デジタルモンスター
エターナル・ログ・ストーリー

第一章




 56    第56話 「系列」
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2007.12.31 Mon.
「これでいくつめの朝?」
和西は向かいに座った二ノ宮に訊いた。
「さぁ?」
鉄格子の向こうからの返事を聞き、和西は周囲に誰もいないか確かめた。
「・・・あのさ、みんな逃げてくれたかな?」
「わかんない。もし積山くんに何かあったとしても柳田くんたちは自分で気づいたかもしれない」
和西は頷いた。
「組織だけで十分相手はできていた。なのにその上層部や重要人物を捕まえて動けなくした。その上でテイマーを片端から捕まえ始めた、ってことは・・・」
「テイマーの抹殺・・・?」
二ノ宮はそう言ってすぐに首を何度か振った。
「ありえないかな。正直国も通常の兵器でメガドラモンを倒すのは無理だって分かってるはず。なのに対抗することができる勢力を自分から潰すかしら?」
ため息をつくと和西はそのまま後ろの布団に倒れこんだ。
「さっぱりわからない。何がしたいんだ?」
 
 
「何がしたいのかさっぱりわからない」
積山は自分のベットの周りに集まった人に向かって言った。
全員例外なく小さな荷物を持ち、帽子と上着を身に着けていた。
「たしかに分からない。戦車なんかでメガドラモンは落とせない」
辻鷹が思案顔で指摘した。嶋川は待ちくたびれたように口を開く。
「あのさ、もういいだろ?昨日の夜もメガドラモンが暴れてな。あれは戦ってるようにはとても見えなかったぞ」
それを聞いた積山は頷いた。
「デジモンが何体も組んでやっと倒せるんだからね。とにかく谷川さんと黒畑さん、仁は街の周辺で待機。メガドラモンと戦い始めたら軽く手伝って欲しい。残りは他のテイマーをできるだけかきあつめるんだ」
最初に出て行ったのは林未だった。彼はコテモンを先に出すと一度だけ振り向いて初めて笑顔を見せた。
「積山。和西がいない今、おれは君を頼りにしている。できることがあったらなんでも言ってくれ」
積山も笑い返し、頷いてみせる。
その後を追うかのように黒畑とロップモンが出て行き、それに続いて谷川と嶋川、ホークモンとアグモンが去っていった。
辻鷹は腰の銃を叩いて、大丈夫。そういい残してガブモンと部屋を出た。
最後に柳田が満面の笑みを浮かべ、
「そんじゃな。お大事に!」
コクワモンと共に姿を消した。
 
ギルと二人きりになった積山は卵の入ったバスケットを持ち上げて下を覗き込んだ。
紅いプログラムカードと小さなメモが添えてある。
ベットに身を沈め、メモを開いた。
『完全体に進化できるものです。預かっていてください。 Y、K』
「なるほど」
積山はカードの裏面の刻印を眺め、それをベルトのポーチに入れた。
そしてパートナーに訊いた。
「ギル、本当に許してくれるのか?」
ギルは当然だろう、という顔で頷いた。
積山は安堵の表情を浮かべると卵を抱きしめた。
「ごめん。でも本当にうれしい」
そんなテイマーの様子を見てギルは胸をなでおろした。
今朝、随分説得したのだ。
積山は卵に触るのを拒絶していた。
しかし今はすべてを終えたような表情で眠っている。
「久しぶりにいい顔になったな」
ギルはベットの脇に置かれた机に卵の入ったバスケットを置くとテレビをつけた。
 
 
戦車が砲弾を撃ち込む様子が鮮明に見えた。
 
 
グレイモンのそれと比べればたいしたことの無い砲撃音を聞き流しながら嶋川は街を横切った。
「やれやれ、和西たちに面会、って無理なのか?」
アグモンは当然のように頷いた。
「そりゃ無事に帰るのは無理かもな」
確かに和西や二ノ宮の仲間だと言えばまぁ事実上捕まるだろうな。
嶋川はそう予想を立てていた。
「そういうわけだ」
彼は肩から下げたバックの中にいるゴマモンに話しかけた。
ゴマモンはバックから顔を覗かせると残念そうに言った。
「そっか、やっぱ無理かぁ・・・!どうするかな」
それまでずっと黙って後をついてきていた谷川が口を開いた。
「とりあえず・・・、あたし達の勝利条件は1、和西くんと涼美ちゃんを釈放させること、2、組織の再結成を認めさせること、の二つ?」
「あとできれば、あいつらの口出しを禁止させたいしな。それに最後の1人を探す必要もある」
嶋川は追加するとため息をついた。
「上手くいくかね」
「でも上手くいかすのがベストだよ」
谷川は肩をすくめて見せる。立ち止まると腰のベルトに1つだけついたポーチからプログラムカードを取り出すと読み込ませた。
進化を始めたホークモンの前で谷川は明るい表情で言った。
「あたし達はしばらく黒畑ちゃんと一緒に他のテイマーにコンタクトとってみる」
「おれ達はそうだな。しばらく林未と柳田みたくあいつらの監視とかやってみる。・・・ありゃ見てらんねーけどな」
嶋川は握手をするとコートを羽織った。
「じゃ、お互い」
「そうだな。がんばれよ。お前らも」
谷川は頬を赤らめて何か言ったが戦車の砲撃音がそれをかき消した。
 
 
「なぜだ?あれはなんだ!?何故なにも通じない?」
軍服姿の男が絶句した。
狭い戦車の操縦席からファインダー越しにメガドラモンが鉄甲弾を無造作に翼から引き抜き投げ捨てた。
「こ・・・・、後退だ・・・・。後退!早く!!」
指揮官が狂ったように叫び、左腕の銃口を向けるメガドラモンを驚愕の目で凝視する。
鈍重な戦車が数台ジリジリと後退を始める。メガドラモンがミサイルを放とうとした瞬間、
メタルグレイモンが真上からミサイルを撃ち込み、メガドラモンを撃ち落した。
 
戦車を捨て、逃げ出す人々をビルの上から見ていた嶋川・辻鷹・ガブモン・林未・コテモンはそれぞれ顔を見合わせた。
「まったく・・・。最初からおれ達に任せとけばいいのにな」
嶋川が双眼鏡を覗きながらとなりの辻鷹に言った。
「そうだね。どうやら戦車じゃメガドラモンは堕とせないみたいだ」
眼で潰れた戦車を見つめていた辻鷹は返事を返した。
林未はそんな2人に背を向けるとコテモンと階段を下りていった。
「またな」
嶋川の呼びかけに林未は後ろを振り返って答えた。
「あぁ。またな」
何十もある階段を淡々と下りていく。
残り十数段ほどで彼は走っていく柳田とコクワモンを見つけた。
「奇遇やな」
「そうだな。どうした?」
柳田は林未を見上げて言った。
「逃げ遅れたみたいな女の子がおったんや。知らんか?」
「知らない」
「・・・・・・・・・さいで」
柳田に返事を返すと林未は辺りを見回した。
ちょうど誰か、と何か、がビルの間から姿を現したところだった。
 


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