デジタルモンスター
エターナル・ログ・ストーリー

第一章




 36    第36話 「決断」
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2007.12.31 Mon.
稼働を停止した機関部は不気味なぐらい静かだった。
痺れを切らしたシュリモンが林未に言った。
「健助殿!ここは拙者に任せていただきたい」
林未は和西と顔を見合わせた。和西はゴマモンと顔を見合わせる。
「よし。ゴマモンも進化しよう」
和西は胸ポケットから進化プログラムを取り出しD−ギャザー上部に当てた。石が輝き画面に何か表示される。ゴマモンが輝きシルエットが巨大化する。光が消え和西たちは辺りを見回した。ゴマモンが進化したイッカクモンも身を縮める。
「・・・・・・大丈夫みたいだな・・・」
なにも音がしない。
「そうだね・・。じゃあ、行こうか」
林未は刀を抜き鞘をその場に置いた。組織隊員も頷き先頭の男が片手を上げ、前に振り下ろした。
全員が走り出す。瞬間真上から無数の羽音が響き笑い声が空気を震わせる。
見上げた和西は目を見開いた。
「しまった・・・!」
軽く見ても30体はいるだろうそれは紅い4つの眼を持つ怪物だった。デビドラモン。4体のシールズドラモンは次々と肩のナイフを抜いた。
 
「[ベアバスター]!!」
 
閃光が煌きデビドラモンを襲う。6体のワスプモンが同時に放った必殺の粒子砲が時間を稼ぐ。
「第3小隊援護します!」
二ノ宮を筆頭に6人の隊員がやってきた。
 
「[ブレイズファイア]!!」
「[フォックスファイア]!!」
漆黒と蒼の炎がデビドラモンの群れに直撃し、ベアバスターで消滅しきらなかったデビドラモンが吹き飛んだ。
「和西くん!林未くん!来たよ!」
銃を乱射しながら辻鷹が積山と共にやってきた。
 
「[ブラストレイザー]!!」
「[メガフレイム]!!」
新たに攻撃が加えられデビドラモンがほぼ完全に消滅した。
「見つけた!」
シールズドラモン4体と隊員4名に混ざって谷川・アクィラモン、嶋川・グレイモンが現れた。
「おう骨野朗!勝てると思ってんのか?」
嶋川が炎撃刃でスカルサタモンを指して言った。
「て、てめぇらきたねえぞ!」
「言えたことか」
林未が刀を振り言い放った。シュリモンは驚いた表情で彼を見た。無表情で刀を構える林未は冷たい気を放っていた。
 
その時、スカルサタモンの体が吹き飛んだ。あっという間に蜂の巣にされ消滅する。
ネオデビモンが頭上にいた。
応戦するアクィラモン、ワスプモン部隊はネオデビモンを見失った。瞬間的にグレイモン、デスグラウモンに襲い掛かったネオデビモンの背後に影が現れた。
「グッッ!!!」
それがネオデビモンの遺言になった。爆発、誘爆が火炎の球体を作り上げる。
そしてそれが消えたとき1体の青いデジモンがエンジン音をたてていた。
頭部のコクピットが開き、なんと組織のアーミージャケット姿の所長があらわれた。
「怪我は無いかね?」
妙に威厳のある声で全員にそう言った所長を全員が注視していた。
「ってオッサン!」
嶋川が指差して叫んだ。
「それはわたしだ」
「なんだよそれ!」
所長はシートに腰を下ろすとこぶしで軽く叩くと答えた。
「こいつはプテラノモンだよ。ハグルモンに進化プログラムを使ったんだ」
全員が唖然として見守る中彼はパートナーから降りると見回し、怪我は無いみたいだね、とつぶやいた。そして・・・
「ま、一件落着だな!」
 
 
そう言って大笑いを始めていた所長を二ノ宮は不思議そうな目で見ていた。
トラックは一応作戦を完了し帰路につく。
 
 
積山は妹の手を引いてトラックに乗った。
ギルのしっぽに殴られないように間隔を開けていた彼は滑るように建物に入っていく影を見逃さなかった。
「ギル!仁!ガブモン!」
叫ぶが早いか断罪の槍を抜き後を追う。
開け放たれた自動ドアをくぐり一番太い通路を走り抜けた。
「・・っ!!」
角を曲がった瞬間大きな影に出くわした。
デビモンがなにかわめき右手を繰り出す。
積山は槍でそれを弾きそのまま深々と胸に突き刺しひねって抜いた。
「お前じゃない!」
砂になったデビモンを背に積山は走り続けた。
 
とうとう原子炉まで来た積山にギルたちが追いつく。
その頭上でなにかがひるがえった。
反射的に銃を抜き細かな照準の調整を一瞬で終わらせた辻鷹は打ち込んだ。
氷の小さな弾丸が標的をかすり、一部を剥ぎ取る。
落ちた衝撃で氷が砕け、よく見えた。拾い上げたそれは碧色の厚めの布だった。
 
 
すっかり日差しが差し込む空の下、林未はうちに帰らずにその近くの小高い丘にいた。
木に覆われた丘の上に一本の小さな―それでも林未の背丈よりも高い―桜の木があった。
林未とコテモンはその下に座って景色を眺めた。今は血の跡などまったく無い地面の草を撫でて。
 
 
 
小高い丘の上。その上に一本の桜の木があった。その下に1体のコテモンと1人の林未が座っている。
 
あえてネオデビモンは彼らを見逃した。
そして北を目指す。


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