デジタルモンスター
エターナル・ログ・ストーリー

第一章




 33    第33話 「方向」
For:
2007.12.31 Mon.
やっと開放された林未は自転車で出かけた。
後ろにはコテモンがしがみつき、後部車輪の両側にはコテモンの竹刀と林未の武器、『草薙丸』の入った革の袋が付けてある。
彼はバスが苦手だ。
だから今日も自転車で組織とやらに出向いた。
 
久しぶりに遠出をしたので林未はあちこちに寄り道をしていた。
そのせいで西の空が真っ赤に染まってしまった。
「早く帰ろうよ」
コテモンが林未の顔を覗き込んだ。
「わかってるよ」
そう言って角を曲がった林未は誰かに出くわした。
急ブレーキをかけて止まった林未は驚いた。スーツ姿の二ノ宮が立っていた。
「あなた確か組織のテイマー、二ノ宮さんですね」
「うん、」
「どうしたんですか?」
「お線香あげようと思ったら怒鳴られるは殴られるは・・・。追い返されちゃった」
林未は自転車を停めると角から覗いた。
「知ってる人のお葬式なのか?」
「うん・・・、私の部隊の人。今朝話したよね。私が殺したようなものだったから・・・」
そう言うと二ノ宮は歩いていってしまった。
林未とコテモンは再度覗いた。かすかに、享介、とかおとうさんという声が聞こえる。
全員が泣いていた。若い女性と同い年くらいの女の子が霊柩車にしがみついた。
 
林未は唇を噛み締めて塀をこぶしで叩いていた。
彼は生まれてから2度目の本気の怒りに染まっていた。
「なぁ、ケンスケ・・・」
コテモンが林未を見上げていた。
林未はふらふらと塀に寄りかかるとそのまま座り込んだ。
両手で顔を覆っていた彼はため息をつくと座り込んで泣き出した女の子を見、そしてコテモンを見上げ
「・・・帰ろうか」
立ち上がった。
コテモンを持ち上げ、ふらつきながら自転車に乗せた。
 
 
 
そして林未は胴をつけ面をかぶった。
竹刀をつかみ黒い胴の積山と対峙した。
林未は一晩たち積山の家を訪ねた。
 
「どうしても強くなりたい。だから実戦剣術を教えて欲しい」
 
積山は槍状の棒を構えて言った。
「体に触れたらそれが負けです。いいですね?」
林未は軽くひざを曲げ竹刀を構えた。
積山も足を引き槍を脇の下に構える。
「いざ」
瞬間積山はかなり低い姿勢で踏み込んだ。
限界まで間合いを伸ばした槍先を弾くと林未は竹刀で脳天を狙う。
積山は槍が弾かれたのを認識すると同時に槍で床を突き後ろに飛びのいた。
空を斬った竹刀を槍で飛ばされた林未の顔面に槍がピタリと止まった。
わずか数十秒。
林未は腰を落としそして座った。
「・・・強い」
積山はタオルで汗をぬぐうと林未の荷物を持ってきた。
「・・・・・・・・」
積山は無言で草薙丸を差し出した。
面をはずした林未はそれを受け取る。
「竹刀と比べてみてください。どちらが重いですか?」
唖然とした林未に積山が言った。
「東中の林未と言えば姉弟共に母親ゆずりの腕前で関東制覇までしたと聞きます。しかしテイマーとして戦う時には竹刀よりもはるかに重い真剣で戦います」
「・・・普段どおりに戦えない・・・?」
「そういうことですね」
積山は自分の着替えから断罪の槍を取り出すと起動した。
居合いで使用した槍といっしょに手渡す。
「ほとんど同じだな」
「でしょう?それと―、」
積山は面を取り上げると言った。
「なるべく使わないほうがいいですね。これは」
 
 
林未は竹刀と木刀と草薙丸の計3本のホルダーを背負って門を抜けた。
「いや―・・・。まいったな。強い」
コテモンはその様子を見ていた。
林未があっという間に一本取られたところも。
「急に強くなりたい、ってどういうことだい?」
コテモンの質問に林未は自転車にホルダーを縛り付けながら答える。
「いや、おれもテイマーだ。足引っ張りたくないのさ」
目線を合わさない。
はじめてあったときもそうだが林未は嘘をつくのが苦手だ。
だから目を合わせない。
「・・・そうか。昨日の葬式のことだね」
林未はため息をつくとコテモンに向き直った。
「はい、正解。さっさと帰ろう」
そう言ってコテモンを持ち上げた。
ややふらつきながら自転車に乗せる。
 
 
 
「・・・・さっさと帰るんじゃなかったの?」
林未は昨日立ち寄った本屋にいた。
「いや・・・その・・・。まぁ、やっぱりこれ買っとこうかと思って」
「そういうの優柔不断というんだけどね」
林未は文庫本を手に店を出てきたところだった。
自転車にまたがった林未は空を仰ぎ、振り向いた。
「わかってる。もう帰るよ」
「日が落ちる前にね。あまり時間無いけど?」
コテモンを一瞥すると林未は自転車をこぎ始めた。
駐車場を出た瞬間林未の前輪が人影に接触した。
「・・!!」
林未は急ブレーキをかけた。
「すいません。大丈夫です・・・・か?」
その人影は自転車のカゴをすり抜けた。彼の顔から一瞬血の気が引いた。
「物の怪?」
「何言ってるんだよ。デジモンだ。こっちに来ようとしてる!」
林未は10メートルほど先の影をゆっくりと追いながら訊ねた。
「こっちに来ようとしている・・?あいつが?」
言われて林未はまじまじと影を見た。どうやら他人には見えないらしいそれはいろいろなものをすり抜けて進む。
「こんな風にして出てくるのか・・・・」
 
しばらく影を追い続け、コテモンが言った。
「いい?こっち側に出てきた瞬間を狙うんだ」
林未は頷きながら片手で草薙丸のホルダーをはずした。その目が見開かれる。前方に人がいる。そしてその手前の影が急激に大きくなった。
「いくぞ!」
林未は上着のポケットから進化プログラムを取り出し読み込ませる。彼は背後が光るのを感じた。
「参るッ!」
シュリモンが飛ぶ。
「[草薙]ィ!!」
背の手裏剣を投げ影の首を狙う。
影から何かが飛び出し手裏剣を弾いた。
「なにッ!」
シュリモンは手裏剣を受け止めると林未のとなりに降りたった。
相手を見失った彼らの後ろに敵、ムシャモンが飛び降りた。
 
林未とシュリモンは振り返りムシャモンを発見した。林未はとりあえず後ずさり座り込んでいる人間を背中に隠すように立ち刀を抜いた。
「[紅葉下ろし]ッ!!」
シュリモンの両手の手裏剣をよけ背中の太刀を抜いたムシャモンが斬りかかる。
 


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