デジタルモンスター
エターナル・ログ・ストーリー

第一章




 3    第3話  「苦楽」
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2007.12.25 Tue.
暗い世界に和西はいた。
水平線が白銀に輝き、とても広い場所にいるような感覚をもたらす。
 
彼の右手には昨日ゴマモンと戦うときに使った武器、降流杖、手の甲には紋様と呼ばれる刺青のようなものとD-ギャザー。
 
和西の体はなぜかまったく動かなかった。
 
しばらくそのまま硬直した状態で数分が過ぎたかに思えたとき、地面が青白く光り和西の向かいに蒼い人影が10体現れた。
 
和西のとなりに黒い人影が新しく現れ、床から蒼い人影の1体に向かっていった。
黒い人影の背中から頭上にかけて白く輝く人影が抱きついている。
黒い竜のような影が一緒に戦っていた。
黒い影は手に持った槍のようなもので影を貫く。
槍を抜いた瞬間、何かが吹き出たが影は機敏な動きでそれをよけた。
その瞬間、恐竜が爪で引き裂き、それら全ては溶けるように消えた。
 
それからしばらくしてやっと驚きの引き始めた和西にもう1体の影がすべるようににじり寄った。
すぐに和西のすぐ目の前に角のようなものの生えた影が現れ、影を後ろに追いやる。
続いて和西の右隣に人影が現れた。
和西がその影の出現に気づいたときにはそれは右腰から凄まじいスピードで銃のようなものを抜いていた。
次の瞬間角のある影と蒼い影とともに解けるように消える。
続けざまに影の目の前に人影と恐竜のような影が現れ、人影は蒼い影の素早い攻撃を軽々とよけると腰から剣を抜いて影の胴を薙いだ。
同時に恐竜影が口から炎を撃ちだし蒼い影に命中さた。
そしてまた影が3つ同時に消えた。
 
間髪をいれずに髪の長い影が鳥のような影とともに現れた。
蒼い影が1つ静かに床に逃げるように吸い込まれ、鳥の影の攻撃はそれを捕らえ切れなかった。
人の影と鳥の影は数歩進み出て、人の影が左手につけた盾のような物のレバーを引いた。
ロッドを引き終わるか終わらないかの最中、和西の足元に蒼い影が現れた。
その口が大きく開かれ、気味の悪い笑顔を向けた。
しかしその顔が吹き飛んだかと思うと本体ごと消えた。
どうやって気づいたのか。
盾に銃でも仕込んであるらしい。
そして髪の長い影と鳥の影も消えていた。
 
 
はるか向こうに縦に光が差し、9本の影が伸びた。
さらにもう9本。
そして先ほどの4体の人影と4体の生き物の影が光を背景に立った。
他の影は強い光にぼかされてよく見えない。
1人目は腕組みをして静かにうなずき、二人目は手を上げて挨拶する仕草、3人目は剣の柄に手をかけていた。
4人目は両手を振っていた。
 
 
そして、和西は飛び起きた。
体中汗で濡れ、息も荒い。
「・・・今のは・・・?いったい・・・」
肩で息をしながら和西は部屋を見回し、ゴミ箱の中で眠るゴマモンとサイドテーブルの上の降流杖とD-ギャザーを見つけた。
そして気づいた。
自分が登校終了時間ぎりぎりに目覚めたことに。
 
和西は走っていた。
バッグには降流杖とゴマモン、リュックには教科書が一山入っているのでかなりきつい。
学校までまだかかる。
しかし
「ギリギリでいけるか・・・?」
和西は陸上部所属。
走りなれてはいた。
背中からくぐもったゴマモンの声が何か伝えたとき、
ふと顔を上げると、ヘリのような轟音を響かせて巨大なトンボが頭上を通り過ぎた。
「え・・・っ!」
和西は振り向いて目で追う。
ゴマモンが
「デジモンだよ!おれ先いって追いかける!」
そう言ってバックから抜け出した。
「ちょっ・・・まっ!!」
た、と言おうとした和西のすぐ脇を同い年くらいの少年が走り抜けていった。
そして屋根の上を黒い竜が続く。
すでに見えなくなったがゴマモンのほうを見て和西は、リュックをその場に置くとバックだけを背負い、後を追って走り出した。
 
 
街の中心部と郊外の境に山がある。
そのふもとの公園で竜と、そのテイマーに追いついた。
ゴマモンは見えない。
とりあえず和西は木の陰に隠れた。
ジャンパーを着たテイマーは腰から何かを抜き取り、一度振る。と、それは槍のようになった。
黒い竜は威嚇の唸りを上げ、今にもトンボに飛び掛りそうだ。
和西には目の前で起こっていることが信じられなかった。
 
D-ギャザー画面に表示されていた説明を思い出した。
「・・・デジモンテイマー!」
 
甲高い声を上げて巨大トンボが襲い掛かる。
黒い竜が飛び掛るがトンボは気にせず竜を顔面に乗せたまま、木に激突した。
巨大トンボは槍の一撃をかわすと次は和西に襲い掛かっる。
もう一人のテイマーは槍を構えなおし走り出す。
 
突如ゴマモンが茂みから現れトンボに体当たりを食らわした。
吹き飛ばされたトンボに槍が刺さるのと黒い竜がおきるのが同時だった。
「・・・・ッ!」
ジャンパーはトンボを真上に蹴り上げて槍を抜いた。
そして真横に逃げる。
トンボは嫌な音を口から出して2,3秒中を舞う。
そこへ黒い竜の放った火炎弾が直撃し、少しはなれたところに墜落した。
地面の草とともによく燃える。
 
ひときわ高く大きな音を出すとトンボの体の中心部からヒビが入り、砕けるようにして白い砂になった。
和西はただ目の前の光景に見入るしかなかった。
テイマーは槍をしまうと、黒い竜を助け起こす。
その後、ようやく振り向いた顔を見て和西はそれが誰か即座に理解した。
「積山慎!?」
小学6年のときに当時の中学1年のグループとケンカをし、自分はほとんど無傷で相手を大怪我させ全滅させたという噂を聞いたことがあった。
あまりいい人とは聞いていない。
「やっ・・・やばい?」
和西に向かって歩み寄る積山は無表情だ。
彼は和西の前まで来ると、
「大丈夫ですか?怪我とかしませんでしたか?」
と丁寧な口調で話しかけ、手を差し出した。
和西はしばらく硬直し、その手を握った。
「良かった。もし違っていたら失礼ですが・・・デジモンテイマーですよね」
自分を助け起こし、上着の草を払い落とした積山の雰囲気はまったく殺気立っていなかった。
和西はうなずき、
「もしかして10人の仲間、とかいう話知ってます?僕は水の大賢人です」
と答えた。
積山はほんの少し表情を緩めて答えた。
「はじめまして。ぼくは積山慎。銘は『闇の守護帝』です。これからよろしくお願いします、ということになりますね」
和西と積山は表通りを歩いていた。ゴマモンは和西のリュックに押し込まれていた。
「それにしても驚きました。ぼくは昨日テイマーになったばかりなんですが・・・こんなに早く仲間が見つかるなんて」
「僕は2日前テイマーになったばかりなんだけど・・・。そういえばギルは?」
和西は、難しい顔をして
「ギルと呼んでくれればいい」
とぶっきらぼうな自己紹介した積山のパートナー、ブラックギルモンのことを聞いた。
「ギルなら見つからないように屋根伝いについてくるように言っておきました」
積山は淡々と返すと話を始めた。
「いくつかわからないこともありますね」
「そっ、そうだよね、特別な10人のテイマーっていうのも・・・」
和西は発言途中で昨日見た夢のことを思い出した。
「どうかしましたか?」
積山は立ち止まって難しい顔をした和西に向き直った。
和西に昨日見た夢の話を聞かされた積山は少し考えて
「それではじめに現れた人影は竜をつれた槍使いだったんですね」
と言い、和西はうなずいた。
「・・・その夢が本当だったら1人目はぼくだとして・・・2人目は銃を使うテイマー、か・・・」
積山は腕組みをして歩き始めた。
考え込んだ彼の後を、和西は続いた。


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