デジタルモンスター
エターナル・ログ・ストーリー

第一章




 66    第66話 「天空」
For:
2007.12.31 Mon.
クロスモンの動きを封じた一撃。
レーダーの範囲外から奇襲をかけることが可能なほどのスピードを誇るデジモン。
実弾はおろか粒子砲でも狙撃は不可能、のはずだった。
 
「任務完了です」
ダークドラモンのうち一体がとなりにいるデジモンに伝えた。
 
 
 
 
その数十分ほど前、
嶋川、谷川の2人は積山を探しに行ったアグモン、ホークモンと待ち合わせていた。
「来たな」
短くそう言うと嶋川が立ち上がった。
カフェオレを飲んでいた谷川もつられて立ち上がる。
アグモンとホークモンが並んで帰ってきたところだった。
ホークモンは途中から空中を滑空して谷川の目の前に着地する。
「神原さんに呼び出されてますよ」
ホークモンの言葉を聞いて谷川は露骨にいやそうな顔をして見せた。
「なんで?たまには休ませてよ。浩司じゃだめなの?」
「ダメみたいですね」
嶋川とアグモンは顔を見合わせて苦笑した。
「はいはい、やるべきことをやりたいんだろ?」
「そりゃそうだけどさ。なんであたしが呼び出されるのさ」
谷川はまだ膨れっ面をしていた。
 
 
組織の研究所、中庭までアクィラモンで一気に飛んだ。
谷川は出迎えた神原の部下を睨みつける。
「まともな用事なんでしょうね」
「もちろんです」
隊員はすまし顔で答えた。
ほどなく広い中庭に10人ほどの隊員と10体ほどのコマンドドラモン、1ダースほどの研究員に混じって所長の姿も見える。
そのゴタゴタの中に神原の姿を見つけ、谷川が大声を出して呼んだ。
整列を完了した隊員の前を走って横切り、谷川の前まで来た神原はその腕を引っ張り、列の最前列に無理やり立たせた。
「ちょっと!何のつもりよ!」
さっきから発言の機会がないホークモンを押しのけ、谷川がくってかかった。
その手にプログラムカードと書類を渡すと神原は書類の3行目を示した。
『究極体進化プログラム 初実戦』
「説明してるヒマないんだ。とりあえずそれ使ってみろ」
その時研究員が号令をかけた。
しかたないか?
谷川は一人ため息をつくと、ホークモンに促されカードを読み込ませた。
 
 
谷川のその時の心境を一言で表すと『驚き』だった。
カードを読み込ませたとたんに自分の周りを風が吹き荒れるのを感じた。
風は竜巻へと変化し、谷川とホークモンを包み込む。
(そういや台風の中心は風がないんだっけ)
漠然とそんなことを考えていた谷川は振り返った。
ホークモンがいた。
『どうやらいままでの・・・・、アクィラモンやガルダモンへの進化とは違うみたいです』
不自然に響いて聞こえる。
右手を見るとD-ギャザーが一瞬粒子化し、再構成され積山や嶋川のものと同じ形に変化した。
「やりますか・・・」
『それでこそ、です』
谷川はプログラムを読み込ませた。
風が完全に2人を包む。
谷川もホークモンも粒子化した。
 
 
風が消え去ったとき、谷川はあたりを見回した。
自分のとなりや後ろは黒と青を基調としたカラーリングのサイボーグデジモンが整然と並んでいた。
そこで急に自分の背がだいぶ高くなったことに気がついた谷川は自分の足元に目をやり、驚いた。
『ヴァルキリモン、究極体に進化したみたいですね』
自分の考えかもしれない、でも違う。
自分の考えじゃない。
 
混ざってる・・・?
 
意識が混ざってる。
頭を触ると見慣れた羽飾り、腰には剣。
背中には翼、右腕にはD-ギャザーといつもの盾。長い髪が背中に流してある。
神原はあたしの目の前まで来ると口を開いた。
「お前には今から二ノ宮の部隊の救援に向かってもらう。オレは前線本部で指揮をとる。とりあえず指示は現場についてからだ」
神原はヴァルキリモンの背中を見て軽く頷いて見せた。
「予想通りだ。飛べるんだろ?」
すでに数体の“ダークドラモン”が空に飛び立って行く。
ヴァルキリモンは翼を広げると羽ばたいてみた。
数十センチほど体が浮かび上がる。
ヴァルキリモンは一度鋭く息を吐くと強く羽ばたいた。
風が舞い、羽毛を散らせてヴァルキリモンはダークドラモンに続いた。
 
 
残された研究員たちは結果データの整理に追われる。
二ノ宮にそのことを伝えようとその場をあとにした所長は黙って空を見上げる神原に目を止めた。
「本部に行かなくていいのかね?」
神原ははっとした顔をして見せた。
「いけね!そうだったよ」
そんな様子の神原を見て所長も空を見上げた。
「そういえばしばらく空なんか眺めてなかったな。いやいや・・・、毎日のように戦っていたあの頃が懐かしい」
「そうだな。オレも少し懐かしい。・・・・・あぁ、谷川のヤロー、いい運動神経してやがるな・・・・」
2人はもう一度空を見上げ、すぐにそれぞれの目的地へと向かった。
 
 
「あたし今空を飛んでる・・・!風を斬って・・・・」
ヴァルキリモンは呟いた。
 
 
神原から指令が入ったのは現場に到着して間もなくだった。
「お前の能力は使えるな?敵はクロスモンっーデジモンだ。ただどうもブースターを装備して移動速度が数倍に跳ね上がってやがる。だがな、ブースターの音をお前なら聞き分ける事が出来る・・・!とにかく攻撃を当てて動きを一瞬でも止めてくれ。攻撃力ではこちらがはるかに上回ってる。勝てる」
神原の声を通信機ごしに聞いたヴァルキリモンは頷いた。
「分かった。やってみるよ」
通信機をダークドラモンに投げ返すとヴァルキリモンはロッドを引いて耳に全神経を集中させた。
ダークドラモンのブースターの音。
どれも単調で同じだ。
さらに集中する。
 
ゴ・・・ゥン・・・・ゴ・・・・ゥン
 
かすかに雑音交じりの音が聞こえる。
それは少しずつ大きくなっていた。
(ホント。速っやいねー・・・)
通過する場所は大体分かる。
あたしは仁とは違うよ。細かい仕事なんかやってられるもんか。
あたしにはあたしのやり方がある。
予想地点を中心に連射。
重い音と衝撃が右手に生まれる。
音からして第一撃、2撃は外れた。
でも・・・。
前の2発にひるんだクロスモンに最後の一撃が命中する。
ひるんだときにすでにかなりスピードが落ちていた。
この瞬間、クロスモンの体は急ブレーキにきしみ、悲鳴をあげる。
スピードメーターはゼロを示す・・・!
 
ヴァルキリモンは粒子砲がクロスモンを包むのを黙って見ていた。
 
 
1体のダークドラモンが任務完了の報告をヴァルキリモンに伝えるため、近づいた。
 


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