そして月曜日。
6時丁度に積山の家の電話が鳴った。
完璧な敬語を操る男性が、
「二ノ宮所長氏から緊急招集です。大切な用事などがなければ9時ごろにお迎えに行きます。できるだけ参加するように、とのことですがいかがいたしますか?」
積山は少し考えて
「学校はどうしますか?それと他のみんなは?」
と聞いてみた。
「学校には連絡を入れていただきます。すでに嶋川さんと辻鷹さん、和西さんと連絡が取れ、全員参加する、という返事でした。谷川さんは今連絡を取っています」
と一度も噛むことなく回答が帰ってきた。
積山は早朝の電話に激怒する嶋川と半分寝た状態で来ることになり、携帯片手に立ち尽くす辻鷹を想像し、声を立てずに笑った。
そして、
「わかりました。参加します」
と答えた。
それから5時間後・・・・。
研究所のミーティングルームでこれまでのデビモンに関する情報をながながと説明しているだけだった。
谷川は人目を気にせず小さいながらも寝息をたて、辻鷹は直立不動で焦点の合ってない目を司会者に向けていた。
「・・・・・・しかし収穫もありました。デビモンの残した砂とネオデビモンの残した砂を回収し、研究所で分析した結果が二ノ宮所長からに報告してもらいます」
所長は咳払いを1つすると、
「え〜、内容は、基本的成分はほぼ同じものでした。しかし質量や密度は2倍以上になっていて、え〜、和西くんや積山くんの証言にもあるようにネオデビモンはデビモン2体の融合体、ということになります。以上です」
食堂で昼食をとりながら和西たちは話し合ってみた。
「なぁ、なんならギルにアグモンでも食わしてみるか?」
「んな殺生な」
「そうだ。だれがおまえなんかくうか」
「なんか?」
アグモンとギルのやりとりを聞いていた谷川はすっかり目を覚ました顔で、
「ねぇ!仁君もなんかいい案ない!?」
と辻鷹に振った。
「えぇ?毎日牛乳飲むとか・・・・?」
「普通はそれで十分なんですけどね」
「・・・仁 、おれに毎日牛乳のめ、と?」
「・・・・」
「・・・・」
進展するわけもなく、また進展した所でなんの意味もない会話は終わり、しばらく無言で定食を食べる。
所長はファンビーモンをはさんで隣に座った二ノ宮に、
「ひさしぶりだな、一緒に飯食べるのは」
といいにくそうに言った。
二ノ宮は目をそらすと少し頷いた。
数人の研究者と数台の機械、組織隊員がコマンドドラモンをつれてきた。
研究員がアタッシュケースから 何か取り出し隊員に渡す。
和西たちの反応は、それぞれだ。
所長はコマンドドラモンと機械を接続すると離れるように促した。
隊員はベルトにつけられたケースからカード状のものを取り出すと研究員に手渡された機械に読み込ませた。
コマンドドラモンはデビモンからネオデビモンへ進化する時のような変化を起こした。
少しずつそれは大きくなっていく。
やがて2メートルほど体をもつデジモン、シールズドラモンに進化した。
驚いた様子の積山たちを振り返ると所長は言った。
「どうだい?君たちの協力もあって進化する方法を見つけてね。デジモンがこちらの世界にやってくる方法も使ったんだが・・。要するに ある程度のデータを手に入れるとレベルアップ、要するに進化するんだよ。ネオデビモンは共食いという方法でデータを獲得したらしいがね。 デジヴァイスに読み込ませたのはさっき言った進化するために獲得 する必要のあるデータ量を凝縮したものだ」
和西は思った。
人は見かけによらない。
「しかしねぇ、問題点もあってね。元に戻れない」
いや、どうやら思い違いのようだ。
「・・・・・・・・・・・・・」
ダメじゃないか、とみな思った。
積山は実験に参加した隊員とシールズドラモンの顔が引きつるのを見逃さなかった。
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