出来なくなっていた。手を伸ばせば触れることが出来る距離までそれが近づいたときだった。
 
突如耳が裂けるようななき声が背後から聞こえ、わたしの体は呪縛から解かれたようになった。無我夢中で立ち上がり電柱の影に逃げ込んだ。
わたしの目と鼻の先を金の閃光が通り抜けた。焼けるにおいが鼻を刺激し、髪の毛が数本宙を舞った。
甲高い鳴き声を響かせ蒼い鋼鉄の巨鳥が襲い掛かってきた。
一見熊のヌイグルミのようにも見える怪物に襲い掛かる。
「やめろと言っているんです!!分からないんですかピーコックモン!!やめてください!!」
電柱の影で様子を見ていたわたしを気にも留めず少し背の低い、でもわたしと同じくらいの背丈の男が叫びながら走ってきた。
蒼い鋼鉄の鳥が振り向いた。あれがピーコックモン・・・?
その隙を突いてヌイグルミのような敵が右腕を横に振った。その先からのびた鋭利なナイフがピーコックモンの背を切断し、悲鳴が上がる。光に包まれ蒼い鳥になった。
「ペンモン!」
なりふりかまわず駆け寄り抱き上げた少年に何本ものナイフが向けられるのが見える。街灯の明かりが反射して輝いて見える。感情の無い呼吸音だけが響ている。
「ポキュパモン。ちょっとまて。おい!そこの!いい加減にしろ!そいつ放して失せろ!」
名前を呼ばれナイフを引いた。わたしは声の方を向いた。次に現れたのはわたしより背の高い男だった。
ペンモンを奪おうとしている。背の低いほうが必死に抵抗している。
「ちょっと!やめて!やめなさいよ!」
・・・この発言は・・・、どうなんだろう。まずかったんだろうか。でも・・・よかった気がする。
後のことだが。
「なに?」
背の高い方がこっちを向いた。いまさらだけどどうしよう・・。
「なんだお前は。なんでここにいる?」
後ろから声が上がった。
「それはこっちの質問です」
すこし背の低い方が言った。
「なに?」
「なんで僕たちを襲ったんですか?」
すると背の高い方が至極当然そうに言った。
「倒す必要があるからに決まってるだろう!」
倒す必要がある・・・?最後に見たルナモンの顔が脳裏をかすめた。
「それ・・・どういうこと・・・!?」
思っていたことが口をついて出てきた。わたしを見下ろす視線が答えた。
「こいつらは危険だ。・・・それは、ポキュパモンも・・・」
背の低いほうが声を荒らげた。
「どういうことですか・・・!?自分の仲間じゃないのかポキュパモンは!!それに危険だと何故言い切れるんだ!!」
「お前たちに何が分かる!?こいつらが、デジモンが人を襲ったんだ!!」
あたりが静まり返った。
「え・・・?」
凄まじい音を立てて破壊された塀が崩れ落ちた。
再び静まり返った。
「どういう・・・・ことですか・・?」
「聞いたとおりだ」
わたしはポキュパモン、ペンモンの順に見比べた。
「そんな・・・」
靴跡をさすって立ち上がる姿、名前を訊ね、ほめてくれた顔、心の底からきれいだな、そう思えた進化。目を伏せて機械をはずした姿。
いくつものルナモンの姿が浮かんできた。
「・・・違う・・・。ルナモンはそんなことしない」
2人が・・・、いや、4人がわたしを見ている。
「ルナモン?」
わたしは頷いた。とたんに目頭が熱くなり、蛍光灯がぼやけてまるで水の中にいるみたいだった。
「どこか行っちゃって・・・。わたしが余計なこと言ったせいで・・・」
背の高いほうは黙ったまま背を向けて立ち去るのが分かった。
「ポキュパモン、帰ろう」
「イイノカ・・・ユウスケ・・・コロサナクテモ・・・」
ポキュパモンが答えたんだと思う。でも、もうなにも見えない。後悔がわたしにのしかかってきた。
              
 

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