エターナル・ログ・ストーリー

第三章
無名のテイマー
 
クラヴィス



 9    Episode...9 [決闘=duel] 
更新日時:
2008.04.04 Fri.
眼下に広がる街並みを見下ろし、カオスデュークモンは刺すような瞳で自分を見下ろすデュークモンを見つめ返した。
目線をいっさい微動ださせず、積山は“自分”に問いかける。
(だいぶ長い間究極体を維持していますね。大丈夫ですか?)
(誰に何を訊いてるか分かってるか?)
(私達のことは心配いりません。存分に、そして納得の行くまでお付き合いいたします)
カオスデュークモンの鎧の下、彼は微笑んだ。
「ありがとう。では・・・はじめようか」
組んでいた腕を解き、槍と盾を手にデュークモンと水平に対峙する。
「イオになにをした?あの黒い箱はなんだ?・・・・なんでもいい」
デュークモンは槍を向けた。
「許さない。絶対に」
積山は目を見開いた。
今自分に刺しかかる彼女はウィルドエンジェモンの卵を受け取る以前の自分に酷似していた。
第一撃を盾で弾き、蹴込みをかわしながら積山は、ギルは、裁は戦いとは違う、しかし同じことを考えていた。
 
テイマーとはなにか。
 
パートナーデジモンとはなにか。
 
仲間とはなにか。
 
 
カオスデュークモンは思った。
(このカリスト達は知っているのだろうか。なら教えて欲しい。知らないだろうか。ならいっしょに探したい)
カオスデュークモンはまったく無駄がなく、完全に隙のない動きでデュークモンの槍撃を受け流す。
デュークモンの渾身の一撃がカオスデュークモンの右肩のアーマーを刺し貫いた。
(大丈夫かい?)
(全然)
(鎧はこのためにありますから)
至近距離まで詰め寄ったデュークモンは盾を投げ捨て、カオスデュークモンの鎧を掴み、引き寄せた。
「・・・あんなことをされて負けていられない。お前が次に地を踏む事は無い・・・!」
「落ち着きなさい。何故そうまでして戦うのですか?例え私達が倒れても貴女が倒れても。なにが得られるというのですか?」
「忠義だ・・!」
「自分の命を危険にさらすことが仲間への忠義だとでもいうのですか?」
デュークモンはカオスデュークモンを突き放した。
「お前になにが分かる。あたしの命はあたしのものじゃない。イオのものだ」
「では彼は貴女をなんだと思っているのですか?」
槍の一閃を絡めるように受け流し、押し飛ばしたカオスデュークモンは問いかけた。
「貴女はなにをしているんですか?」
 
 
「そのとおりだ。なにをしているデュークモン」
 
 
一方、突然聞こえた声にカオスデュークモンは即座に反応し空を見上げた。
一瞬前までデュークモンがいた空間のもう一体、騎士が出現していた。
「[ドラゴンズロアー]!!」
爬虫類に見られる皮膚幕のような翼、対照的に突起に覆われた白金の鎧に身を包んだ騎士・デュナスモンがそこにいた。
鎧の各部に透明な水晶のようなものが見られる。
「誰ですか?」
幾分冷ややかな口調で訊いたカオスデュークモンをデュナスモンは横目で睨みつけた。
「私の名はデュナスモン」
ドラゴンズロアーの直撃を受けてあまり動かなくなったデュークモンを興味無さげに投げて捨てた。
「リアルワールド下での任務遂行の状況を主君に伝え、主の言葉を伝達し、任務の遂行に支障をきたす騎士を粛清する役目を仰せ付かっている」
右腕の槍を構え、カオスデュークモンはデュナスモンを睨み返す。
「そうですか」
「カリストは任務に私情を挟み暴走した。イオもああも簡単に錯乱されては任務に支障が出るのは瞭然ではな――」
そこまで言ったデュナスモンの至近距離に迫ったカオスデュークモンが金属のような冷たい声色で言った。
「すいぶん早く粛清の令が下ったものですね」
デュナスモンは絶対絶命の状況にも動じず答える。
「我が君の言葉は常に先を読んだものなのだよ」
その右腕がカオスデュークモンの胸を捉える。
辛うじて爪撃を弾いた積山にギルや裁の言葉が響いた。
(もうだめか・・・!こんなときに!)
(ごめんなさい・・!)
「どうしたものか・・・」
突然空中に投げ出された積山は真上から襲い掛かるデュナスモンを見つめて呟いた。
「―っと待ったァ!!!!!」
メタルガルルモンが体当たりでデュナスモンを押し飛ばし、即座にブーストを半回転させ積山とギルを空中で捕まえる。
「ああ、どうも」
自分のパートナーがそれぞれ無事なのを確認し積山が礼を言った。
「こんなときくらい慌ててみたらどうだい?」
メタルガルルモンが半ばあきれ、半ば驚きの交じり合った感情を表に出す。
「慌ててもあまり得はありませんよ。・・・彼女のようにね。どうなりましたか?」
デュークモンのことを訊いていると気がついたメタルガルルモンは答えた。
「たぶん君の考えてるとおりだと思うけどしっかり柳田くんが捕まえたよ。かなり怪我してるみたい」
「そうですか」
一見つれないように聞こえる返事にメタルガルルモンは大いに満足した。
どうやら僕はうまく立ち回ったらしい。
一安心したメタルガルルモンはゆっくりと顔をあげた。
デュナスモンが体勢を立て直し、こちらを見返している。
「どうする?」
「さぁ」
思案する二人にデュナスモンが襲い掛かる。
 
 
「はいはい!そこどいて!」
2本の担架が救急班によって運ばれてきた。
平均的に担架が乗せる人物がそうであるように二人とも苦しげな表情を浮かべている。
「あれは?」
黒畑が校舎の上から担架の上の人物を指差して言った。
「恐らくはさっき見た人影だな。紅い髪のほうは知らん」
林未がぶっきらぼうに答える。
「つまりまだ二人はいるんですね」
名月がそわそわとあたりを警戒した。
「それなら大丈夫や」
予想外な場所から柳田の声が聞こえた。
驚いてしりもちをついた黒畑の目の前、校舎を垂直に上がってきた柳田が姿を現す。
彼に続いてブレイドクワガーモンが視界に現れた。
「よぉ、久しぶり」
三人を見回し、柳田が挨拶をした。
「あ、久しぶり・・・、――ひゃっ!」
反射的に黒畑が返す。同時に林未が彼女を押しのけて柳田のとなりに腰掛けた。
「柳田、あれは誰だ?一体どうなっている」
「まぁまぁ、そんな怖い顔せんでもええやろ?」
柳田はあいかわらず笑顔を浮かべたまま足元に座る。
「そうやなぁ・・・、強いて言えば、ああ、“立てこもり犯”かな、まぁ、デジモンかもしれへん」
怪訝な顔を見せた林未を見遣り、柳田は慌ててつけたす。
「いや、一人デジモンになりよった。ほんで二体白いのと赤いのが出てきたんや」
「それがあの二人だと?」
つられて後ろを振り向き、救急車を見て柳田は頷く。
「ま、そんなとこやね」
 
 
「[コキュートス・ブレス]!」
口内の砲頭から超低温の衝撃波が発射される。
氷がデュナスモンの右翼を捕らえた。
「うおおお![ガルルトマホーク]!」
腰部の大型ミサイルが撃ち出され追い詰められた騎士に迫る。
音速に匹敵する加速力で迫り来るミサイルを見据え、デュナスモンは裏拳の一撃で氷を粉々に打ち砕いた。
「悪いが持ち越させてもらう!」
デュナスモンは真逆さまに急降下し、貯水槽の数メートル上空でデジタル的に消滅した。
「・・・!?」
完全にデュナスモンを見失い、メタルガルルモンは動きを止めた。
逆に積山はブラックメガログラウモンの上から中学の四角い敷地を見下ろし、微笑みを浮かべていた。
 


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