デジタルモンスター
エターナル・ログ・ストーリー

第一章




 12    第12話 「試練」
For:
2007.12.30 Sun.
積山は何度かうなずくと言った。
「まさかここまで本当になるなんてね」
その頭のすぐ脇を白い矢が通り過ぎ、髪の毛が数本宙に舞った。
「今のは近かったぞ・・・!」
ギルが積山を倉庫の屋根の下に押し込みながら言った。
「どうやら目はあまりよくないらしいが・・・」
嶋川は顔だけ出して空を見やった。
さっきまで雨を降らせていた厚く黒い雲が空を覆っていた。
平たく言えばネオデビモンの姿は見えない、ということだ。
「うっ・・・・・・・」
谷川が座り込んでいた。
ホークモンが背中を支えていた。
「うっ・・・ぁ・・」
両手で耳を押さえている谷川は何かぼそぼそつぶやいていた。
「そろそろ何か考えないと・・・・」
と積山が再び腕組みをして辺りを思案顔で見回した。
しかしここは開けた場所の中心だった。
「お前の考えてること当ててやろうか・・・。いい的、だろ」
ギルの言葉に積山は苦笑し、
「一字一句」
そう答えた。
そのとき、ずっと耳をふさいでいた谷川が倒れた。
眼を見た積山が驚いてそばに座り、もう1度覗き込んだ。
瞳孔が透き通ったエメラルドグリーンに染まっていることに気づいた。
同時に谷川がうるさい、とつぶやいていたことにも。
 
 
「どうした!?なにが聞こえる?」 
ホークモンが谷川を上から覗き込んで言った。
谷川はしばらく耳をふさいで横になっていたがハッと眼を開けるとよろめきながら立ち上がった。
 
 
彼女の耳はさまざまな音の中にかすかに羽音を捉えていた。
全てをその音に傾ける。
羽音は少しずつはっきりしてきた。
谷川は他の者が止めるのを無視し、屋根の外に出ながら盾内蔵のボウガンのロッドを引いた。
空気が圧縮され、装てんされた。
「!」
猛烈な勢いで空気を裂く音が聞こえた。
「ホークモン!!真上!」
「![フェザースラッシュ]!!!」
ホークモンが頭の羽を投げ、真上から谷川に降り注ぐ白い矢をはじき返した。
谷川は金属質の音を響かせ矢が落ちると同時に回すようにして真上に盾を上げた。前部分が開き銃口が姿を現す。
羽音以外の音が消える。
音の聞こえた正確な方角が分かった。
盾の内部の引き金を引く。
同時に彼女の手からロッドが離された。
重い音が3つ続き、
 
 
上空のネオデビモンは凄まじいスピードで自分に飛んできた攻撃を見た。
初弾、次弾が唸りをあげてはるか遠くを通り過ぎていった。
視線を前に戻したネオデビモンの顔面に次弾に続いて打ち込まれた3発目の空気の銃弾が命中した。
「ガッ・・・!」
 
 
「・・・!落とした!・・・」
ギルの視線の先には谷川に向かって落ちていくネオデビモンがいた。
嶋川が走り出て崩れるように倒れた小柄な身体を受け止める。
ホークモンが谷川の上に飛んで見上げた。
ネオデビモンは右手を突き出して落ちてくる。
「計を道連れにするつもりなのか・・」
つぶやきながらホークモンは頭の羽飾りを取り外し、構えた。
 
「そうはさせない。計は私のテイマー。私が守る」
 
ネオデビモンは縦に裂かれ消滅した。
 
 
「はぁ・・・疲れた・・・。いやー、下手な鉄砲数撃ちゃ当たるってやつだよねっ」
谷川は腰を上げて盾を拾い上げた。
嶋川とアグモンが同時に言った。
「いや、マジで助かった」
 
 
 
嶋川が谷川を看ている間、和西たちを探しに来たギルが雨で流れかかった血痕を見つけた。
積山は上を見上げ管理塔の屋上を見つめた。。
「なるほど、あそこですね」
足の先がはみ出してぶら下がっていた。
 
 
今まで空を覆っていた雲が途切れ、差し込んできた光が和西とゴマモンに降り注いだ。
降ったりやんだりを繰り返していた雨も、もうやむことに決めたらしい。
ゴマモンは目を覚ました。
ギルに摘み上げられていた。
爪につままれ続けた続けた背中が猛烈に痛い。
次に見えたのはひざを突いた積山と彼に支えられた和西だった。
「やぁゴマモン」
和西が言った。
ゴマモンもニヤッと笑って、
「勝ったね」
と言った。
2人は喉の奥で笑うと抱き合って叫んだ。
「やったー!!!勝った・・・って落ちる!落ちるっての!!」
積山とギルがそれぞれの体をつかんで真ん中まで引きずった。
 
「危なかった」
「・・・・・・・」
その場にいた全員の緊張がとけ、体の力が抜けた。
 


Back Index Next

ホームへ

| ホーム | エターナル・ログ・ストーリー | エターナル・ログ・ストーリー  第二章 | エターナルログストーリー  第三章 | 掲示板 | 登場人物・登場デジモン | 二章 キャラ紹介 | 3章 キャラ紹介 |
| 関連資料室 |