クレシェモンとリリモンはペアでテイマーを探していた。
バルバモンの姿が見えない今、一刻の猶予も無い。
「あたしらでも歯が立たないんだ。人間がどうこうできる相手じゃない・・・」
クレシェモンの独り言はリリモンによく聞こえていた。
「早く探さないと・・・・・。!さがって!!」
そう叫んだ瞬間、リリモンはクレシェモンを横に蹴り飛ばした。
リリモンが割って入ったとき、クレシェモンがいた空間をバルバモンが放った炎が焼き払った。
「リリモン!」
身代わりになって墜落していくリリモンを受け止め、クレシェモンが顔をあげたその先に、
杖を向けるバルバモンがあった。
クレシェモンは動く事も出来なくなっていた。
しかし、バルバモンの攻撃はない。
顔をあげたクレシェモンはすぐにはバルバモンを見つけられなかった。
「どこに・・・、!」
振り向いたクレシェモンの目に映ったのは・・・、
ビルの合間を縫うように黒い影が二つ猛スピードで飛び交う。
それらが交差した瞬間、バルバモンとベルゼブモンは至近距離でにらみ合った。
「貴様、本気でこの儂をどうにかできるとでも思っておるのかね」
バルバモンの物静かな脅しを聞き、ベルゼブモンは表情をまったく変えず言った。
「あ?思ってるぜ・・・?じじい、そもそも・・・・お前は相手じゃないんだよ・・・!」
蛇が獲物を目の前にするかのような声色でバルバモンを睨み返し、ベルゼブモンは右手のショットガンを狙わずに撃った。
その瞬間黒い影は飛ぶように下がり、銃声と炎が空気を焦がす音が交わっては消える。
「速い・・・」
ベルゼブモンとバルバモンの動きを目で追っていた積山は足音に気づいて振り向いた。
「お前か。どうだった?」
和葉がデスメラモンから飛び降りる所だった。
「だめ。和西くんだけ連絡とれない」
積山は舌打ちを漏らすと瓦礫の上から腰をあげ、アスタモンに目配せをする。
「しかたない。探しにいくか。嶋川、お前もついてこい」
積山が目を離した瞬間だった。
ベルゼブモンがビルにバルバモンは叩きつけた。
「悪ぃな・・・それでもって・・・。悪く思うなよ」
左手に顔面を押さえ込まれたバルバモンはベルゼブモンから逃れようと腕を動かすがあまり効果はない。
「ふふふ・・・、どういうつもりだ・・?」
苦しげな声で自分に問うバルバモンを見下ろし、ベルゼブモンはなにも答えなかった。
ベルゼブモンはバルバモンを両脚で蹴り上げ、強くビルに押さえつけるとその反動で後ろに飛んだ。
そのまま一度後転すると背中の拳銃を抜き、右手の一挺とともにバルバモンに狙いを定める。
「[ダブルインパクト]!」
弾倉の半分も撃ちこむ必殺の銃撃を浴び、バルバモンは消滅した。
「なんだあれ・・・」
「みて分からないか?仲間割れだろう」
かなり前からバルバモンとベルゼブモンをスコープから狙っていたアサルトモンは背後に控えた二ノ宮に訊いた。
こともなげに答えた二ノ宮は別の心配をしていた。
「あのもう一体・・・、ベルゼブモンは、敵だろうな。面倒だ」
「ッ!伏せろ![ジャスティスマサカー]!」
アサルトモンの大口径ショットガンが一発撃たれたが、ベルゼブモンは簡単によけた。
「甘い」
「・・・!」
手動で空薬莢を吐き出した瞬間、ベルゼブモンの銃口を目の前に突きつけられ、アサルトモンは凍りついた。
「このまま倒してやるのもいいが・・・。おれはな、無駄弾は撃たない主義なのさ」
ベルゼブモンはべレンヘーナをホルダーに戻すとそのままビルから飛び降りた。
二ノ宮とアサルトモンは慌てて下を見下ろすと
「自分の心配より仲間の心配したほうがいいぜ!」
そういい残しゲートに飛び込むベルゼブモンが見えた。
ベルゼブモンはゲートに吸い込まれる瞬間デジタル化され姿を消した。
「どうする?」
「・・・、あそこに追いかけろって言うのかい?」
「・・・・・・」
アサルトモンと顔を見合わせ、二ノ宮は再び下に目をやった。
積山とアスタモン、和葉とデスメラモンが見上げていた。
「あら、おかえりなさい。おもったより早かったわね」
黒しかない世界のなかでリリスモンはベルゼブモンの気配に気づき、口を開いた。
「そうか?」
「ああ、我々の予想をはるかに上回る速さだ。バルバモンはどうした?」
ルーチェモンが訊いた。
ベルゼブモンはその問いに僅かな笑いだけで答え、ベヒーモスのエンジンをかけた。
「リアルワールドのテイマーはお前らにくれてやるよ」
それを聞いたリリスモンとルーチェモンは顔を見合わせた。
「ベルゼブモン、お前はなにをする?バイスタンダー狩りでもするのかね?」
ルーチェモンの問いかけにベルゼブモンはあたりまえのように首を横に振る。
「まさか。俺はロイヤルナイツをやると言ってあるはずだが?聞くところによれば新入りの騎士はデジタライズで成長が止まってるらしいじゃないか。デジタライズした生き物なんざ滅多におがめるものじゃない」
ベルゼブモンは淡々と述べるとベヒーモスにまたがった。
「そんな半端騎士の相手なんざ俺一人でも釣りがくる」
ルーチェモンが口を開こうとした瞬間エンジン音がそれを遮り、ベルゼブモンはそのエリアから出て行った。
ルーチェモンはあきれの混じったため息をつくとリリスモンに向きなおる。
「他のテイマーはどうする?」
「何をいまさら・・・」
リリスモンは扇で口元を隠し、当然そうに言った。
「このリリスモンが10人とも倒すわ。悪いけど貴方の仕事はなしよ」
ゲートを開くとリリスモンは一度だけ振り向いた。
「せいぜい指を咥えて留守番していることね」
ルーチェモンは何も言わず、黙って彼女を睨み返している。
ゲートが完全に開き、リリスモンの体はそれに吸い込まれていった。
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