デジタルモンスター
エターナル・ログ・ストーリー

第一章




 18    第18話 「友人」
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2007.12.30 Sun.
月曜日。
積山慎は聖賢中学校の校門の柱に腕組みをして寄りかかっていた。
しばらくして門が開かれる。
「おはようございます」
積山は門を開けた先生に挨拶すると校舎に入った。
積山はいつもどおりの速さで校内を進み、教室の一番端に置かれた自分の机に座った。
机が1つ多い。
「転校生ってやつだな」
ベランダにギルが降りてきた。
「みたいだね」
積山は中をのぞいた。
ペンが1本だけ入っていた。
積山のとなりに誰か立っていた。
ギルはとっさに隠れた。
積山はそっと見上げる。
積山よりすこし背の低い少女だった。
「・・・おはよう、ございます」
とりあえず挨拶。
最近の戦いでギルはもちろん積山も気配に敏感になっていたが気づけなかった。
積山はまずいなと心の中でつぶやいた。
「見ましたか?」
相手は首をかしげる。
そして、無邪気な笑顔を浮かべてうなずいた。
積山は手で顔を覆うとため息をついた。
「ギル」
ベランダに戻るとギルは積山に謝った。
「えっと・・・天羽さん?」
名札を確認して積山はどう話そうか必死に考えた。
「ないしょ?」
ギルの顔を覗き込んでいた天羽は積山に聞いた。
積山はただうなずくしかなかった。
「誰にも言わないでくださいよ」
天羽は今度は積山の顔を覗き込み始めた。
 
 
 
 
「と、言うわけ、です・・・」
和西の部屋で正座した積山・ギル・天羽を囲むようにして現時点での十闘神全員が座っていた。
天羽に見られるのを煙たがるように後ずさると、アグモンは、
「お前ともあろうものが一番にバレるとはな」
と言った。
積山はギルに、
「耐えるんだ」
とささやいた。
ファンビーモンは
「おまえどういう状況かわかっているのか?私たちの存在が世の中に知れるのがどういうことか分かるか?」
二ノ宮はファンビーモンを押しのけた。
「わかったから・・・。まぁ、ばれちゃったのはしょうがないわ、ね?」
 
 
 
 
結局、そのあと積山は天羽にこのことは絶対に秘密だ。と何度も釘をさした。
日がくれはじめ、1人歩いていく天羽を見送りながらガブモンは、
「だいじょうぶかなぁ」
積山は
「自信ない」
と即答した。
「だから彼女には悪いけど・・・」
二ノ宮は手で合図をした。
二ノ宮の軍用車からコマンドドラモンをつれた隊員が降りてきた。
「彼女を追跡・監視してください」
「は!了解しました」
隊員は敬礼をし、さっそく追跡を始めた。
「さすがに野放し、というわけには行かないわね」
そう言うと二ノ宮は車に乗り帰っていった。
 
 
 
 
その夜。
携帯電話が刺し貫かれる。
ネオデビモンは機械の電子音のような音を出した。
同じような音が会話をするように続き、ネオデビモンは飛び去った。
 
 
「はやく!お願い。急いでください!」
二ノ宮はハンドルを握る壮年の隊員をせかす。
はるか上空をファンビーモンが飛んでいく。
追跡をしていた隊員が消息を絶った。
消息が途絶えたときの隊員の位置はビル街の裏側だった。
あたりを捜査員が調べる。
声が上がり、砕けた発信機付き携帯電話が転がっていた。
あたりには暴れた後がある。
「血がない・・・」
二ノ宮は辺りを見回した。
血の跡はどこにもなかった。
「!・・まだ生きてるかもしれない。ファンビーモン部隊は上空から探して!」
二ノ宮は携帯電話でさらに援軍を要請した。
 
 
 
 
数時間後。
「で、あの人どうなったんですか?」
和西は自宅で二ノ宮の電話を聞いていた。
「・・・・・・・・結局総動員したけど見つからなくて・・・」
二ノ宮は少し間隔を置いて続けた。
サイレンのおかげで和西の部屋と対照的にうるさい。
二ノ宮は助手席のシートに座って消え入りそうな声でしゃべっていた。
表情は髪で見えない。
「みんなに知らせるかどうかはあなたの判断でお願いね・・・。積山くんと谷川さんはとくに・・・」
「分かってますよ。たしかにこの話をあの二人にするわけにはいかないですね」
和西はすぐに応えてくれた。
二ノ宮はため息をつくと、
「こんなこと初めてだったから・・・。携帯電話の破損状況やその場に落ちていた薬莢、向かいの壁に銃痕がないのも考えて・・・ネオデビモンに襲われたと見ていいと思うの。とりあえず積山くん天羽さんと仲がよさそうだったし上も彼に任せるようにって言ってきたから・・・」
和西はどう言って元気づければいいのか脳をフル回転させた。が、これといって確実な方法や文句は浮かんでこなかった。
しかたなく、
「そこだけうまく積山くんに伝えときますよ」
それだけ言った。
「・・・私・・・。こんなこと初めてで・・・、私が自分で追跡してたら・・・。天羽さんを信用していたら・・・、こんなことには・・・・・・」
最後のほうは言葉になっていなかった。
なんどか礼を言われ、和西は電話を切る。
二ノ宮は携帯電話をしまうと両腕に顔をうずめた。
 
 
 
 
 
二ノ宮の部下が消息を絶った次の日。つまりは火曜日。
積山は4時に起きた。
「・・・・・・・あれ?」
あまりに早い朝食をとり、30分ほどぼんやりとしていた。
まさかあんなに簡単にばれるとは思わなかった。
天羽裁、恐るべし。
積山は家を出ると学校に向かった。
近づくにつれ心臓が高鳴り、吐き気が襲った。が、無視した。
校門の前に誰か立っていた。
天羽だった。
積山は辺りを目で見回す。
昨日の組織の隊員がその辺にいるはずだった。
 
 
 
和西はベットのなかで目をあけ、考えるでもなく見るでもなく上を向いていた。
結局一睡もできなかった。
ゴマモンに布団をかけ、和西はやっと認めた。
「自分の知っている人が・・・ね」
考えようとしてはやめ、を繰り返し続けていたが、あの隊員は今どうなっているんだろう。
もしかしたら生き延びたかもしれない。
二ノ宮さんが必死で探してるから見つかったかもしれない。
しかし楽観できる状況でないのは分かっていた。
連れ去られたか、・・・・殺されたか。
一晩中認めるのをためらい、考え続けた何度目かの答えだった。
和西はベットに倒れこんだ。頭痛がし、そのまま眠った。
 
 
 
その同じ時。
工場の一角に数台の軍用車が無造作に止められていた。
その脇に二ノ宮が力なく座っていた。
手を伸ばし、壊れたヘルメットからはがれた名札を拾い上げた。
「隊長」
部下数人が直立不動で二ノ宮を囲んだ。
二ノ宮は震える手で名札を渡し、
「照合を・・・」
とか細い声でつぶやいた。
部下は受け取り、ため息をついた。
「672−2990XCGT。間違いなく時隊員のものです」
しかし二ノ宮は何も言わなかった。
すすり泣く声だけしか聞こえない。
 
 
 
 
「そういうわけでボクはギルと離れ離れになりたくない。見かけはあれだけど大切な友達だから。だから誰にも言わないでほしい。・・・お願いします」
積山ははっきりと言った。
天羽にギルとあったときのことを話していたのだった。
天羽は微笑むと、
「トモダチ思いだね。私もトモダチになりたい。それに誰にも言わないよ」
そう言って笑った。
「慎はいい人」
 
その様子をギルは近くの家の屋根から見ていた。
積山が自分のことをああ言ってくれたことは照れくさかった。
内心とてもうれしかった。
 
 
 
二ノ宮は何故か暗い会議室の真ん中で状況を正面に座る上官の男に説明していた。
「・・・以上が・・現在の状況です」
会議に召集された上層部の人間からざわめきが生まれた。
ついに自分達の中から犠牲者が出たのだ。
「今回のデジタル生命体による殺人は・・・私の責任です」
「二ノ宮第2隊長。貴女は報告書を提出すればそれでいい」
「・・・・・」
「報告書を出せば責任は我々に移る」
「・・・・。では提出しません」
「なに・・?そうか・・・。除隊経由で葬ることになるが?」
「私が指名しなければ私の部下が消息を絶つことはありませんでした。私の責任です。それに・・・・」
「それに・・・なんだね?」
「除隊なら望む所です。・・・・と、言いたいところですが・・。今消されるわけには行きません。報告書は・・・明日までに提出します」
涙目で上官を睨みつけた。
数人の高官がたじろぐ。
二ノ宮が敬礼をして部屋を出て行った直後、高官たちが雑談を始めた。
「やれやれ。これだから彼女の相手は疲れますね」
「まったくだ。若すぎだよあの小娘は」
一番奥に無言で座る4人はそれぞれ口を開いた。
「彼女には無理強いをしてきたのだ。これくらいはいいじゃないか?」
胸に雷のマークのある口ひげを生やした男が静かに言った。
「そ−そー。それにめったなこと言って総司令官の耳にでも入ったらどうするんですかねぇ〜?」
炎マークの若い男がペンを回して遊びながら言った。
「それにこれから二ノ宮さんにはがんばっていただかないと。もう6人目なのですから」
眼鏡をかけた30代後半ほどの男が書類の束をめくりながら言った。水滴のマークがある。
最後に所長が口を開いた。
「あれでも私の娘なのだから、妙なことは言わないでいただきたい」
 


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