積山は新手のネオデビモンの連続攻撃を回避しつつジリジリと交代していった。
4体ものネオデビモンが上空から襲い掛かってきて以来、彼と和西達の分が悪くなっていた。
「まずい・・・・っ」
心臓を狙った右腕を断罪の槍で切り落とした瞬間積山の背中にどう考えても生き物な感触の物体が当たった。
「っ!!!」
積山は剣をひるがえして背後の敵に切りかかろうとし、やめた。
「ひっ・・・・お・・・お・・・おゆ・・・・ごめめめめめごなさひぃいいいい」
「・・・谷川さんでしたか・・・」
「よそ見するな!!!」
ネオデビモンの左腕が積山に襲い掛かる瞬間嶋川とアグモン、ホークモンが同時に両脇から攻撃を仕掛ける。
「!!」
積山も断罪の槍を胴体に横切らせ、ネオデビモンは消滅した。
「まずい!新手だ!」
ゴマモンが叫び、追加のネオデビモンが空から降り立った。
「ホントまずい・・・・」
彼らは次第に追い詰められていった。
ネオデビモンは軟着陸をしてそのままの状態で立っていただけだ。
が、さすがにそのまま立っている訳には行かなかった。
少しずつテイマーたちは追い詰められていった。
「うかつでしたね・・・」
積山が断罪の槍を構えなおす。
その時、どこか遠くのほうで甲高い発砲音が響き、凄まじい音が和西の耳を劈いた。
目の前でネオデビモンが氷の槍に撃ち抜かれ、砕ける。
「!!」
文字通り凍りついた1体をのぞき全員が驚いた。
「さすが!」
和西を皮切りに全員がネオデビモンを避けるように四散した。
対するネオデビモンの数は8体。
全員が起死回生を思い描いた。
アグモンといつの間にか離れた嶋川はネオデビモンの攻撃から逃げるのが精一杯だった。
背後に気配を感じ、振り向いた嶋川はもう1体のネオデビモンが長い腕を振りかざすのを目に捉えた。
そしてその瞬間何かにつまずいてそのまま後ろ向きに倒れた。
「おわっ!?」
取り落とした炎撃刃を握りなおすと嶋川はつまずいたものを見下ろした。
そして驚いた。
「ど、!?どうした!?」
泥だらけになってぐったりとした谷川を見つけた。
「くそっ・・やられたのか・・・!」
ネオデビモンの存在を思い出した嶋川はハッとして顔を上げた。
2体のネオデビモンが2人を見下ろしていた。
そして同時に言った。
「・・・・シネ・・・・・」
最初のネオデビモンの攻撃はわずかにそれ、2撃目はかわした。
3回目の攻撃を剣ではじいたがはじききれず、爪が彼の背をえぐる。
「ガッ・・・!!」
かすっただけですんだのは奇跡に近かった。
致命傷とまではいかなかったが、傷の痛みが彼の動きを束縛していく。
本当の奇跡でも起こらない限り・・・、死ぬ。
「・・・シ・・・ナセハ・・・・・・・シ・・・・・・・ナイ・・・・・」
嶋川と谷川に新たに影がかぶさった。
全身が黒い水に様なものに覆われ、細長い腕のようなものがところどころ生えていた。
その触手がすべて鎌になり、ネオデビモンを刺し貫いた。
ネオデビモンは全身を切り刻まれ消滅した。
「シヌナ」
それだけを言い残し黒い影は立ち去った。
朦朧とした意識の中で嶋川はその影を目で追った。
背中の傷が疼き、なにも考えられなくなった。
嶋川は谷川を抱きかかえるようにして気を失った。
「・・・・これは・・・・・?」
身体のあちこちから血を流し、積山が林を不安定な足取りで歩いていた。
額から流れた血が右目を中心に顔を割る。
右手の紋様が黒い水で覆われている。
積山は力尽き、倒れた。
疼く右手を目線まで持ち上げる。
D−ギャザーは黒く光るヒビに覆われていた。
やがて積山の右手は地面に投げ出された。
残った和西は林の中を駆け抜ける。
何度も辺りを警戒し、木々の切れ目を探した。
「和西!まずい・・・不利だ。辻鷹に見つけてもらおう」
ゴマモンが和西の背にしがみつきながら言った。
「分かってる!」
その頭上を飛んでいった影があった。
最初に気づいたのはガブモンだった。
スコープを覗き、仲間を探していた辻鷹の肩をつつく。
「あれは・・・?」
辻鷹はライフルをすばやく分解しながら眼を発動した。
「まずい・・・!ネオデビモンだ!」
辻鷹はオートタイプの銃を右手に構え撃った。
命中した弾丸はネオデビモンの羽を凍らせ、推進力を失ったネオデビモンは橋にしがみついた。
衝撃であまり大きくない橋が少し壊れ、傾いた。
「仁!下がれ!」
ガブモンが口から炎を吐いた。
ネオデビモンが脚力だけでよけ、辻鷹に飛び掛った。
辻鷹は道路を転がり、膝立ちで体勢を整え右手の銃を1発撃った。
辻鷹得意の氷の壁が出現した。
辻鷹はそれを見届けるとガブモンに駆け寄ろうとして嫌な感覚に振り向いた。
ネオデビモンが立っていた。
「シネ」
ネオデビモンが腕を繰り出す。
「死なせるか!!」
ガブモンが割って入り2人は欄干にたたきつけられた。
欄干が曲がる。
林を駆け抜けていた和西とゴマモンは血まみれで倒れた積山と覆いかぶさるようになったギルを見つけた。
「エサ」
ネオデビモンが2体現れた。
「エサ?」
和西とゴマモンは身構えながら同時に聞いた。
ネオデビモンは積山を指し、
「エサ」
と感情のまったくない声で言い、和西を指して
「オビキヨセル」
和西はそれ以上聞かなかった。
「っ殺ッ・・・・!!!」
和西とゴマモンはネオデビモンに襲い掛かった。
同時に脇の茂みから1体ずつ、2体のネオデビモンが飛び出した。
「シネ」
和西とゴマモンは集中攻撃を受けた。
横たわる和西たちを見下ろすネオデビモンは上を見上げた。
ウィルドエンジェモンが降りてきた。
「林の中のテイマーとパートナーをここに集めなさい」
ネオデビモンは平伏すと行ってしまった。
しばらくしてネオデビモンが嶋川たちを抱えて帰ってきた。
ウィルドエンジェモンは積山を抱きかかえると額を当てた。
「では・・・、・・・・・・・・コロセ」
ウィルドエンジェモンは途中で何か言いかけ、1言命令すると羽を広げ飛び去った。
ネオデビモンは命令を実行しようとにじり寄った。
「悪いけど殺されるわけにはいかないよ」
辻鷹は左手でもう1丁抜くと至近距離でネオデビモンの顔面を打ち抜いた。
同時に、
「[リトルホーン]!!」
ガブモンが頭部のツノをネオデビモンの胸につきたてた。
ネオデビモンは後ろに吹き飛び、消滅した。
「いてててて・・・・そうだ、みんなは大丈夫かな・・・」
辻鷹は眼で林のほうを見た。
「どうだ?」
「木が邪魔でよく見えない・・・。」
和西は太陽を背にして飛び上がった。
次の瞬間和西を見失った1体は両腕を切り離される。
攻撃を飛んでさけ、和西は積山の隣に立った。
「やるもんですね。?・・・傷の治りが早い・・・」
積山は額をさすりながら立ち上がった。
「さて・・・どうする?」
立ち上がった全員が言った。
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