デジタルモンスター
エターナル・ログ・ストーリー

第二章



 27    No−27「bullet hit has squarely」
更新日時:
2008.02.09 Sat.
「こんにちは〜!」
神楽が元気な挨拶をしながら研究所の扉を開いた。
室内にいた和葉、フレイウィザーモンは驚いて振り向き、すぐに笑顔で挨拶を返した。
「こんにちは、特に異常はありませんよ」
和葉はそう答え、神楽と辻鷹を手で促した。
室内に入り、中をすべて見回すまでもなく、二ノ宮と女性が立っていた。
「あ、絵美さん、こんにちは!」
女性に会釈をすると神楽は彼女に駆け寄った。
「涼美ちゃん!こんにちはぁ!」
絵美と呼ばれた女性の腕に抱かれた赤ん坊に満面の笑顔を向けながら神楽は子供のようにはしゃいだ。
「神楽ちゃん、抱いてみる?」
「はい!」
赤ん坊を渡され、神楽は目を細めてそれを優しくゆすった。
「ほわぁ・・・。よしよし」
寝息をたてているそれを返してもしばらく神楽は気の抜けた顔をしていた。
1年前に結婚した二ノ宮には涼美が生まれていた。
もうすぐ1ヶ月になる娘を抱くと奥さんはソファに戻って腰掛ける。
入れ違いに隣に立った辻鷹が訊ねた。
「意藤さんは?」
「歩くんのところにつきっきりらしいな。たまに和西が連絡をくれる」
意藤も男の子を出産していたが病気を発症してしまいあまり顔を見なくなった。
新藤医師もいる市内の総合病院にそのまま入院することになった歩のそばを離れたがらないらしい。
同じ病院に入院する和西はそれを心配して相談にのってやっている。
小さい子を持つ二ノ宮も心配なのだろう。
表情が硬くなった。
「涼美には幸せになってほしいと思うよ」
独り言のようにつぶやいた。
 
 
 
人気の無い廃工場にリアライズしたリリスモンは右手を振り、狭い構内を切り裂いた。
「・・・・・」
右手を日にかざし笑みを浮かべリリスモンはつぶやいた。
「いいわ・・・、完璧ね・・・」
彼女は顔をあげ、目の前のテイマーを見つめる。
「速い対応だこと・・・」
積山、アスタモンはそろってなんてことはない、という顔をして見せた。
「なに、連絡があったから来たまでさ」
同感を表すかのようにアスタモンのガトリングガンが向けられる。
リリスモンはその銃口にまったく動じず、2人に対峙する。
「他のテイマーも・・・、別に隠れて無くてよくてよ?」
この発言に積山の表情がすこしぶれた。
「そうか?よく分かったな」
積山は肩をすくめた。
無言でデスメラモン、和葉が壁の向こうから、リリモン、神楽、クレシェモン、辻鷹が屋根の上からそれぞれ姿を現す。
険しい表情で和葉が呟いた。
「しまったなぁ・・・、完全にリアライズしちゃったかぁ・・・・」
「2年もなにもなかっただけのことはある」
デスメラモンは攻撃姿勢をとり、リリスモンを睨みつける。
さらに自分に狙いをつけたリリモンを見上げ、リリスモンは微笑んだ。
 
リリモンはリリスモンが自分に向けて微笑むのを見た瞬間、それが見えなくなった。
直後、背の葉のような翼を抉り取られ、地面にたたきつけられる。
コンマ一秒ほどの時間もかからなかったのではないだろうか。
状況を把握したとき、戦慄するデスメラモンの背後にリリスモンが立った。
「よく見えなかったか?お前の次はすこし時間をかけて倒してやろうか・・・?」
デスメラモンの巨体が倒れ、フレイウィザーモンに退化した。
その一秒後にアスタモンの首にリリスモンが左手をそえ、頬を撫でた。
「お前達ごときでは我は倒せん・・・」
アスタモンの絶叫とリリスモンの高笑いが工場に響いた。
ファスコモンが地面におちたとき、クレシェモンの眼前にリリスモンが現れる。
「お前が・・・・、最後でお前の最期だ・・・」
凍りついたクレシェモンの表情を見、リリスモンは残忍な笑みを浮かべ右手を掲げる。
「我に倒される事をダークエリアで喜びなさい」
フローラモンとファスコモンが飛び起きる。
だが、間に合うはずが無い。
そのはずだった。
「[パンドーラ・ダイアログ]!」
リリスモンが突然よろめき、なんとか空中に逃れ、細めた目で敵を探した。
「何者・・・!?」
「ワイズモンです」
布コートを羽織った背の高い痩せた人影が柱の影から姿を現した。
「“パンドーラ・ダイアログ”。対象に直接無数のデータをたたきつける攻撃です」
落ち着いた佇まいでワイズモンは先ほどの技の説明をする。
彼の背後からもう一人、今度は人間が歩み出た。
「そう。ワイズモンは僕のパートナーだ」
茶色の髪を後ろで縛った少年だった。年齢は12,3歳だろう。
彼を先頭に意藤、エンジェウーモンや黒畑、インセキモン,二ノ宮、アサルトモンらが次々に前に進み出た。
9組のテイマーの上、上空に静止し、カオスモンは剣を出し、構えた。
「我々全員でかかればお前が相手でも勝てるだろう」
「さあ?それはどうかしらね!」
リリスモンは体勢を立て直し、右手を掲げる。
その瞬間その姿が消えた。
一秒も間隔をあけず、カオスモンに魔爪が襲い掛かる。
カオスモンがそれを剣で弾いたときにはリリスモンの姿を見失っていた。
同時に、次に狙われたインセキモンの体が宙を舞う。
大柄な体躯とは裏腹にインセキモンは直撃を寸前で避け、すぐ脇のリリスモンへと攻撃を試みた。
「[フォーリンスター]!」
白色の岩石郡が何も無い空間を横切った。
目を見開いたインセキモンの背後に圧倒的なスピードによる余裕が生んだ華麗な身のこなしでリリスモンが迫る。
[[プーヤヴァーハ]!]
シンドゥーラモンの背の宝具から電撃がほとばしる。
事実上光速の攻撃はかすりもせず、リリスモンは姿をくらませた。
「だめだ!速すぎる!」
狙撃ライフルでリリスモンを狙っていたアサルトモンが呻いた。
それを聞いていた二ノ宮もさすがに危険な情勢だということを身にしみて感じていた。
「まずい・・・」
同時に彼は一か八かの賭けに出る。
「意藤さん!谷川君!例の奴いくぞ!」
アサルトモンはライフルを引き、走り出す。
同時にシンドゥーラモン、エンジェウーモンがその上空を追う。
直後、リリスモンがアサルトモンの真上に現れた。
「っこの!!」
急ブレーキに軋む体を限界までねじり、両腕の散弾銃を撃ちまくる。
あざ笑うかのようにリリスモンはそれをよけた。
その瞬間、
「[ホーリー・アロー]!」
「[プーヤヴァーハ]!」
二本の光がリリスモンに襲いかかる。
だがリリスモンの右腕がそれらを打ち消し、爆発が起きた。
「[宝杵]!!」
リリスモンが爆煙に包まれた瞬間、シンドゥーラモンが特攻をしかけた。
視界を完全に奪われたリリスモンの右腕をシンドゥーラモンの宝具が貫く。
「・・・!」
リリスモンは煙から脱出すると同時に姿を消した。
 
 
 


Back Index Next

ホームへ

| ホーム | エターナル・ログ・ストーリー | エターナル・ログ・ストーリー  第二章 | エターナルログストーリー  第三章 | 掲示板 | 登場人物・登場デジモン | 二章 キャラ紹介 | 3章 キャラ紹介 |
| 関連資料室 |