デジタルモンスター
エターナル・ログ・ストーリー

第一章




 25    第25話 「戦慄」
For:
2007.12.31 Mon.
あの怒涛のような月曜日から1週間後の日曜日。
 
和西はこの一週間パソコンやテレビの画面と向き合った記憶がまったくなかった。
新聞を見ると第1面に大きく、
『また変死体・怪物証言は事実か』
と見出しが出ていた。
ここの所デビモンやネオデビモンが目立つ行動を取りはじめていた。ちなみに昨日の新聞の見出しは、
『ついに6人目の被害者・警察に本部設置』
だった。
和西はこの一週間でゴマモンとともに16体ものデビモンを仕留めていた。しかし辻鷹、積山、嶋川の数には及ばない。
和西は12時を告げる時計の針を一度も
見ることなく布団の中だった。
 
 
 
嶋川はぼんやりとイスに座っていた。
アグモンは柄にも無い自分の状態を避けるようにして屋根のうえの日陰に行ってしまった。
谷川から電話が来て、いきなり誘われた。
いろいろなことを考えているうちに日は暮れる。
「確かに好みなんだけどな」
その視線は窓の外を泳いでいた。いつの間にか月が出ている。そのなかを何か飛んでいる。
景色的にいい眺めだな、と思っていた彼は一気に覚醒した。
月の中を飛ぶ数体の人のような影を見ながら叫んだ。
「アグモン!いくぞ!」
 
あの怒涛のような月曜日から1週間後の日曜日。
 
辻鷹は布に包まれたライフルに組みなおした銃を持ってガブモンとビルの屋上に上がった。
屋上に出た瞬間頭の上をデビモンが飛び過ぎる。辻鷹は銃を向け、3発撃った。
2本の氷の槍が刺さり、デビモンもろとも消滅する。残された砂は数十メートル下に落ちていった。
するどいブレーキ音が響き、
「こらぁ!!!だれだ砂なんか落としたのは!!!!」
怒声が響く。辻鷹とガブモンはそれをフェンスから顔だけ出して見下ろし、顔を見合わせた。
「考えて倒さなきゃ」
もう一体に狙いを定めて引き金を引くタイミングを見計らっていた辻鷹に組織の隊員が追いついてきて話しかけた。
「下で変な男性がいてなかなか来れなかったんですよ」
それを聞いた辻鷹は苦笑いをして、
「ごめんなさい。たぶんその人が下にいたのはぼくのせいだとおもう」
青い眼をデビモンに向け続けたまま謝った。かすかに罵声が聞こえ、エンジンの音が響き、しだいに遠ざかっていく。
隊員は黒塗りのプラスチックライフルを組み立てて構えた。その脇でコマンドドラモンも同じく構える。
「しかし知らない人間はのんきに見えるなぁ」
辻鷹の視界にもカラフルな明かりで彩られた街が見えていた。すぐ真上のデビモンにまったく気づいた様子が無い。
「いえてる」
そう呟くと辻鷹は引き金を引いた。
ビルの屋上を飛んでいたデビモンは一瞬で消滅した。サイレンサーが発砲音を抑える。
 
 
 
少し前、デビモンを追っていた6人とパートナーは自然に集まっていた。二ノ宮が組織の急ピッチで立てた作戦を説明する。
「・・・まず第1部隊が陸から、第2部隊が空からデビモンを追い込む。第3、第4部隊はそれを援護して第5、第6部隊が待機している郊外の非使用所有地に追い込む。第1部隊に和西くん、第3部隊に辻鷹くん、第4部隊に積山くん、第5、第6部隊に谷川ちゃんと嶋川くんにそれぞれ分かれて。
私は第2部隊の責任者だから。以上でお願いね!」
 
 
「・・・というわけです」
積山は目の前に立った嫌な目つきをした中年の男=第4部隊隊長に経緯を説明した。
「なるほど。小娘の仲間か。じゃ、君には待機していてもらおう」
「あ?」
男の口調にギルが逆撫でされたようだ。
「ギル、すこし黙ってて。 ところで待機、とは?」
「平たく言えば帰れ、ということだ。ここは君のような子供が来る所じゃないからな」
「・・・・・・・・・・なるほど、そうしましょうか」
 
手短に話を切り上げトラックを降りた積山にギルがあわてて言った。
「おい、ほんとに帰るつもりか?」
「帰らないよ。これから個人的に『買い物』に行く」
そう言って積山は断罪の槍を出しデビモンを見上げた。
「その途中にデビモンを見つけたな」
ギルはそう言うと後を追って走り出した。積山もそれを追う。
 
 
 
心強い援軍と聞いていた第5隊長と第6隊長は嶋川と、とくに谷川を見てかなり落胆したようだった。しかしすぐに戦術の説明を始める。
「えっと・・・。今回の作戦の大まかな内容は二ノ宮第2隊長から聞いていると思います。我々はここで追い詰められたデビモンを挟み撃ちにします。ネオデビモンの戦闘能力の高さは無視できないので研究所のほうで開発されたこれを使います」
そう言ってジャケットのポケットから握りこぶし大の手榴弾を取り出した。
「この中には特殊ガスが圧入されています。このガスはネオデビモンの体内で細胞を破壊します。結果、うまくいけばネオデビモンはデビモンの状態に分解します」
第5隊長の説明を聞いていた第6隊長は、
「・・・もう少し時間があればガスの密度や成分を変更して細胞を完全に破壊するものができたはずなんですが・・・」
第5隊長は頷くと足元から銀色のトランクを2つ取り出し、
「人員不足なのでお二人にはこの手榴弾の入ったトランクを第1、第2部隊に届けてください。ついさっき完成したばかりで先に出撃した第1、第2部隊には渡せませんでしたから」
 
トラックを降りた谷川・ホークモン、嶋川・アグモンに2人の隊長はそれぞれトランシーバを手渡す。
「番号を押せばそのままその数字の部隊に連絡できます」
「はい。じゃ、行ってきます!」
そう言って走り出した嶋川たちを第5隊長が呼び止めた。
「あの!さっきは大変失礼しました。正直腕の立つかただと聞いていたのに子供じゃないかと思いました」
「それで普通ですよっ!」
「いや・・・。でもそのトランク、よろしくお願いします!」
そう言って二人の男は敬礼をした。嶋川たちが見えなくなるまで敬礼をしていた。
 


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