デジタルモンスター
エターナル・ログ・ストーリー

第一章




 7    第7話  「戦士」
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2007.12.27 Thu.
「どうしたんだよお前・・・・・・・」
嶋川は驚きを隠せないようすだ。
ベットから半身を起こした辻鷹はやれやれといった感じで両手をあげ、「倒れたんだって」と答える。
 
土曜日の早朝、新藤医院。
パートナーを和西の家に軟禁したあと辻鷹の見舞いに来たのだった。
 
「貧血だって」
「なるほどな」
「・・・・・なんでそこですんなり納得するわけ」
冗談を言い合うと嶋川は安心したらしく、
「今朝積山から電話でお前が倒れたって聞いて・・・・・」
そして表情を変え言った。
「・・・やっぱりな、て思ったんだよ」
 
辻鷹が言うには・・・
その日、辻鷹はテレビを見ていた。
別に特別に見ていたわけではないが彼はブラウン管に見入っていた。
映し出されているそれは工場だった。
工場の責任者と字幕が表示され男が修理されつつある倉庫を指して何かしゃべる。
それはモノクロモンが破壊したものだった。
「思ってたよりとんでもないことにならないね」
顔をあわせ、至近距離でガブモンに話しかける。
しかし異変がおきた。
無意識にもっとよく見ようとした辻鷹はテレビが拡大され・・・・。
目の前がトリコロールで包まれた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「というわけなんだけど・・・」
「テレビの見すぎだろ?」
あっけなく全員の意見がそろった。
「ところでこの前の変な人たちのことだけど・・・・」
「あぁ、あれか。組織、って感じだったな。・・・・・まぁ個人であんなことする奴はいないか」
「えっと・・・本物の銃持ってましたよね。・・・誰なんだろう」
「知りませんよ、そんなこと。きちんと訓練されてなおかつ統率も取れていましたが・・・」
「パートナーがいたってことはテイマー?」
「そういえば僕が戦った人、やけに強かった気がする」
「それはお前が特別弱いんだろ」
唖然とする辻鷹。
沈黙が流れた。
「・・・まぁ、組織なら実力で部下を指揮するリーダーがいてもおかしくないと思うけどね」
積山がフォローした。
ちょうどそのとき、新藤が病室に入ってきた。
検査台とその上に並ぶ器具類、注射器を見て辻鷹は全身を引きつらせた。
 
仮退院した辻鷹を含め、4人は立ち寄った店でハンバーガーを食べていた。
「はぁ・・・」
ため息交じりの辻鷹の肩を和西がたたいた。
「元気出しなよ。一応退院したんだから」
血液検査のために血を抜かれた辻鷹に新藤が
「水曜日検査をするからきなさいね。慎君も新しい固定器具見に来てほしいんだが」
しかし積山はその後の新藤の言葉の意味を測りかねていた。
「よかったら嶋川君と和西君もきなさい」
自分や辻鷹は分かるが和西たちは何故?
「なに?あれ」
誰かが嶋川の後ろで言った。
つられて窓の外を見た嶋川は手が止まった。
デビモンが飛んでいった。
「いくか」
嶋川は立ち上がって手をつけていないハンバーガーをポケットに入れた。
他の者もならう。
積山は、和西に
「ギルたちを呼んできてください」
積山の落ち着いた口調に和西は何度もうなずくと走り出した。
嶋川たちは追跡を始めた。
しばらく走り、辻鷹がへとへとになった頃に1軒のビルの5階くらいの窓から入っていった。
もう使われていないらしくドアには鍵がかかっていた。
嶋川はスポーツバックから炎撃刃をとりだす。
辻鷹はリュックからホルダーに収まった銃を出し、腰にかけた。
「ぶっ壊すか・・・?」
剣の柄に手をかけた嶋川を制し、積山が前に進み出た。
「ちょっと待っててください」
積山の手元でカチンと音がした。
積山がドアを手で開けて中に入る。
「ピッキング?どこでそんなこと覚えたの?」
驚く辻鷹に積山は振り返らずに断罪の槍を抜きながら答えた。
「普段ヒマなんですよね」
和西がデジモンをつれて到着するのを待ってから、彼らは奥へと入っていった。
ドアをくぐる直前、和西はビルを見上げた。
黒い影が2つほど中に入っていった。
「・・・いきますか」
できるだけ静かに潜入した。
手近な物陰に隠れて辺りをうかがう。
「・・・いない?」
ゴマモンがきょろきょろと周りを見た。
「なんだよ」
嶋川がやはり辺りを警戒しながらつぶやく。
「どう思う?」
例によって和西に聞かれて積山は少し考え、
「3階より上に固まっていると思います。・・・ビルごとと吹き飛ばせば確実かと」
ギルが非常に楽しそうに。
「それは楽だろうな・・・・。冗談だろ?まぁどっかの誰かさん達はやるかもな」
和西はこの前の夜のことを思い出す。
同感だった。
一般市民を容赦なく銃で狙うような奴らだ。
それぐらいやりかねない。
「そうなる前に早くやっつけよう」
そしてその数時間後。
辻鷹は目を開けた。
体を起こす。
「あれ・・?」
そうか。積山くんたちとハンバーガーを食べて、ビルに忍び込んで・・・・。
なんて夢を見・・・・てたわけじゃない。
どうなったんだ・・・?
 
立ち上がってホルダーと上着をつかみ、扉を開けた。
外にはガブモンと新藤医師が立っていた。
辻鷹はガブモンを見て驚き、何か言おうと口を開いた。
それを遮るように新藤医師は辻鷹の肩をたたくと1階に下りていった。
「仁、どうする?」
階下に患者が数名いることを確認し、しかたなく辻鷹は何も言わず階段を上がり屋上にでた。
銃を組み合わせ、ロックしてそれはライフルになった。
「ガブモン、支えてて」
しっかりとした口調にガブモンは辻鷹の背に手を置いた。
「・・・・・どうかなぁ・・・」
辻鷹は目を凝らした。
目まいが起き、吐き気が襲い、脳が疼いた。
そのとき右手の紋様が輝き、瞳孔に青色が刺した。
やがて辻鷹の眼は遠くを捉え始めた。
そしてついに1つのビルの中に仲間を捉えた。
「やっぱり・・・!見えた・・」
 
嶋川はデビモンに炎撃刃を突き刺した。
しかしそのデビモンが消滅するまでに脇から飛び込んできた別のデビモンに跳ね飛ばされ、ダンボールの山の中に大きな音を立てて倒れこんだ。
「だいじょうぶか?」
アグモンが口から吐いた火の玉をデビモンの顔面に直撃させ、退ける。
和西は降流状で斬りつけ、デビモンを縦切りにした。
さらさらと白い砂がおちる。
床はあと少しで白い砂に完全に覆われるようだ。
「思ったよりも数が多そうです。・・・読みが甘かったか・・・?」
積山が断罪の槍で胴を薙ぎながら言った。
彼がそう呟いたのを聞き取り、和西は首を振る。
「なに言ってるんだ、君の作戦は・・・・上手い」
そう言いながら和西は前を見た。
1つしかない、というより他の階段をふさいだせいでデビモンは一体ずつしか下に降りてくることが出来なくなっていた。
 
しばらく交戦が続き、やがて羽音が消え、デビモンが降りてこなくなった。
「・・・大丈夫か・・・?」
立ったまま固まってしまった辻鷹を見てガブモンが心配そうに言った。
辻鷹は手だけを動かして準備を始めた。
積山を先頭についに4階に来た。
「いない・・・」
その階は広々とした部屋1つで何もない。
向かい側の階段に向かって歩き出すと・・・・
「・・・・・!」
積山が飛びのき、数秒前まで彼が立っていたところにコンクリートの塊がたくさん降り注いだ。
「しまっ・・・・」
ギルは振り向き階段を見た。
デビモンが何体も降りて腕を伸ばして攻撃を始めたのが視界に辛うじて映る。
同時に先ほど天井に空いた穴からデビモンが降りてきた。
 
和西は降流杖で腕をはじきながらつぶやいた。
「しまった・・・・囲まれた・・・・・!」
辻鷹はその一部始終を見ていた。
「・・・ガブモン」
「?なんだ・・?」
「さっき寝てるときにみんなの夢を見た気がしてね。もちろんハンバーガー食べてるとかそういうんじゃない」
辻鷹はライフルのストックを肩につけて構えた。
「それでみんな向こうに行っちゃって・・・・」
辻鷹はしゃべりながら目測だけで狙いをつけてデビモンの一体を狙った。
そして引き金を引きながら言った。
「みんなが危ないって気がしたんだ」
ちょうど背を合わせるような形に和西達は追い詰められていた。
身動き1つできない彼らの前に2体のデビモンが鎖を引いてやって来た。
小さく細い身体をベルトと鎖が包んでいた。
差し込まれたように白い羽毛に包まれた羽が出ている。
顔は宝石で出来たように半透明なマスクとベルトに覆われて目だけが見えていた。
「なんだ・・あれ」
アグモンがつぶやいた。
「親玉か・・・、それとも人・・、じゃない。デジモン質、か・・・?」
嶋川が炎撃刃の柄に手をかけた。
「どっちかだろ」
彼が言った瞬間。
ガラスが立て続けに砕け散り、片端からデビモンの胸に弾丸が着弾、同時にそれは一メートルはありそうな氷の槍になり胴体を貫いた。
「なっ・・・氷!?辻鷹か?」
嶋川が声を上げながら背後にいたデビモンを叩き切った。
積山と和西、ギルは引きずられていった天使を追いかけた。
それはデビモンに鷲掴みにされ、空を運ばれていく。
それめがけギルが火炎弾を撃ち出した。
轟音、衝撃が辺りを包み、火の玉はデビモンをかすりもせずに放物線を描いて落下をはじめ、地面に到達する頃には燃え尽き、消えた。
「すまん慎。はずした」
首をコキコキ鳴らしてギルが謝った。
「また次がある、と思う。気にするな」
話す積山とギルをその場に残し、和西とゴマモンはフェンス越しに下を見下ろした。「おかしいな。ゴマモンは見える?」
和西に聞かれゴマモンも辺りを見回し、「影も形も」
と答えた。
和西は、ビル街を見渡し、辻鷹を探した。
「やっぱり?・・・どこから撃ったんだろう」
彼はすぐにあきらめ、嶋川を援護するため積山の後を追い、屋上から姿を消した。
 


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