キャノンビーモン数十体の背部ミサイルが一斉に火を噴いた。
硝煙が舞い上がり、すぐに空に飲み込まれる。
海岸線にはタンクドラモンの部隊が並ぶ。
そのはるか上空の偵察仕様キャノンビーモンが敵の正確な位置を把握し、その数秒後には全部隊が情報を共有した。
「[ブラストガトリング]!!!!」
浜辺が一斉に輝き、弾丸が相手近くの海上を爆ぜた。
轟音が轟き、何十本も水柱が上がった。
その中心からさらに巨大な水柱が立ち上がり金色に輝く装甲を身につけた竜が宙に飛び上がった。
「目標を肉眼で確認!」
そのデジモンの口が開き、喉の奥が光った。
「[ギガシーデストロイヤー]!!!!」
爆音とともに巨大なミサイルが発射され、猛烈なスピードで部隊に迫る。
「[衝撃羽]!!」
「[ヘルファイアー]!!」
「[ホーミングレーザー]!!」
ミサイルの前に進む力が暴風と猛火に打ち消され、閃光がそれを焼き切り、誘爆、大爆発が立て続けに起こった。
空が一瞬紅くなり、爆風が海岸線のもの全てを揺さぶった。
「―っしゃ!」
柳田が拳で手のひらを叩いて歓喜の声を上げる。
その横で時が心配そうな顔で、
「あんなミサイルが街に落ちたら・・・・・。考えられません・・・」
と呟いていた。
コクワモンの進化したメタリフェクワガーモン
ラブラモンの進化したケルベロモン
コテモンの進化したカラテンモン
神原率いるキャノンビーモン20体、タンクドラモン10体の部隊は海底から姿を現せた『ギガシードラモン』の撃破のため、海岸線工事中の海岸に布陣していた。
林未、柳田、時の三人はその護衛で着いてきていたが、
「いや、正解だったな」
神原が額をさすりながら林未を見下ろした。
林未は紅い、進化プログラムの完成品を上着のポケットに入れると首を振った。
「いまのはかなりギリギリだ。防ぐのが精一杯だな」
ベンチから立ち上がると柳田は双眼鏡でギガシードラモンを観察し始めた。
「ははぁ、あれが究極体か・・・」
同じく双眼鏡でそれを見ていた神原はすぐに手にした通信機に向かって口を開いた。
「次にヤツがミサイルを吐き出した瞬間口に全攻撃を集結させろ!口の中でミサイルを破壊して倒す!」
雑音が一瞬入り、誰かが、
『了解!しかしさすがですね。いい作戦ですよ』
それを聞いた神原はこともなげに、
「だろう。前に積山から教わった」
『・・・・・・・・・・了解しました』
適度に部下をからかった神原は一度大きく息を吐いた。そして、
「なぁ、健助。なんで最近になってデジモンがこんなに出てくるようになったと思う?」
「知らん」
つれない返事を聞き、神原は再びため息をついた。
「なにかがおかしくなってる。そんな予感というか・・・、そんなものをお前は感じないか?」
林未は一度だけ神原を見上げ、すぐに背を向けた。
「それならおれにもよく分かる」
「[ギガシーデストロイヤー]!!!」
「攻撃・・・・・、開始」
林未も神原も黙って水平線の龍を見つめていた。
足に力が入らなくなった時を支えると柳田は林未を呼んで場所を交代した。
凄まじい砲撃が耳を麻痺させる。
無音の攻撃が続き、部隊の全面が閃光に包まれる。
大量の白い砂が海底へと沈んでいった。
「勝ったな・・・。一応」
「えぇやん。勝ったんやから。負けたんとちゃうで?」
林未と柳田の短い会話が聞こえた。
「勝ちは殺しで負けは死だ」
「そんなこと言うてたら・・・・・、『負ける』で」
「そうか。ご苦労だったね」
携帯電話で神原からの報告を聞いた有川は頷いた。
それを机の上に置くと目の前の20人ほどの人・・・、子供から大人まで、男女も年齢も様々だ。・・・・に目を向けた。
「君達も戦うんだな」
有川の声に全員が頷いた。
その様子をそばで眺めていた谷川、ホークモン・嶋川、アグモン・積山はずっと黙って話を聞いていた。
有川は一人一人の顔を見ながら、
「この戦いは常に危険や死と隣りあわせだ。できるだけ自退して欲しい」
と言った。が、一番前列の少年数人組みの一人が軽い口調で言った。
「だいじょうぶだよ。死んでも」
有川たちを含めた数人が目を見開いた。
「どういうことだい?」
「いや、死んでも大丈夫じゃん?ゲームみたいなもんだろ?」
「そんなことはないだろう」
「だってデジモンみたいなゲームのキャラみたいなのがゲームみたいに戦うんだぜ?死んでも復活できるだろ」
バカみたいなヤローだ・・・。壁にもたれかかった嶋川と入れ違いに谷川が勢いよく立ち上がってその少年に突進した。
「あのね!生き返れるわけ無いでしょ!?戦う事はそんな甘いもんじゃない!!」
しかし彼はまったくひるまずに、
「一応真剣にやるよ。でもリセットボタンかなにかあるんだろ?」
ついに谷川はその胸倉を掴んだ。
「あるか!!!」
「あるよ。知ってるぜ?そこの男とそのとなりのやつの彼女、生き返ったんだろ?」
その瞬間積山と嶋川が凍りついた。
少年は視線を落とした谷川の手を振り払うと乱暴に突き飛ばした。
「噂になってるんだよねぇ」
結局、『生き返れない』『ほぼ必ず痛い目を見る』ということを認識しているテイマー8人だけが採用された。
8人は一人ずつ、谷川に声をかけたり肩を軽く叩いたりした後、有川と握手をして部屋を出て行った。
「なあ、」
「あの、」
積山と嶋川が同時に声をかけようとした。
ややあってから積山は部屋を出ながら言った。
「君は正しい」
嶋川は谷川の肩を抱いて言った。
「悪りィ・・・」
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