デジタルモンスター
エターナル・ログ・ストーリー

第一章




 61    第61話 「嫌疑」
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2007.12.31 Mon.
逆袈裟に斧で斬り上げる二ノ宮の斬撃から飛びのくことでかわした彩華は同時に数歩、瞬時に踏み込み、顔面に膝撃ちを叩き込んだ。
 
 
「ところでどーいう娘なの?」
「そう、ですね。家の道場では・・・、あと5年位したら勝てる人いなくなりますね・・・。私も年齢差で勝ってるような物ですから」
 
 
詰め所の壁に叩きつけられた二ノ宮は荒い息を繰り返しながらクダモンと彩華を睨みつけた。
「な〜るほどね。こうやって使うんだ」
彩華はたった今ハイキックを繰り出した右足を上げてひざを叩いた。
ひざに装飾の施された装甲板が巻かれているのが見える。
無表情のまま体を起こした二ノ宮の胸を電撃が射抜いた。
柳田は弓を手早く仕舞うと彩華の背を押して組織の建物の入り口に押し込んだ。
「お譲ちゃんテイマーやな。中で誰かに声かけろ。何とかしてくれるやろ」
外ではちょうどブレイドクワガーモンが偽者を仕留めたところだった。
 
 
組織の建物についたとたんに検査を受けた黒畑とロップモンは指定場所の扉を開いた。
一同を見回して黒畑はつぶやいた。
「急に召集がかかるから来てみたら・・・」
積山が軟禁されている部屋に11人と11体のデジモンが集まっていた。
そのうち、和西のすこし後で腰を下ろした嶋川は、
「やっとテイマーが出揃ったワケか」
そう言って笑みを浮かべた。
「まぁ、これで10組そろったわけだし、とりあえずは良しでいいんじゃない?」
ガブモンが頷いて見せた。発現の機会を奪われた辻鷹は口を何度か開いては閉じ、そして黙った。
かわりに彩華と雑談を交わしていた谷川が口を開いた。
「ようするに本当は意藤、って人が10人目だったんだね?」
「まっ、そーいうことになるんちゃう?」
柳田は同意しながらコクワモンから延びるプラグをコンセントに差し込んだ。
そんな様子を見ていた時はとなりで黙っている林未の肩をさわった。
「あの、あたし出たほうが・・・?」
林未は振り向いて、首を横に振った。
「話は聞いておいたほうがいい」
その声を聞きつけたゴマモンに促され、和西が口を開いた。
「そうだった。いくつか大事な話があるんだよ」
そう前置きし、彼は続けた。
「この部屋に来てもらう前に受けてもらった身体検査の結果が出るまでに話しておきたい。まずは・・・、これからの戦いについて」
二ノ宮が後を引き継いで話した。
「柳田君たちが見たデジモンたちのことなんだけど、それぞれ海底、大気圏外、それに地下2キロくらいの場所に逃げてる。さすがに追いかけられないんだけどね。・・・そうとう強いと思う。だからメガドラモンやアンノウンを徹底的に壊滅させる必要があるわね。・・・被害を最小限にするためにも」
「被害は最小限にします。純正のテイマーのほうが組織の隊員よりは強いということもありますから、私達はおのずと最前線で戦う事になります。もちろん時さんのように民間人のテイマーは自分の意思でいつでも前線を出入りしてもらう事にします」
積山が静かに言った。
嶋川は拳を鳴らすと、
「最前線か・・・!いいぜ?もう死なねぇよ。全部倒してやる」
その肩を軽く叩くと和西はメモ帳を取り出した。
「あとは・・・、そうだね。これまで戦ってきていくつか、なんというか『謎』が出てきてるんだよ」
積山は側からプリントを出し、となりに渡した。
渡された辻鷹がぶつぶつと読み上げた。
「“資料1、謎な点
・意藤さんにデジヴァイスを渡した30代くらいの男とはだれか
・そもそもテイマーになぜ特殊な能力を持つもの=私達がいるのか
・天羽達やメガドラモンとアンノウンはどういう関係か
・なぜアンノウンは私達の偽者を作ったか
・積山と嶋川のデジヴァイスが変化したのはなぜか
・デジモンはなぜ最近になって急激にリアライズの割合が増えたのか”―っおぐ!!!!!」
その瞬間辻鷹は脇に跳ね飛ばされた。
猛烈な威力をもって開いた扉から所長が右手にクリップボードの束を掴んで姿を現した。
「おふ?・・・まぁいいや、結果出たよ」
和西にそれらを渡すと所長は出て行った。
辻鷹は扉からできるだけ離れて座りなおした。
同時に女性陣が和西から自分のボードを奪い返した。
気を取り直した和西は自分のボードに挟まれたメモを見てため息をついた。
「今回集まってもらったのはこの検査が目的だったと言ってもいいんだ」
積山、林未以外の全員が彼を注視した。
「デジヴァイスをつけてる右手から電気的な信号が出ている。・・・たぶん、脳とか全身の筋肉とかに・・・・・・・・・・・・作用してる」
積山・林未・時以外の全員が自分のデジヴァイスを見つめた。
「作用してるってどういう、こと・・?」
谷川が恐る恐る訊いた。
「つまり、体に作用している、というのは・・・、例えば仁の目の視力が上がるとか嶋川さんの反射神経が鋭くなる、とかですね」
積山が自分の考えを打ち明けた。
続いて林未が客観的な物言いで言った。
「脳への作用ということは・・・もしかしたら恐怖感の抑制や闘争心か?心当たりがないでもない」
和西は頷いてメモを皆に見せた。
 
“D-ギャザーの電気信号が脳へ与える作用は恐怖や迷いを抑え、闘争心を向上させ、より戦闘に向いた精神状態に近づける”
 
「戦うためだけの存在になるかもしれない」
和西の小声が響いた。
 
 
 
積山とギルを残し、全員が立ち去った後。
最後に残った谷川・ホークモンと嶋川・アグモンもその場を後にした。
「悪いな。そういえばまだ謝ってなかった気がする。お前にだけは迷惑かける気は無かったんだが・・・」
嶋川はすれ違う寸前でそれだけ言った。
谷川は追いついてその肩を叩いた。
「そんなに迷惑かかってないもん」
彼女はホークモンからデジヴァイスを受け取るといつものようにそれを右腕につけた。
「“戦うための存在”になったら浩司やホークモンに止めてもらえばいいじゃない?」
嶋川は明るい表情になった。
「そうだな。同感だ。・・・大体俺達は“戦うための存在”なんかになったりはしない」
彼はそう言ってデジヴァイスをつけた。
それはすこし輝いて見えた。
 


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