デジタルモンスター
エターナル・ログ・ストーリー

第一章




 41    第41話 「決壊」
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2008.06.19 Thu.
コンクリートで覆われた街の中、工場とビルの狭間で辻鷹と谷川とが顔をあわせていた。
近くをにガブモンとホークモンが誰も立ち聞きしていないか注意を払う。
「で?どうしてよんだの?」
「そりゃね、仁はいっつも組織の会議に出ないからね」
辻鷹が軽く肩をすくめた。
「だって、ね。あの雰囲気は好きじゃないから」
「わかるよ。この前なんか積山さんが癇癪起こしたから・・・。でね、この前・・・・」
谷川が簡単に説明した。そして、
「ホークモン、進化だよ」
プログラムを読み込ませた。
「ホークモン進化」
「       アクィラモン      」
狭いビルの隙間でアクィラモンが谷川を乗せた。
「ほら」
ガブモンと辻鷹に手を貸し引っ張りあげる。
「羽引っこ抜いちゃダメだよ?じゃ、飛んで!」
暴風が一箇所で巻き上がり紅い巨体が飛び上がる。
一気にかなりの高度をとったアクィラモンの上で辻鷹は眼を発動させ、辺りを見回した。
「どう?」
 
 
・・・2日前、二ノ宮の部屋。
蒼いライトで照らされた水槽を眺めていた谷川に二ノ宮が声をかけた。
「なに?」
「あのね。これ極秘、って言われてるんだけど・・・。実は侵略の前触れ、見つからないの」
谷川とホークモンは顔を見合わせ、
「見つからないって?衛星とかで探して前触れの手がかりを見つけたって言ってたじゃない?」
二ノ宮はノートパソコンを立ち上げ2人に見せた。
街が赤く塗りつぶされている。
「赤いとこの範囲だけなぜか衛星の画像データとか、とにかく全部ダメになってるのよ」
二ノ宮はパソコンをしまうとシャツにかかった髪を直して言った。
「そこでね。仁くんと計ちゃんでタッグを組んで欲しいの」
 
「彼の眼なら直接前触れを見つけることが出来るかもしれない。もちろん私たちもできるかぎりサポートするし・・・」
 
 
そして現在。
「どう?見つかった?」
谷川の長い髪の毛を払いのけ辻鷹は忙しく首を動かす。
「とくには・・・。あっ!百円玉だ!」
「まじめにやれよな」
ガブモンが露骨にムッとした表情を見せる。
「悪かったって・・・・。あっ!!」
「お前いい加減にしろ」
「ちがうよ!アクィラモン!あっち!」
「わかりませんよ!計、どの方角?」
「北、住宅街のほう」
アクィラモンは重心を右に移し細かい家がびっしりとならぶ住宅地に向かう。
「ここがなに?今度は五百円玉でも見つけたの?」
「違う。あの公園見て」
人だかりが出来ているのが見える。
「あれ?あれがどうしたの?」
「あの人だかりの中心に亀裂があるんだ。それに・・・人の様子もおかしい」
 
 
いったん降りた谷川たちは公園に近寄った。
軽く覗いてみる。
ただ人々が立っていた。
「やだ・・・まだいるわね」
「やだ本当!だれかしら・・・警察呼んだほうがいいのかしらね」
近所の住民らしき中年の女性が会話をしていた。
「あのう・・、あの人たちいつからいるんですか?」
「そうねぇ、5日くらい前ねぇ」
「警察には言ったんですか?」
「ええ。でも近寄ったとたん逃げちゃうのよね」
「そうですか・・・」
「お嬢ちゃん、近寄っちゃダメよ」
「え?ええ!分かりました。ありがとうございます」
谷川と辻鷹は頭を下げると公園を半周して中を覗いた。
 
「ダメって言われたし、近寄らずにここから見てみるか」
辻鷹は眼で一人一人の顔を眺めた。
「うわっ、なんだあれ・・・。人形みたいだ」
「そう。よし」
谷川は辻鷹のポケットに手を差し込んで携帯電話をとりだした。
「なに?なにするの?って僕のケータイ・・」
「貸して。腕利きな人呼ぶんだから」
谷川は2回電話をかけると礼も言わず返した。
 
 
20分ほどして嶋川、積山がやってきた。
「一応ギルたちには身を隠してもらってます」
積山が軽く後ろを指差し、腕組みをして公園をのぞいた。
「はぁ、あれですか」
嶋川も同じようにのぞき、
「確かに様子が変だな」
辻鷹は後ろから3人を見回し、
「ははぁ、腕利き、ね」
嶋川は谷川を見下ろすと、
「で?どうするんだ?」
谷川は単純明快に答えた。
「あの人たちに直接話しに行こう」
「了解。わかりました」
積山、嶋川が同意した。
谷川を先頭に4人が公園に足を踏み入れた。
「おい!そこの!なんだお前らは」
嶋川が攻撃的な口調で声をかける。
こういう口調も似合う。
棒立ちだった人々が首だけを回して3人を見つめる。
「そうかもうきずいたかデジモンをしたがわせる人間」
一息にまったく感情のない声が公園に響く。
「あなたたちは何者です?何故デジモンを知ってるんです?」
積山が落ち着いた、その上威圧感のある口調で訊ねた。
「しるひつようはないなぜならむいみだからだ」
その瞬間ざっと10人の人影のうち4つが姿を変えた。
ドロリと解けるような変化を終えた4体はそれぞれ谷川、積山、嶋川、辻鷹の姿になり立ち上がる。
「なんだ?」
「あたしの姿に・・・!?」
辻鷹と谷川が思わず声をあげる。
その一瞬に1体が同じ姿の者、積山に襲い掛かった。
「全個体、計4体の声紋をデータ化、表面データを解析――」
積山の偽者がオリジナルとまったく同じ声で言った。
「――完了」
直撃すれば骨を数本砕かれそうな蹴りが本物を襲う。
積山は相手を受け流すと1回転してかかとを首筋に打ち込んだ。
ボクリ、と嫌な音が響く。
しかし通常なら首の骨が折れるほどの一撃を受けた相手は素早い動きで積山の軸足を打ちはらった。
バランスを崩し、倒れた積山の真上に逆立ちした偽者は顔面への膝打ちを狙う。
積山は両足を凄まじい勢いで蹴り上げ応戦した。
その先は相手の腹部に吸い込まれる。
吹き飛ばされた体が地面に倒れると同時に蹴りの勢いを利用して積山が後転して立ち上がった。
 
辻鷹の偽者が言った。
「人間にこれほどの者がいるとはな。本人の実力だけではあるまい」
「その特殊なデジタル・デバイス。大変興味深い」
倒れていた積山もゆっくりと起き上がり、仲間の言葉に続けた。
「しかし、お前たちが死んだ後、ゆっくりと拝見しよう」
谷川の偽者が本物なら絶対にしないような残忍な笑みを浮かべる。
4つの影がそれぞれのオリジナルへと迫りくる。
 
 
その時、研究所で二ノ宮はメイン画面を睨みつけていた。
「いいか?ここが谷川さんから連絡があった公園だ」
所長が棒で示す。
「この地点をサーモグラフィーで見ると、こうなる」
とたんに画面が緑一色になった。
「どういうこと?」
「つまりな、公園を中心に少しずつ温度が下がってるんだ。谷川さんには退くように連絡を入れた。神原くんの部隊も向かってる」
所長は中心が青くなりだした画面を見て、そして振り向いた。
「ワスプモンなら追いつける。これ以上は危険だ。お前も谷川さんのところに行け」
最後にこう付け足した。
「もうそこは戦場かもしれない」
 
 
デスグラウモンの巨体が地割れの周りの人間をなぎ倒す。
すぐに溶けて姿を消したそれに見向きもせずにデスグラウモンは地割れを覗き込み、不意打ちを受け倒れた。
「くっ・・・」
パートナーの様子に気を取られた積山に偽者の上段蹴りが襲い掛かる。右腕で弾いたが肘に激痛が走った。その隙を逃さない偽者の蹴りが腹に撃ち込まれた。
「お前を殺しぼく自身が積山慎になる」
偽者が、もう一人の積山慎ががら空きの首を粉砕すべく右足を蹴り上げ、振り下ろす。
その瞬間彼の右足が吹き飛んだ。膝から下だけが宙を舞い、消え去る。
「なっ・・・?」
凄まじい形相で偽者が目の前を睨みつけた。
「間違えたらどうしようか、そう考えないところがオレの長所であり最大の短所だな」
細かい装飾の施されたナイフを手に、神原が立っていた。
 


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