エターナル・ログ・ストーリー

第三章
無名のテイマー
 
クラヴィス



 16    Episode...16 [撃墜=SHOOT・down]
更新日時:
2008.06.12 Thu.
ベルフェモンは獲物を地面との間に挟んだはずの拳を持ち上げた。
その下には何もない。
怒りの咆哮を上げるベルフェモンの背後から漆黒の騎士が襲いかかった。
「お前・・・何者だ・・!?」
問いかけながらアルファモンに姿を変えたイオは空間の狭間から光の剣を抜く。
「[聖剣グレイダルファー]!!」
一瞬触れただけで小島程度なら寸断するほどの威力を持つ剣。
それが今、止められた。
「・・!!?」
「どけ!」
デュークモンがアルファモンの肩を踏み台に高さを稼ぎ、左腕の盾をベルフェモンに向ける。
「[ファイナル・エリシオン]!!!」
またたく間に強烈な波動がベルフェモンを包み込み、閃光がその場の全員の視界を一瞬、奪った。
「倒したか・・?」
巻き上げられた粉塵の中を透かし、デュークモンは呟いた。
アルファモンが何か言おうとデュークモンのほうを向いたときだった。
「・・・究極体・・・、倒す、・・・邪魔・・・・・・、全部・・、壊す」
アルファモンと2メートルほどの間隔を隔て、硬い毛に覆われた巨大な腕がデュークモンを打った。
「カリストさん!」
真下にいた黒畑とロップモンは最初の一撃から救ってくれたナイトモンの腕を振り払い、ミネルヴァモンに進化してベルフェモンの頭めがけて大剣を振り下ろした。
物を斬った手ごたえすら感じず、ミネルヴァモンは眼を見張る思いで剣先を睨む。
ブーツごしに感じる感触はまるで針金を踏んでいるようだった。
「早く離れろ!そいつが究極体狩りをしていたに違いない!飛び降りろ!」
和西が叫ぶ。
彼の声を聞いてミネルヴァモンがベルフェモンから飛び降りようとした瞬間、その背中でたたまれていた翼が一斉に開いた。
「―――――!!」
積山はベルフェモンが立てる猛烈な風の中でデジヴァイスにプログラムを叩き込んだ。
「!待て、積山くん!!」
和西が叫んだときにはカオスデュークモンはすでにベルフェモンを追って飛び去っていた。
ベルフェモンが出現したとき、すでにウォーグレイモンに進化して攻撃を免れていた嶋川はなにかの気配を感じて動きを止めた。
次の瞬間には突然自分の背後に殴りかかる。
しかしドラモンキラーは空をかき、同時にウォーグレイモンの四肢が縛られた。
即座に抵抗しようとした自分を抑え込み、背後の新たな敵に話しかけてみた。
「・・・おい、お前・・・誰だ?」
彼の一言にその場の全員が歩を止め、振り向いた。
すでにロードナイトモンはウォーグレイモンの動きを封じ、その背後をとっていた。
「誰?」
「・・ロードナイトモン。ブレイブナイツを直接組織したロイヤルナイツだ」
ヴァルキリモンの問いにその真横にいたナイトモン・ムードゥリーが答えた。
彼は背中に手を回し、すでに大剣を半分まで抜いていた。
「ブレイブナイツ。よくも私の命令を無視してくれたな。命をもって償うがいい」
そう言ってロードナイトモンがウォーグレイモンから目を離した瞬間だった。
ウォーグレイモンは力任せに腕を自由にし、腰の炎撃刃を抜いてロードナイトモンに斬りつけた。
ロードナイトモンは滑るように背後に間合いをとり、炎撃刃は彼の肩からのびた帯状の剣を斬り裂いただけだった。
しかしウォーグレイモンは剣を振りきったと同時に地面を蹴り、さらに間合いを詰めてロードナイトモンを蹴り倒す。
地面に倒れたロードナイトモンの左腕を踏みつけ、抵抗しょうとしたロードナイトモンの鼻先に剣の切っ先が突きつけられていた。
押さえ込んだ相手を見下ろしてウォーグレイモンは呟く。
「命をもって償うがいい・・・、だったか?誰の命だったかな・・?」
ロードナイトモンは仮面の奥に隠れた目で炎撃刃を見つめながら答えた。
「お前だ」
再生していたロードナイトモンの剣が持ち上がる。
4方からウォーグレイモンを囲み、同時に攻撃を仕掛けた。
「させるかっ!!」
ヴァルキリモンの撃ち込んだ空気の弾丸がロードナイトモンに直撃し、それに乗じてウォーグレイモンが離脱する。
追撃を避け、空に駆け上がり空を飛んでいくロードナイトモンを追い、ヴァルキリモンが止めるのも聞かず飛び立った。
ウォーグレイモンはすぐに振り向いてネプトゥーンモンに怒鳴った。
「ここで待っててくれ!ロードナイトモン倒して谷川引きずって帰ってくるからよ!!」
またしても呼び止める事に失敗したネプトゥーンモンは何か言いかけ、自分の足――魚のひれのような巨大な足を見下ろし、黙った。
「すぐに帰ってくる。  メタルガルルモン、行くぞ!」
「ええッ!!?」
困惑をあらわにしたメタルガルルモンは不服を漏らしながら背部のブースターを開いた。
「ちょっと行ってくるよ」
「おう、気ィつけるよ」
メタルガルルモンは隣で苦笑していた柳田に見送られ飛び立った。
ウォーグレイモンはその腕に飛びつき、懸垂の要領で背中に飛び乗った。
薄闇の中にかすかにヴァルキリモンの翼が見える。
「急げ」
「無茶苦茶だーっ!」
「我慢しろ」
メタルガルルモンの魂の叫びを軽く流し、ウォーグレイモンは今まで抜いたままだった剣を鞘に戻した。
両隣を飛び去って行くデジタルワールドの景色を見張りを兼ねて眺める。
「案外変わらないもんだな」
それがウォーグレイモンの、嶋川の感想だった。
広大な森が広がり、その奥に高い山が、そしてその背景を夜空が飾る。
「そうかな、僕は違うと思う」
それがメタルガルルモンの、辻鷹の感想だった。
どこを見渡しても人工的なものが見当たらない。自然そのものが広がる。
しかしメタルガルルモンはかすかに気づいていた。
デジタルワールドはもともと人工の世界だ。
その世界の自然なんて人工の森でしかない。
本当にそうかな?
メタルガルルモンは考え続けた。
自然ってなんだろう。
案外僕たちが考えてるだけのものかもしれないな・・・。
眼を細めて前を向いたメタルガルルモンは飛び続けた。
それまでずっと黙っていたウォーグレイモンに後頭部を叩かれるまで二人はずっと無言だった。
「おい、あれはなんだ?」
前のヴァルキリモンに集中していたメタルガルルモンはウォーグレイモンの指が示す方向を向いて“眼”を発動させた。
夜空の中を白いものがチラリと見え、拡大されるにつれ翼を持ったデジモンだということが判別できた。
黒い翼と白い翼を何対かもつデジモンだ。
念のためにウォーグレイモンが剣を抜き、メタルガルルモンがそのデジモンにミサイルポッドの照準を合わせた瞬間、
そのデジモンは急に向きを変え、森のなかに姿を消した。
「・・注意しておこうぜ」
ウォーグレイモンは剣を鞘に戻すと下から自分を見上げるメタルガルルモンに言った。
「同感。何が出てくるか想像もつかないよ」
 
 
森の中に一軒の館があった。
外堀と高い塀で囲まれてはいたものの、長い年月にその効果は覆い隠されていた。
つる草と大木に囲まれたその屋敷に白い翼と黒い翼をあわせ持つデジモン・ルーチェモンが降り立った。
フォールダウンモードと呼ばれる姿をしている。
彼が降り立った屋敷は“闇貴族の館”と呼ばれる大きな屋敷だった。
その扉を開き、中に入ったルーチェモンはまっすぐに二階に上がり、豪華な家具に囲まれた部屋の扉を開いた。
音も無く扉は開き、ルーチェモンを通すとまた、音も無く閉じる。
豪華で、しかし派手ではない大きな窓を開きルーチェモンはすぐにかなりのスピードで移動する一点を空に見つけ、見つめた。
「あの時の娘か・・」
気まぐれが災いしたか、と考えたルーチェモンはすぐに考え直した。
“災いした”と決めるにはまだ早い。
ルーチェモンは冷たい微笑みを浮かべると窓に背を向けた。
 


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