デジタルモンスター
エターナル・ログ・ストーリー

第二章



 21    No−21「ndecisives」
更新日時:
2008.01.26 Sat.
騒々しい足音が響き、勢いよく開かれた扉から和西が顔をだした。
「なにやってるんすか!行きましょうよ!」
意藤邸の敷地内を走り抜けた和西は途中、何度か引き返そうかと思っていた。
しかし一応呼ぶだけ呼ぶことにしたのだ。
「意藤さん!」
彼女は窓際に置かれた上品な細工の施された椅子に腰掛け、庭を眺めていた。
意藤と和西・カメモンの間でパタモンが所在なさげに両方の顔を交互に見つめる。
ゆっくりと和西のほうを向くと意藤はうかない表情をしていた。
「バルバモンでしょう。私は・・・、やめておくわ」
なに言ってるんですか、と言いかけた和西は慌ててその言葉を飲み込んだ。
つい先日、彼女はバルバモンに危うく殺されかけた。
それを思い出し、和西はもうやめておこうと考え直した。
「分かりましたよ。じゃ、おれ行きますよ!」
彼は当の昔に視線を外した意藤の側頭部に向かってそう言うと右手に持っていた袋を肩に引っ掛け、足音を遠のかせる。
残された意藤はドアを閉め、しっかりと鍵をかけた。
スカートをたくしあげた彼女の両膝には金属の甲が巻きつけられている。
白い足に黒い装甲が際立って見える。
「ほほう、つけてるんダネ」
不意に背後から声がし、意藤は驚愕の表情で振り向いた。
シックな絨毯の上にランプが置かれ、その口からランプモンの上半身がはみ出していた。
「お前!いつから・・・!?」
「あんたが鍵かけたときからネ」
つかつかと歩み寄る意藤を見上げながらランプモンは腕組みをして言った。
「その装甲は『閃甲』といってナ。腕部や脚部に装着するとスピードが・・・・。お?」
解説中だったランプモンは持ち上げられ、意藤と目が合う。
「この変態っ!!」
「oh・・・」
ガラスが粉々に砕け散り、庭の芝生の上をランプモンが数メートル転がっていった。
 
 
 
「[デスルアー]!」
バルバモンの杖から立て続けに紅い火の玉が飛ばされる。
かなり的確に狙われたクレシェモンはよけるのすら限界に近かった。
 
「あれは両方から攻撃しても無駄そうですね」
和葉はため息をつくと再び思案顔で首をかしげた。
「早めになんとかしないといけないですね?」
そう言うと神楽はデジヴァイスを抱きしめた。
緑色の光が彼女の背後で輝き、リリモンがクレシェモンの援護に向かう。
「早めに何とかする方向で![フラウ・カノン]!」
第一波がバルバモンの杖をかすめ、攻撃を停止させる。
「ナイス![ダークアーチェリー]!」
クレシェモンが離脱ではなく、攻撃を選んだのを確認するとリリモンも再度両腕をバルバモンに向けた。
「どういたしまして。[フラウ・カノン]!」
リリモンとクレシェモンの必殺技が高速でバルバモンに向かう、が、バルバモンは異様なまでの跳躍力で飛び上がり、2体の攻撃はその足元のビルを撃ち砕いた。
 
「はずした・・・!?」
「ありえねぇ」
神楽と積山がそろって愕然とするなか、バルバモンは空中で静止する。
「儂はもう、飽きた」
うなるようにそういい、すべてを焼き払うべく杖が掲げられた。
 
 
「何が“飽きた”だー!!!」
ズドモンが真上から出現し、バルバモンを殴り飛ばす。
 
「?」
「ありえねぇ」
神楽と積山はあっけにとられ、様子を観察していた谷川は思わず声を漏らした。
「進化しながら落ちてきたのか・・・?」
「ご名答ダ」
背後からランプモンの声がし、カオスモン、積山、神楽、和葉、辻鷹、谷川の面々が振り向いた。
「ランプモン、そのガラスはどうしたんだ・・?」
すこし間をおいてカオスモンが訊ねた。
「もう気にしてナイ」
「気にしてます!」
意藤はそばの室外機の上にランプモンを置くと彼を見下ろして言った。
「私は協力します。どうしてもあのバルバモンは倒したい」
「分かっタ」
ランプモンの表情を覗っていた和葉はカオスモンを見上げ、おずおずと訊いた。
「この前から思っていたんですが・・・、なんであなたたちが戦わないんですか?」
丁寧に和葉と向き合い、カオスモンは問いに答える。
「私達はあなた方のサポートをすることを優先してこの世界に来た。だから最低限度の攻撃能力をのこして他の不必要なものすべてを後回しにして少しでも早くこの世界に来れるよう努めたのです」
「それほどまでに何故僕たちを評価するのですか?」
谷川は探るような目つきでカオスモンとランプモンを見比べる。
視線が合ったランプモンは彼に指をさしかえし、
「それだけの力がある“選ばれてしまった者たち”だからだ」
と答えた。
「もう、いいです。けれどもわたし達は戦います」
辻鷹は飛び回るクレシェモンを目で追った。
「となればあまり固まっていない方がいいんじゃないのか?」
積山が提案した。それに谷川、和葉が賛同する。
「確かに、いい的ですからね」
「同感です」
 
 


Back Index Next

ホームへ

| ホーム | エターナル・ログ・ストーリー | エターナル・ログ・ストーリー  第二章 | エターナルログストーリー  第三章 | 掲示板 | 登場人物・登場デジモン | 二章 キャラ紹介 | 3章 キャラ紹介 |
| 関連資料室 |