デジタルモンスター
エターナル・ログ・ストーリー

第一章




 8    第8話  「洗礼」
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2007.12.28 Fri.
夕日が辻鷹の胸にかかっていた。
脇の机にはライフル、ホルダーが丁寧に置かれ、布の下に隠されている。
聴診器を外すと新藤医師は向き直ってガブモンと目を合わせた。
 
 
少し前・・・
辻鷹はライフルを連射し、甲高い発砲音が立て続けに響いた。
何発も連射が続き、ライフルから漏れ出した冷気が白い靄を生み出す。
辻鷹は突然射撃をやめ、そのまま何かを見ていた。
しばらくそうしていた彼はややあってからライフルを下ろし、室内のデビモンが全て消滅したのを確認すると・・・ 
「仁!?おい!しっかりしろ!」
ライフルを取り落とし崩れるように倒れた。
ガブモンは肩をゆするのをやめ、あたりを見渡し、驚いて動きを止めた。
駆け寄ってきた医師のうち一人は辻鷹のまぶたになにか機械をあて、画面を注視する。
画面に数字が表示され、それを脇から覗き込んだ新藤はやはり・・・とつぶやいた。
2人は辻鷹を抱えるとガブモンにライフルを持たせて建物に駆け込んだ。
 
 
そして、
「ありがとうございました・・・?」
ガブモンが神妙な顔で礼を言った。
新藤医師は首を振り、応えた。
「これが私の仕事だ」
 
 
靴音がたくさん聞こえて和西・積山・嶋川が病室に駆け込んだ。
辻鷹がその音で目を覚ました。
「辻鷹、お前また倒れたんだって?積山に礼でも言っとけよ」
ニヤニヤした顔で嶋川が言った。
辻鷹はすっかり体調のよさそうな顔で
「ごめん、ガブモンに聞いたんだけどまた気を失っちゃったみたいで。運んでくれてありがとね積山くん」
と言った。
「新藤先生」 
積山が静かに、しかし強く切りだした。
それを手でさえぎり、新藤医師は全員を手招きした。
 
招き入れられた診察室の白板にレントゲン写真が貼り出されていた。
光で浮き上がっていたのは辻鷹の頭と目の断面図だ。
それを指して新藤医師は積山の知るいつもの口調で説明を始めた。
「昼ごろ運び込まれたときにレントゲンを撮った結果だ。それでこっちは目の部分だけを拡大したもの」
新藤医師は2枚目をボールペンで示した。
「辻鷹君の眼球部分にきわめて薄い水素の塊を確認した」
新藤医師は次にその下の棒グラフを指し、
「これがそのときの目の温度。青に近いほど温度が低い」
と大まかな説明をいれていく。
ややあって辻鷹を正面から見据え、新藤は口を開いた。
「体温は・・・6度」
嶋川がおもわず訊き返した。
「それは・・・どういうことだ・・・・?」
新藤医師はうなずいた。
「先ほど気絶した直後に測った体温のことやガブモンの証言からして辻鷹君の眼球には・・きわめて高密度のレンズの役割を果たす氷が出現する」
しばらく沈黙が流れ、辻鷹自身が尋ねた。
「それ・・・・ありえるんですか?」  
新藤医師は首も動かさなかった。
積山はもう1つ尋ねた。
「先生はガブモンを見ておどろきませんか?」
新藤医師は首を横に振り、
「君達に世界の裏側というものを見せてあげよう。来週の日曜日、朝の9時にここに来なさい」
そう言うと診察室を出て行ってしまった。
 
 
入院続行になった辻鷹と付き添いのガブモンを残して和西達は帰路に着いた。
それを見送るころには日がくれはじめ、ガブモンが電気をつけた。
辻鷹は天井を見つめていたが、やがて口を開いた。
「ねぇガブモン」
ガブモンは振りむいて、なに、と言った。
「いや、・・・・その・・・・」
辻鷹はうつぶせになりマクラに顔を押し付け、黙る。
「心配か?だいじょうぶだと思う」
辻鷹は顔だけ横に向けてガブモンを見た。
「仁の眼に氷が出来るのにもなにか理由があると思う。それに・・・・」
「それに?」
「べつに悪いことみたいな感じはしない。仁とは出会ってそんなにたってない・・・・けど」
ガブモンはベッド脇のイスに座って言った。
「仁のこと信じてるんだ。というか知ってる。いい奴だって。それに仁はその眼を何に使った?」
「・・・みんなを助けるのに使った・・・」
ガブモンはにっこりと笑い、
「それだよ。そういう仁の限りおれがついてやる。だから大丈夫。心配するな」
辻鷹は笑い返し、
「ありがとう。・・・・失明したら頼むね」
そう言った。
忍び笑いが病室にあふれた。
 
 
 
その日、辻鷹とガブモンは一緒にベットで寝た。
 
次の日。
ベットは空だった。
辻鷹とガブモンは床に落ちていた。
やはり狭かったようだ。
 


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